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26その頃勇者エルヴィンは? 4
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エルヴィンの勇者パーティは新戦力を補充できておらず、困っていた。冒険者ギルドには先日の冒険者ビアンカを見捨てて逃げた事が広まり、誰も仲間になってくれない。
エルヴィンはパーティ強化担当の第一王子レオンと面会していた。
「殿下、大変由々しき事態です。仲間が足りません」
「う~ん。一体どうしたの? つい1か月前にはダンジョンの第4階層を攻略済だったのに?」
「それが、例の足手まといのハズレスキルがいなくなったせいで、仲間の士気が下がってしまって、パーティが上手く機能しないのです」
勇者エルヴィンはもっともそうに嘘八百を言う。彼は未だにステータス10倍のバフが無くなった事に気がつかないのだ。
「仕方ないね。僕の騎士団の精鋭を1人貸し与えよう。しばらくはそれで我慢して」
「ありがとうございます。しかし、国王陛下の指示には背く事になるのではないでしょうか?」
「それは心配いらないよ。君のレベルが上がれば全て解決するから。細かい事は気にしなくていい」
「承知しました」
エルヴィンは常宿に帰った。帰ったら、またナディヤかアンネでも抱こうかと考えているのか、薄ら笑いだ。
☆☆☆
あくる日、勇者パーティ強化担当の第一王子レオンは定例報告の為に王宮に参上していた。国王の謁見の間で、国王が待つ。
「それでどうじゃ? 勇者パーティの成長具合は?」
「はい、父上。順調に進んでいます。何せよ歴代最強のスピードで成長しているエルヴィンの勇者パーティです。僕のできる事など何もありません」
躊躇なく嘘の報告をするレオン、しかし。
「そうだな。何せよ、勇者パーティにはアル君がおるからな」
「はっぁ!? ア、アルですか? あのハズレスキルがですか?」
レオンは心底驚いた。あのごみの様なアルの事を何故王は持ち上げる?
「うむ。エルヴィンの勇者パーティが歴代最強なのは、彼のおかげだからな。わしも安心しておる。ところで、アル君は元気にしておるか?」
「え、ええ、もちろん元気にしております。しかし、何故アル君にそれ程ご執心なのでございましょうか? アル君は唯の偵察役です。もちろん偵察役を軽視するようなつもりはないですが、やはり勇者パーティの要は勇者であるエルヴィンではないでしょうか?」
レオンはアル殺害の事は咄嗟に伏せた。国王の真意がわからない。あんなごみの様な存在を覚えている事自体が信じられない。
「レオン、若いな。お前の目は節穴か? 先日第一王女が勇者エルヴィンに会いたいと言い出して、護衛を引き連れて勇者達に引き合わせたであろう?」
「はい、お姉様も稀代の勇者エルヴィンにご興味があるのは致し方ないものかと思われました。無事姉様と勇者パーティの懇親会も滞りなく進み、ご機嫌でお帰りになられました」
そういえば1週間程前のアルベルト殺害の直前に姉が遊びに来た。全く、忙しい時にあの女ときたら、呑気なものだ。だが、王女は勇者エルヴィンが気に入った訳だから、将来結婚をする可能性が高い。自身の将来の安泰のため、勇者エルヴィンと姉が結婚することには賛成だ。
しかし、僕の目が節穴? 一体どういう事だ?
