おばあちゃん百合ひとりアンソロジー

飛鳥井作太

文字の大きさ
18 / 26

食べるのが好きな人×料理好き

しおりを挟む

 After

 キリッとした赤が自慢のエプロン。江見さんの還暦祝いに贈られたエプロン。それが私。江見さんの、少しふっくらとしたお餅みたいな身体を包みながら、今日も彼女のお料理をお助けします。
「はい、お待ち」
「わあ……!」
 江見さんがお料理を振る舞うのは、恋人の紗奈さん。こちらはひょろりと縦に長いおばあさんです。
「どうして、私がこのお粥を食べたいってわかったの?」
 キラキラした眼で、紗奈さんがお粥を見ています。美味しそうですよね。きっと美味しいですよ。
 何たってしいたけ出汁にかつお出汁、昆布出汁まで使った特性のお粥です。ふわっとかかった卵も美しく、食欲をそそる装い。
「……何となく」
 江見さんが、うっすりと微笑みます。私は「ふふふ」と一人笑いました。紗奈さんが昨日テレビドラマのお粥を見て、食べたそうにしてたのをちゃーんと見てたのですよね。
「頂きます!」
「たんと食べてね」
 紗奈さんが「美味しいねぇ」とゆっくり、ゆっくり、一口ずつ、しみじみと噛み締めて味わうのを眺めながら(お年を召してますからね。しっかり噛むのは良いことです)。
 江見さんは、愛おしそうに、満足そうに頷きました。


 Before

「決め手は、私の料理をゆっくりと味わって食べてくれるところかな」
 私の嫌味に姉が返してきたのは、そんな惚気だった。
 パパとママが反対する相手……だって、同じ女だ……と、強引にでも一緒になる、家を出ると決めた姉。「いいとこの坊ちゃん蹴ってまで一緒になりたいなんて、よっぽといい女なのね。何処がいいの?」と、嫌そうな顔で聞いてやったのに、笑顔で惚気を返されたのだから堪らない。
「私達だって味わっては、いるよ」
「でも、ささっと食べちゃうじゃない」
 それは、そう。美味しいと一度伝えたら、それでいいような気がしちゃうし。あとはかっこんで終わりみたいな。だって、ごはんの時間とか勿体ない。他にしたいことが沢山あるんだもん。
「あの子はね。ゆーっくり、一口ずつ、しっかり噛み締めて食べてくれる。それが、嬉しくて」
「そんなの、おばあちゃんになったら嫌になるくらい遅くなるんじゃない?」
「あら」
 私の二度目の嫌味も。
「そこまで一緒に居られるなら、それだけで素敵」
 姉はするりとかわして微笑んだ。
 きっと、嫌味だと気付いてすらいないのだろうけど!
 ……覚悟を決めた姉が纏うのは、もうすぐ好きな人と暮らせるというしあわせなオーラだけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

処理中です...