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怪談師さん×怖がりさん
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怪談師門田京子宅の家政婦・小泉秋子の日記。
十二月十二日晴れ。今日は門田先生の新作を聞けた。
「……血まみれの顔は、しかし何処か穏やかに微笑んでいたのです」
先生はいつも通り、まず羽衣さんに語って聞かせていた。彼女の部屋の前にある小スペースを掃除していたため、私も聞くことが出来た。大変な幸運。
「ういちゃん、どうだった?」
「良かったよ。……ただ怖いだけじゃなくて、何だろう、ちょっと心温まる感じが」
羽衣さんの言葉通り、近頃の先生のお話は、不思議と胸が温かくなるところがあった。お年を召して、恐怖に凄みがかかる一方(特におばあさん特有の少し掠れた声が、より臨場感を呼ぶ)、繊細さや優しさも増した気がする。
「ういちゃん、最近あまり怖がらなくなったねぇ」
と面白がる先生に、
「自分が、お化けに近付いてるからかもね」
羽衣さんがそう答えたことは、今思い出してもハッと息を呑んでしまう。湿っぽくないからりとしたお声だったから、余計に。
「昔、ういちゃんがお化けになって会いに来てくれるなら嬉しいって言ったけど」
そのときの門田先生のお声は、対照的に湿り気を帯びていた。羽衣さんが病を得、寝台の人となって久しい。
「今はね、不思議だね。ういちゃんにお化けになって欲しくない気持ちが大きくなってる」
怪談師失格だよね、と笑おうとして失敗した、ひしゃげたお声。
「そんなこと言わずに、歓迎してよ。会いに来るから」
羽衣さんのお声は相変わらず優しく。扉越しに聞いた私ですら、ただただ悲しくなってしまった。
Before
怪談好き女子高生・門田京子のクラスメイトから見た毎日。
「ちょっと、もんちゃん! もういい! もう怖いのいいから!」
「あと一つ、これがまた珠玉の怪談で!」
「余計に嫌だよ!」
抱き着く門田に、嫌がる羽衣。いつもの、我がクラスの光景だ。平和な光景。
じゃれる二人は可愛らしい。が。
「そろそろやめてやんな~?」
一応、止めてやる。羽衣がそろそろ限界そうだし。
「えー。でも、ういちゃんの反応一番いいんだもん」
「それは認めるけど」
「おい!」
羽衣のツッコミに、私は肩を竦めた。しまいに羽衣は肩を怒らせ、
「あんまり続けるようだと、死んでから祟って出て来ちゃうよ!」
などと脅したが。
「え、それ良い!」
門田の顔は、ぱあっと輝いた。……そりゃそうだよなあ、とみんな苦笑する。
「絶対出て来てよ、ういちゃん!」
「何で喜んでるの!」
ぎゅうぎゅうと嬉しそうに羽衣を抱き締める門田。
その顔は、これ以上ないくらい倖せそうだった。抱き締められている羽衣もまた満更でもなさそうで。
良い光景だ、と。私は心から思い、ふんわりと倖せな気持ちになった。
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