「王女リナは勇者エルヴィンに会いに行ったのではない、アル君に逢いに行ったのだ。しかし、アル君は懇親会に出席してくれなかったそうでな。次回は頼むぞ。王女はアル君にすっかり魅了されておってな。私もあれ程人ができた人物ならと理解を示しておる」
「そ、そんば馬鹿な? アル君は唯の偵察役です。何故、姉上はアル君に?」
「王女リナはな、以前、この王宮でアル君に逢っていての。それで一目惚れしたらしい。彼は好青年だから無理もない。それに彼はパーティのステータスを常時10倍にする強化魔法の使い手じゃからのう、わっはっは!!」
レオンは体中から汗を吹き出していた。事実なら、アルを殺害した事が露見したら、大変な事になる。いや、露見する事はない筈だ。それより王女がエルヴィンでは無く、アルに興味を持っていた事の方が問題だ。自身の未来の権益が減る。
それだけではない。
何だと? レオンの額にはおびただしい汗が浮かぶ。そういえば、最近の勇者パーティの弱体化はあのアルを殺害した頃からだ。まさか、そんな……
「……」
「驚いたか? 私も先日王女に同行した騎士が告げてくれたので知ったのじゃ。騎士は王女が興味を持つアル君の事が知りたくて、つい鑑定の魔法を使ったらしい。しかし、ステータス10倍とは……我が国に例え魔王が攻めて来ても安泰じゃな。はは、頼もしいわ!」
レオンは愕然としたが、悪辣な彼は目まぐるしく計算した。
アルの死は隠すしかない。そして、これ以上勇者パーティが停滞すると、アルの死が露見してしまう。
「そうでしたか。私もアル君は唯の偵察役とは言え、人物は素晴らしい方と感服しておりました。さすが陛下、姉上。お目が高い!」
「はは、私も我が娘ながら、人を見る目があったと自慢したいぞ。その点、あの勇者エルヴィンはギラギラとした目で女性を見るけしからん人物だ。良くない噂ばかり耳にする。任期が終わったら、地方にでも領地を与えて適当に中央からは遠ざけても構わんだろう」
何だとぉ? それでは僕があの糞に媚び諂った努力は一体どうしてくれるのだ? レオンは一人焦る。
レオンは国王の謁見の間を去ると決意した。勇者パーティを早急に無理やり成長させるしかない。アルはその中で死んだ事にすればいい。その為には騎士を3人、いや5人つけよう。それだけいれば、あのダンジョンは攻略できる。後は、エルヴィンの勇者パーティを厳しい戦役か災害級の魔物討伐に単身挑ませればいい。
いや、いっそ、レベリングの途中で勇者パーティが全員死亡した方が良いのかもしれない。
どうせ勇者はエルヴィンだけではないのだから。
彼は人類の希望の星を自らの手で消してしまった事になぞ、これっぽっちも興味がなかった。ただ、自身の保身だけを考えるのであった。
エルヴィンはパーティ強化担当の第一王子レオンと面会していた。
「殿下、大変由々しき事態です。仲間が足りません」
「う~ん。一体どうしたの? つい1か月前にはダンジョンの第4階層を攻略済だったのに?」
「それが、例の足手まといのハズレスキルがいなくなったせいで、仲間の士気が下がってしまって、パーティが上手く機能しないのです」
勇者エルヴィンはもっともそうに嘘八百を言う。彼は未だにステータス10倍のバフが無くなった事に気がつかないのだ。
「仕方ないね。僕の騎士団の精鋭を1人貸し与えよう。しばらくはそれで我慢して」
「ありがとうございます。しかし、国王陛下の指示には背く事になるのではないでしょうか?」
「それは心配いらないよ。君のレベルが上がれば全て解決するから。細かい事は気にしなくていい」
「承知しました」
エルヴィンは常宿に帰った。帰ったら、またナディヤかアンネでも抱こうかと考えているのか、薄ら笑いだ。
☆☆☆
あくる日、勇者パーティ強化担当の第一王子レオンは定例報告の為に王宮に参上していた。国王の謁見の間で、国王が待つ。
「それでどうじゃ? 勇者パーティの成長具合は?」
「はい、父上。順調に進んでいます。何せよ歴代最強のスピードで成長しているエルヴィンの勇者パーティです。僕のできる事など何もありません」
躊躇なく嘘の報告をするレオン、しかし。
「そうだな。何せよ、勇者パーティにはアル君がおるからな」
「はっぁ!? ア、アルですか? あのハズレスキルがですか?」
レオンは心底驚いた。あのごみの様なアルの事を何故王は持ち上げる?
