92 / 106
92ケーニスマルク家の最期
しおりを挟む
「えっと、これで最期かな?」
「そのようね、下僕は良く頑張ってくれたわ、ご褒美の鞭は期待していいわよ」
「ねえ? 最近、リーゼとアルって、近すぎない? ヒ、ヒルデ、2号さんなのに、キスもしてもらった事なくてぇ! はぁ! これはゎ! 優しさだけじゃ、ムリ! とか、おまえはしょせんつなぎだよ、とか、もう疲れた…とか、きっと、僕よりふさわしい人がいるよ、とか言われて、振られてしまうのね! お、お願い、アル! ヒルデを捨てないでぇ!!」
「えいっ」
僕はチョップをヒルデに入れておいた。ヒルデは壊れた時、こうすると古いブラウン管のテレビみたいに直るのだ。
「痛いよぉ~、でもアルにチョップしてもらえたぁ~」
珍しく、リーゼがチョップを要求しない。そう言えば、リーゼとは2回もキスしちゃったな。ヒルデとは一度もしてない。そもそも、僕はまだ、新しい恋を始める気力を取り戻しきっていないんだ。そんないい加減な気持ちで、彼女達と付き合いたくない。
それはおいておいて、ケーニスマルク家の手の者をあっさり捕縛して、ついでの直接の家臣も捕まえる事に成功していた。意外とあっけなかった。
「リーゼ、証拠はそろったけど、これからどうするの? このままこいつらを突き出せば、エミリアさん殺害の件は立証できるけど、麻薬の件は証明できないよ、家臣も麻薬の件は口を割らなかった、どうするの?」
「リーゼはケーニスマルク家を潰すつもりではないの。エーリヒと、家長のベルンハルトを滅ぼす事ができれば、それでいい。きっと、ケーニスマルク家では、今頃面白い事が起こっているわ、うふふ」
リーゼが笑う、僕には意味が解らなかった。それで、聞いてみた。
「一体、ケーニスマルク家で、何が起こるの?」
「多分、ケーニスマルク家では、今頃エーリヒは始末されている筈よ、リーゼはあんなヤツの為に自分の手を汚したくない。だから、ケーニスマルク家の事はケーニスマルク家で後始末してもらう」
僕は今、ケーニスマルク家で何が起きているのかを想像する事が出来て、うすら寒くなった。貴族世界では、おそらく、家族とはいえ、家を守る為に罪を犯したエーリヒを始末するだろう。しかし、平民出身の僕には、絶対できないと思った。
「でも、家長のベルンハルトは逃げ切るんじゃないの? 兄のエーリヒだけで、リーゼはそれでいいの? いや、僕はリーゼの手伝いをするだけだから、いいんだけど?」
「下僕は馬鹿ね、一人だけ家臣を逃がしたでしょう? それも、下僕が英雄だとわざわざ伝えて」
「うん、リーゼの言う通りにしたよ。でもそれがベルンハルトと関係があるの?」
リーゼは一瞬、僕が見た事がない悪辣な顔を見せた、これが貴族の世界のリーゼの悪の部分か、僕は見たくはなかったが、リーゼはやはり貴族の令嬢なんだと痛感した。
「リーゼのご主人様が英雄のアルだとベルンハルトが知ったら…リーゼは手紙を送ったの…麻薬の事を公表されたくなければ、自決しなさい…と…そうすれば、家族は見逃してあげると…」
僕はゴクリと唾を呑みこんだ。確かにそれだと、リーゼの親友や奥さんには被害は及ばない。
しかし、リーゼの目論見は脆くも崩れ去った。それは、クラウスさんからの使者で判明した。
「こ、国王陛下自らケーニスマルク家の麻薬密売の証拠を掴まれた?」
「そ、それだと、ケーニスマルク家は…」
「お取り潰し…イルゼも奥様も…」
あくる日、僕達はケーニスマルク家の裁判に参考人として呼ばれて、裁判の結果を聞く事になった。裁判の結果は信じられないものだった。麻薬密売も、リーゼの家を陥れたのも…リーゼの親友のイルゼだった。全てが判明して、リーゼの唇は真っ青になっていた。
ケーニスマルク家の処分は決まった。全員断頭台に送られる事になり、刑は10日後に執行される。リーゼはケーニスマルク家の奥さんと娘のイルゼと会ってきた。エーリヒはリーゼの言う通り、既に処分されていた。
イルゼに会って、帰ってきたリーゼは涙声で、こう言った。
「…復讐って、胸糞悪いものなのね」
僕はリーゼの言葉で、リーゼがとても傷ついていることがわかった。その日、リーゼは僕の胸で泣いた。僕はひたすらリーゼを慰めてあげた。
