おばあちゃん百合ひとりアンソロジー

飛鳥井作太

文字の大きさ
14 / 26

怪談師さん×怖がりさん

しおりを挟む

 After

 怪談師門田京子宅の家政婦・小泉秋子の日記。
 十二月十二日晴れ。今日は門田先生の新作を聞けた。
「……血まみれの顔は、しかし何処か穏やかに微笑んでいたのです」
 先生はいつも通り、まず羽衣さんに語って聞かせていた。彼女の部屋の前にある小スペースを掃除していたため、私も聞くことが出来た。大変な幸運。
「ういちゃん、どうだった?」
「良かったよ。……ただ怖いだけじゃなくて、何だろう、ちょっと心温まる感じが」
 羽衣さんの言葉通り、近頃の先生のお話は、不思議と胸が温かくなるところがあった。お年を召して、恐怖に凄みがかかる一方(特におばあさん特有の少し掠れた声が、より臨場感を呼ぶ)、繊細さや優しさも増した気がする。
「ういちゃん、最近あまり怖がらなくなったねぇ」
 と面白がる先生に、
「自分が、お化けに近付いてるからかもね」
 羽衣さんがそう答えたことは、今思い出してもハッと息を呑んでしまう。湿っぽくないからりとしたお声だったから、余計に。
「昔、ういちゃんがお化けになって会いに来てくれるなら嬉しいって言ったけど」
 そのときの門田先生のお声は、対照的に湿り気を帯びていた。羽衣さんが病を得、寝台の人となって久しい。
「今はね、不思議だね。ういちゃんにお化けになって欲しくない気持ちが大きくなってる」
 怪談師失格だよね、と笑おうとして失敗した、ひしゃげたお声。
「そんなこと言わずに、歓迎してよ。会いに来るから」
 羽衣さんのお声は相変わらず優しく。扉越しに聞いた私ですら、ただただ悲しくなってしまった。 

 Before

 怪談好き女子高生・門田京子のクラスメイトから見た毎日。
「ちょっと、もんちゃん! もういい! もう怖いのいいから!」
「あと一つ、これがまた珠玉の怪談で!」
「余計に嫌だよ!」
 抱き着く門田に、嫌がる羽衣。いつもの、我がクラスの光景だ。平和な光景。
 じゃれる二人は可愛らしい。が。
「そろそろやめてやんな~?」
 一応、止めてやる。羽衣がそろそろ限界そうだし。
「えー。でも、ういちゃんの反応一番いいんだもん」
「それは認めるけど」
「おい!」
 羽衣のツッコミに、私は肩を竦めた。しまいに羽衣は肩を怒らせ、
「あんまり続けるようだと、死んでから祟って出て来ちゃうよ!」
 などと脅したが。
「え、それ良い!」
 門田の顔は、ぱあっと輝いた。……そりゃそうだよなあ、とみんな苦笑する。
「絶対出て来てよ、ういちゃん!」
「何で喜んでるの!」
 ぎゅうぎゅうと嬉しそうに羽衣を抱き締める門田。
 その顔は、これ以上ないくらい倖せそうだった。抱き締められている羽衣もまた満更でもなさそうで。
 良い光景だ、と。私は心から思い、ふんわりと倖せな気持ちになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

処理中です...