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7王女様はおっさんがしゅきになる

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お嬢様Side 

私はアストレイ王国第一王女アリス。 

またの名を殺戮という名に愛された天使の二つ名で呼ばれる、この国一の剣の使い手だ。 

16歳の時の帝国との戦いで、初陣を飾った私は一人で帝国兵3万を殺戮した。 

自分で言うのもなんだが、清楚な印象を受ける美貌と、気品で、それまで国内外の王侯貴族から引く手数多の婚約の打診を受けていたが、父である国王の判断により見送られていた。 

それまで誰もが、父の娘可愛さのワガママによってもたらされていたものと思われていたが、その戦いにより一変した。 

アストレイ王国の第一王女は殺戮という言葉に愛された天使であるという噂はたちまち大陸中に知れ渡った。 

そして、同時にアストレイ王が、なぜ婚約を見送り続けたのかが知れることになった。 

私はこの国の戦略兵器なのだ。 

味方からは美しき殺戮の天使と呼ばれ、敵兵からは美しき殺戮の悪魔と呼ばれる私に婚約を申し出る者などいなくなった。 

夫婦喧嘩したら、死ぬとか、あるいは単純に恐怖が勝ってしまったのだろう。 

とは言うものも、私は未だ17歳であり、王立魔法学園の生徒でもある。 

だが、学園の教員はおろか、騎士団の精鋭でさえ、私に勝てそうな者などいない。 

……孤独だった。 

学園内では友人は少しは……いや、彼女らは王国の王女であり、殺戮の天使の私に価値を見出し、私の内面も人間性もどうでもいいのだ。 

そう、私に本当の友人などいないのだ。 

そんな私にできたことは日々の鍛錬だった。そして、更に高みに上り、成長した私は世界一強いのではないか? 

そう本気で思い始めていた、だが。 

「(よっ──よけないだと! それどころか!!)」 

小手調べに放った軽い胴への斬撃。 

常人なら、胴体が真っ二つどころか、衝撃で爆散するはずの剣戟をかわすのではなく、素受けした。 

私ですらかわそうと思う。それを直撃で受けておいて、なおノーダメージ? 

見ると、小汚いおっさんの視線が私の胸を凝視していた。 

不躾な視線に意外にも悪い気はしなかった。 

私と対等の存在に出会え……た? 

本気で語らいあうことができる友ができ……そう? 

本気でそう思い、今度は本気の一撃を脳天に振り下ろす、しかし。 

「(かわさない? それどころか、まんま顔面で受けて……ノーダメなんてぇ……!!)」 

私は勘違いをしていた。 

目の前の男は対等な存在ではない。 

圧倒的な上位者。 

勝負は既に決着していることはわかっていた。 

何故なら、私の本能が、このおっさんには絶対に敵わないと告げている。 

膝がガクガクと笑う。 

初めて自分より遥か彼方に位置する上位者に出会い。 

自分がただのメスガキに……過ぎない……自分が雑魚だ……と思い知らされた。 

今まで戦場で多くの兵と戦い、敵兵に恐怖と絶望を与え続けていた自分が、今まさにそれを感じる側になった。 

そう、私はただの弱いメスザコだとわからせられた。 

それだけのことに過ぎない。 

だが、気にしてられないため、ヒラヒラと見えてしまっているスカートの中や胸を凝視されていることに気がつくと。 

「(このおっさんは私を女として見てくれてくれるのか?)」 

キュン。 

そんな音が聞こえた。 

盛大に聞こえた。 

そうだ。メスに生まれた限り、強いオスの子孫を残したい。 

私の本能が告げていた。 

胸がキュンキュンする。 

それはメスが強いオスの遺伝子を求める自然な衝動。 

目の前の男は私の最良の伴侶となり得る。 

おっさんは不精ひげで、身なりも薄汚れているが、小綺麗にして、髪を整えて、髭を剃れば、かなりのイケオジになるんじゃないか? 

……想像すると。 

カッコイイ♡ 

私は生まれて初めて恋に落ちた。 

だが、戦士のプライドにかけて、このまま終われるはずがない。 

おっさんに渾身の一撃を繰り出し、それを人差し指と中指で止められて、ガクガクと情けなく震える小鹿のような自分の膝を精神力で突き動かし、渾身の斬撃を放った時、ようやくかわしてくれて、一瞬、喜色を見せてしまったが、次の瞬間。 

おっさんは私の剣の刀身に乗っていた。 

私の精神は崩壊寸前だった。 

……しかし、おっさんはそんな私を更に責めたてて来た。 

「えっと……そろそろ本気でやってくれやせんか?」 

「──なッ!!」 

何を私は勘違いしていたのだ。 

今のままの私ではただの雑魚だ。 

このおっさんは、お前はその程度の女なのか? っと、聞いて来たのだ。 

「(私は試されている?)」 

このおっさんに相応しい女になるためにはせめて爪痕を残さなければ! 

「わ、私の本気……見るが良いいいいいいッ!!」 

必死でこのおっさんのモノにしてもらうために気がふれたかのような、なりふり構わぬ斬撃を繰り出す。 

もう、スカートなんて、全く気にしてなどいられない。 

むしろ、スカートの中が丸見えの時の方がおっさんが私の下半身をじっと見つめてくれて、キュンキュンする。 

なんか、汗のと違うのが出て来ちゃった。 

羞恥を押し殺して、必死の斬撃を次々と繰り出す。 

これまでの自分の鍛錬の成果を全て余すことなく出すことができた渾身の一撃達。 

だが、どれもかわされることもなく、手のひらで受け止められ、あるいは指先ひとつで受け止められて、私の精神の限界が崩壊してしまった。 

「うっ……うっ、うわああああんっっ!!」 

気がつくと私は泣き出してしまっていた。 

そんな私に優しい笑顔を湛えて、スッと手を差し出してくれたおっさん。 

「け、結婚してください」 

気がつくと私は恥ずかしくも、女の子の方から告白してしまっていた。 
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