「うむ。エルヴィンの勇者パーティが歴代最強なのは、彼のおかげだからな。わしも安心しておる。ところで、アル君は元気にしておるか?」
「え、ええ、もちろん元気にしております。しかし、何故アル君にそれ程ご執心なのでございましょうか? アル君は唯の偵察役です。もちろん偵察役を軽視するようなつもりはないですが、やはり勇者パーティの要は勇者であるエルヴィンではないでしょうか?」
レオンはアル殺害の事は咄嗟に伏せた。国王の真意がわからない。あんなごみの様な存在を覚えている事自体が信じられない。
「レオン、若いな。お前の目は節穴か? 先日第一王女が勇者エルヴィンに会いたいと言い出して、護衛を引き連れて勇者達に引き合わせたであろう?」
「はい、お姉様も稀代の勇者エルヴィンにご興味があるのは致し方ないものかと思われました。無事姉様と勇者パーティの懇親会も滞りなく進み、ご機嫌でお帰りになられました」
そういえば1週間程前のアルベルト殺害の直前に姉が遊びに来た。全く、忙しい時にあの女ときたら、呑気なものだ。だが、王女は勇者エルヴィンが気に入った訳だから、将来結婚をする可能性が高い。自身の将来の安泰のため、勇者エルヴィンと姉が結婚することには賛成だ。
しかし、僕の目が節穴? 一体どういう事だ?
「王女リナは勇者エルヴィンに会いに行ったのではない、アル君に逢いに行ったのだ。しかし、アル君は懇親会に出席してくれなかったそうでな。次回は頼むぞ。王女はアル君にすっかり魅了されておってな。私もあれ程人ができた人物ならと理解を示しておる」
「そ、そんば馬鹿な? アル君は唯の偵察役です。何故、姉上はアル君に?」
「王女リナはな、以前、この王宮でアル君に逢っていての。それで一目惚れしたらしい。彼は好青年だから無理もない。それに彼はパーティのステータスを常時10倍にする強化魔法の使い手じゃからのう、わっはっは!!」
レオンは体中から汗を吹き出していた。事実なら、アルを殺害した事が露見したら、大変な事になる。いや、露見する事はない筈だ。それより王女がエルヴィンでは無く、アルに興味を持っていた事の方が問題だ。自身の未来の権益が減る。
それだけではない。
何だと? レオンの額にはおびただしい汗が浮かぶ。そういえば、最近の勇者パーティの弱体化はあのアルを殺害した頃からだ。まさか、そんな……
「……」
「驚いたか? 私も先日王女に同行した騎士が告げてくれたので知ったのじゃ。騎士は王女が興味を持つアル君の事が知りたくて、つい鑑定の魔法を使ったらしい。しかし、ステータス10倍とは……我が国に例え魔王が攻めて来ても安泰じゃな。はは、頼もしいわ!」
レオンは愕然としたが、悪辣な彼は目まぐるしく計算した。
アルの死は隠すしかない。そして、これ以上勇者パーティが停滞すると、アルの死が露見してしまう。
「そうでしたか。私もアル君は唯の偵察役とは言え、人物は素晴らしい方と感服しておりました。さすが陛下、姉上。お目が高い!」
「はは、私も我が娘ながら、人を見る目があったと自慢したいぞ。その点、あの勇者エルヴィンはギラギラとした目で女性を見るけしからん人物だ。良くない噂ばかり耳にする。任期が終わったら、地方にでも領地を与えて適当に中央からは遠ざけても構わんだろう」
何だとぉ? それでは僕があの糞に媚び諂った努力は一体どうしてくれるのだ? レオンは一人焦る。
レオンは国王の謁見の間を去ると決意した。勇者パーティを早急に無理やり成長させるしかない。アルはその中で死んだ事にすればいい。その為には騎士を3人、いや5人つけよう。それだけいれば、あのダンジョンは攻略できる。後は、エルヴィンの勇者パーティを厳しい戦役か災害級の魔物討伐に単身挑ませればいい。
いや、いっそ、レベリングの途中で勇者パーティが全員死亡した方が良いのかもしれない。
どうせ勇者はエルヴィンだけではないのだから。
彼は人類の希望の星を自らの手で消してしまった事になぞ、これっぽっちも興味がなかった。ただ、自身の保身だけを考えるのであった。
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