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39お嬢様はおっさんを誘惑する

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俺は夢でも見たのか? 

この処、色々あって、疲れている。 

昨日、聖女ちゃんと同じお布団で寝てしまったような気がする。 

俺、何もしてないよな? だよな? 

あんな清楚な子を俺ごときが穢すなんて考えられない。 

とりあえず、朝ごはんを作っていると、聖女ちゃんが降りて来て、たわいもない話をして朝支度をする。 

今日はお嬢様と魔法学園へ登校する日なんだ。 

ピンポーン 

呼び鈴が鳴る。 

ドアを開けると、お嬢様が立っていた。 

「な、なんでミアちゃんがおっさんの家に居るんだ?」 

「えへッ。同じパーティだから同棲したほうがいいかなって♡」 

「ず、ずるいッ!」 

お嬢様はワナワナと震えて、俺を睨むと。 

「ま、まさか、おっさん、ミアちゃんと......一線超えちゃったなんてこと......ないよね?」 

「と、とんでもねえ! 天に誓って、そんなことはしやせん」 

「でも、添い寝してもらったよ。全裸で、えへ♡」 

ガシャン! 

お嬢様が玄関に置いてあった信楽焼の置物を叩き壊してしまった。 

手が滑ったのだろう。 

「おっさん、学園に行くからね! そく、来るんだぞ!」 

言われるがままに、いそいそと騎士服もどきの制服を着てお嬢様と馬車に乗り込む。 

馬車に乗り込むなり、お嬢様はこう言った。 

「ポッキーゲームしよ♪」  

「は?」 

俺は理解した。これは夢だ。俺は疲れてまだ夢の続きを見ているんだ、と。 

「口止め料だぞ」  

「口止め料?」  

「裸のミアちゃんと添い寝した事バラすぞ」  

「へい。わ、わかりました」  

俺は夢ともあって、会えなく篭絡された。  

☆☆☆  

「はむ♪ おっさん、来い♪」  

「へ、へい」   

口にポッキーを加えたお嬢様は……。   

エロかった……。   

ほんのり頬を紅色に染めたお嬢様は清楚で……それでいてエロかった。   

「ん、ん......ちゅっ......ん、れろ、れる......♪ ああん。んん、れろれろ、ん......♪」   

ポッキーをかじるのではなく舐め取っていくお嬢様の声がエロい。   

それに近すぎないか?   

ポッキーゲームって、恥ずかしくなって止める女の子を楽しむモノだろ?  

でももう、お嬢様の顔はもうすぐ目の前だ。   

俺はドキドキして来た。それも背徳感に満ちたドキドキだ。   

リスペクトするご主人様であるお嬢様と……キス?   

それはダメだ!  俺ごときが! 

お嬢様の顔をこっそり薄目を開けて見ると、お嬢様は目を閉じていた。  

そして、顔を真っ赤にしている。  

「お、おっさん……♪ んん、ぢゅ……ん、うむ、れろ……♪」   

ああ、俺の理性が……。   

ダメだ。お嬢様の方からポッキーを折ってくれるという期待は止めよう。  

だって、これは夢何だもん。 

夢の中でだって、お嬢様の唇を穢すなんてあり得ねえ。 

この間、お嬢様の危急の時にキスしてしまって、あの柔らかい唇が忘れられなくて、こんな夢を見ているにちげえねえ。 

ヘタレと言われようが、夢の中だろと言われても、お嬢様とこのままキスしてしまう事は怖かった。  

お嬢様の息遣いが目の前に迫って来て、もう数mmの距離になった時。   

これもう触れてしまうとそう思った時。   

ポキッ!  

俺はお嬢様の誘惑に勝って、ポッキーを折った。  

「え?」   

口でポッキーを折った俺はお嬢様を見て驚いた。   

目を開けたお嬢様はそのまま俺に顔を近づけた。  

ちゅっ♪  

「おっさん、私のセカンドキスだぞ!」   

「ちょっ、ちょっと、お嬢様!?」   

俺は驚いたが、その時。  

『ゴトッ』  

馬車が揺れて、少し頭をぶつけた。 

「お、お嬢様?」 

「ん? どうかした? おっさん?」  

お嬢様はいつもと変わらぬ感じだ。 

やはり夢だったのか? 

先ほど馬車の中で頭をぶつけて、目を覚ましたのか? 

俺は夢だったと結論ずけて、安心するが、お嬢様は更に斜め上の事を言い出した。 

「ねえ、おっさん、エッチなゲームしよ♡」  

俺は更に理解した。これは夢の続きだ。俺は疲れて夢を見続けているんだ。 

それとも、俺の願望が夢になって、現れた? 

「へい、しやす」  

俺はおかしくなっていた。このめちゃめちゃ魅力的なお嬢様にやられていた。  

「じゃあね。『キスで言葉当てゲーム』」  

そう言った瞬間、お嬢様は俺にキスをした。  

「ん、うん、むぐッ」  

キスをしながら唇が動く、何か言葉を声に出さないで言っている。  

唇を離すとお嬢様は俺に聞いた。  

「私、なんて言ったと思う?」  

「......す、すいやせん。わかりやせん」  

『好きって言ったぞ』  

ボソっとデレながらお嬢様が赤い顔でモジモジしながら言う。  

何? この可愛いの?  

でも、これは夢だ。 

「もう、おっさんは鈍感だから。今度こそ当ててね」  

そう言って俺の唇にまたキス。  

今度はわかった。  

「大好き?」  

「もう、おっさんッ! 恥ずかしいぞ!」  

何これ? めちゃめちゃ可愛い、あと、エロい。  

「今度はおっさんの番だぞ」  

「へい」  

俺は『お嬢様、綺麗』とささやいた。  

「もう一回♪」  

これ絶対わかっていて言ってるな?  

でも、俺はお嬢様のリクエストに応えた。  

「私のこと綺麗っ言てくれた.....う、嬉しい。今度は私の番♪」  

ぷにゅとしたふっくらな唇がソワソワと自分の唇を撫でるのはかなり心地いい。  

俺もほんとはわかったけど、お嬢様と同じことをした。  

「しょうがないな。おっさん、絶対わかってて言ってるよね?」  

「そ、そんなことはありやせん」  

お嬢様は『愛してる』と言った。  

何度も互いに甘い言葉のキスをしながら言うと、最後にお嬢様は。  

『ねえ、しよ♪』  

そう唇でなぞった。一瞬、流されそうになったけど、流石に踏みとどまった。  

辛うじて、夢の中でもお嬢様を穢すなんていけねぇ。 

俺はすごく疲れてたんだと思う。  

「......おっさん。硬すぎるぞ!」  

いや、夢の中のお嬢様の貞操観念がおかしいと思う。  

その時、ドカンという音と共に、盛大に馬車が揺れて、俺は派手に頭をぶつけた。 

お嬢様を咄嗟に抱き止めて、お嬢様には被害はねえ。 

顔を見ると、いつも通り、平然としている。 

あぶねえ、あぶねえ。とんでもねえ勘違いをする所だった。 

これは全部夢だったんだ……と。 
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