「そのようね、下僕は良く頑張ってくれたわ、ご褒美の鞭は期待していいわよ」
「ねえ? 最近、リーゼとアルって、近すぎない? ヒ、ヒルデ、2号さんなのに、キスもしてもらった事なくてぇ! はぁ! これはゎ! 優しさだけじゃ、ムリ! とか、おまえはしょせんつなぎだよ、とか、もう疲れた…とか、きっと、僕よりふさわしい人がいるよ、とか言われて、振られてしまうのね! お、お願い、アル! ヒルデを捨てないでぇ!!」
「えいっ」
僕はチョップをヒルデに入れておいた。ヒルデは壊れた時、こうすると古いブラウン管のテレビみたいに直るのだ。
「痛いよぉ~、でもアルにチョップしてもらえたぁ~」
珍しく、リーゼがチョップを要求しない。そう言えば、リーゼとは2回もキスしちゃったな。ヒルデとは一度もしてない。そもそも、僕はまだ、新しい恋を始める気力を取り戻しきっていないんだ。そんないい加減な気持ちで、彼女達と付き合いたくない。
それはおいておいて、ケーニスマルク家の手の者をあっさり捕縛して、ついでの直接の家臣も捕まえる事に成功していた。意外とあっけなかった。
「リーゼ、証拠はそろったけど、これからどうするの? このままこいつらを突き出せば、エミリアさん殺害の件は立証できるけど、麻薬の件は証明できないよ、家臣も麻薬の件は口を割らなかった、どうするの?」
「リーゼはケーニスマルク家を潰すつもりではないの。エーリヒと、家長のベルンハルトを滅ぼす事ができれば、それでいい。きっと、ケーニスマルク家では、今頃面白い事が起こっているわ、うふふ」
リーゼが笑う、僕には意味が解らなかった。それで、聞いてみた。
「一体、ケーニスマルク家で、何が起こるの?」
「多分、ケーニスマルク家では、今頃エーリヒは始末されている筈よ、リーゼはあんなヤツの為に自分の手を汚したくない。だから、ケーニスマルク家の事はケーニスマルク家で後始末してもらう」
僕は今、ケーニスマルク家で何が起きているのかを想像する事が出来て、うすら寒くなった。貴族世界では、おそらく、家族とはいえ、家を守る為に罪を犯したエーリヒを始末するだろう。しかし、平民出身の僕には、絶対できないと思った。
「でも、家長のベルンハルトは逃げ切るんじゃないの? 兄のエーリヒだけで、リーゼはそれでいいの? いや、僕はリーゼの手伝いをするだけだから、いいんだけど?」
「下僕は馬鹿ね、一人だけ家臣を逃がしたでしょう? それも、下僕が英雄だとわざわざ伝えて」
「うん、リーゼの言う通りにしたよ。でもそれがベルンハルトと関係があるの?」
リーゼは一瞬、僕が見た事がない悪辣な顔を見せた、これが貴族の世界のリーゼの悪の部分か、僕は見たくはなかったが、リーゼはやはり貴族の令嬢なんだと痛感した。
「リーゼのご主人様が英雄のアルだとベルンハルトが知ったら…リーゼは手紙を送ったの…麻薬の事を公表されたくなければ、自決しなさい…と…そうすれば、家族は見逃してあげると…」
僕はゴクリと唾を呑みこんだ。確かにそれだと、リーゼの親友や奥さんには被害は及ばない。
しかし、リーゼの目論見は脆くも崩れ去った。それは、クラウスさんからの使者で判明した。
「こ、国王陛下自らケーニスマルク家の麻薬密売の証拠を掴まれた?」
「そ、それだと、ケーニスマルク家は…」
「お取り潰し…イルゼも奥様も…」
あくる日、僕達はケーニスマルク家の裁判に参考人として呼ばれて、裁判の結果を聞く事になった。裁判の結果は信じられないものだった。麻薬密売も、リーゼの家を陥れたのも…リーゼの親友のイルゼだった。全てが判明して、リーゼの唇は真っ青になっていた。
ケーニスマルク家の処分は決まった。全員断頭台に送られる事になり、刑は10日後に執行される。リーゼはケーニスマルク家の奥さんと娘のイルゼと会ってきた。エーリヒはリーゼの言う通り、既に処分されていた。
イルゼに会って、帰ってきたリーゼは涙声で、こう言った。
「…復讐って、胸糞悪いものなのね」
僕はリーゼの言葉で、リーゼがとても傷ついていることがわかった。その日、リーゼは僕の胸で泣いた。僕はひたすらリーゼを慰めてあげた。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる