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平安時代・出家した元更衣×元更衣
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そろそろ冬がやって来る。草木に陰りが見え始め、お日様の光も薄っすら遠くなって来た。寒いと動くのが億劫だ。こちとら、鼠退治に走り回らなくちゃいけないってのに。猫も楽じゃない。だからそろそろ、火鉢の一つでも出しちゃくれないかしら。そんなことを思って寝っ転がっていたら、向こうから、尼さんたちがお喋りしながらやって来た。
薄目を開けてみれば、いつもの仲良し二人組だ。
「今日の閼伽棚のお花は、あなたがお活けになったの?」
「そう。……見たこともないお花だったでしょう?」
「ええ。私、吃驚して。でも、とても美しくて見惚れてしまったわ」
「ふふふ。私も庭で見かけて、つい」
ばあさんだってのに、やれ花が綺麗だ月が円いだ、私(猫)が可愛いだの。
年がら年中娘っ子みたいにはしゃいでいる。楽しそうなばあさんたちだ。ま、私を一番可愛がってくれるのもこの二人なので、多少のうるささには目を瞑ってやっている。
「きっと御仏のお導きだったのね」
「ねえ、これから一緒にそのお花を見に行きません?」
「是非! そうだわ。あちらにある南天も見に行きましょうよ。そろそろ実を付けているかも知れない」
ひとしきり楽しそうにはしゃいだあと。
「……歌には、年経る哀しみがよく歌われているけれど」
わたくし、今の方が倖せだわ。一人がぽつりとそう言った。
「……わたくしも」
片割れもそう呟いて、しばらく二人が黙った。閉じた眼をもう一度開けてみる。二人は手を取り合いお互いだけを見つめている。……いつも花が良い、月が良いとはしゃいでいるけれど。多分、互いが一番良いんだろうと私はちゃんと知っていた。
Before
……とある貴族の日記(現代語訳)。
宿直にて聞いた話。
「前に、貴方が言っていた梨壺の更衣と桐壺の更衣のことだが」
「ついに、居合わせたのか」
「うん。居合わせた」
若者たちの間で、桐壺や梨壺に行くことが流行っているらしい。と言っても、そこに居る女房で美しいのが居るとか、和歌が並外れて上手い者がいるというわけでもないらしい。
お目当ては、仲良しの更衣二人だと言う。それぞれ梨壺と桐壺に住まわれている方々だが、大抵どちらかの局に居て、二人で楽しく花や歌についてお話しているそうだ。
彼ら曰く、それを御簾越しに聞くのが健康に良い、のだそうで。
「御簾越しに、お二人が楽しげに笑っているお声を聞くと、こう、よくわからぬ胸の高鳴りを覚えるな」
「そうだろう?」
「お互いの歌や筝の音を褒め合うときの甘いお声と言ったら! 天女のお喋りとはああいうものではあるまいか」
かと言って皆、二人に恋をしているというわけでもない。当然のことではあるが。
「ただ、お二人が恙無く仲良く過ごしているのを感じていたい」
「贅沢を言えば、お二人のどちらかの女房となり、お二人の様子を眺められたら一番だ」
「いやいや。女房だとお役目で色々忙しいかも知れない。私ならば、お二人の傍にある香炉になりたい」
「それはいい!」
そんなやりとりをずっとしている。恋に身を焦がして危ういことをしでかすよりは余程安心ではあるが、何か不思議な心地がした。
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