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第14話 旅立ち

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エリスを救出した俺は泊まっている宿舎に戻った。

エリスの部屋も用意してもらわないと。

ちょうど、宿舎のフロントで賢者マリア様とばったり出くわした。

「レオン、お前いったい?」

「何も聞かないでください。それより、もう一部屋用意して欲しいんですが......図々しいのは承知です」

賢者マリア様は俺の後ろにいるエリスに目が行くと、瞳を大きく見開いた。

「もしかして、お前エリスか? あの?」

エリスはびっくりして、震える。

「はい。エリスです。久しぶりですね。......マリア」

「ええ、勇者パーティの奴隷、エリスです。さっき取り戻してきました」

賢者マリア様の顔が険しくなる。

「お前、無茶しただろう? 私もエリスを取り戻そうと八方手を尽くしたが、合法的には無理だった。金で何とかするしかないと考えていたところだったが......」

俺はしかめっ面になった。あまり、賢者様に、俺の仕出かしたことを知られたくなかった。

「あの......私、馬小屋で十分です。お部屋に泊めて頂くなんて、滅相もありません」

エリスは身体の奥底まで奴隷としての精神が染みついている様だ。

「エリス、奴隷が宿屋の部屋に泊まってはいけないという法はないよ。俺はエリスに贖罪がしたい。エリスは俺の所為でトラブルに巻き込まれたんだから」

「レオン様、そんな、私はレオン様の奴隷ですよ。気にしないで下さい」

「いや、もう一部屋用意する。どうも、二人っきりにすると間違いが起こりそうだ」

「マリアさん、俺はそんな卑怯なことする男じゃ無いです!」

俺はむくれた。誓って、自分の立場を利用してエリスに手を出したりなんてしない。

俺はエリスには贖罪しなければいけないと思っていた。俺が彼女を巻き込んでしまったのだから。

マリアがエリスのために部屋をとってくれた。それで今日はそのまま夕食になった。

エリスは私ごとき者がお二人と食事を共にするなどとんでもないと遠慮したのだが、無理やり一緒に食事をさせた。

「で、レオンはエリスを連れていくのか?」

「はい。エリスには奴隷の烙印が押されてしまいました。俺のせいです」

「まあ、好きにしろ。多分、間違いをおこすだろうが、むしろ、お前にはその方が幸せなのかもしれないな」

「マリアさん。俺はエリスに贖罪したいだけなんです。からかわないで下さい」

俺がそう言うとマリアさんは可笑しそうに。

「お前は贖罪のつもりの様だが、エリスはどう思っているのやら」

俺は確かに自分の贖罪の事ばかり考えていた。

エリスはどう思っているのだろう?

「エリス、君は俺と一緒に旅をしてくれるって事でいいのかな? もちろん、必ずその奴隷の烙印は消してあげるよ」

エリスは下を向いていたが、顔を上げると。

「私はレオン様と一緒にいたいです。奴隷の烙印とかどうでも良いです。ただ、レオン様と一緒にいられることが良いです」

「ずいぶんな好かれ様だな」

マリアさんはまた、笑った。

「......」

「間違いが起きるのは時間の問題だな」

マリアさんに散々からかわれて、夕食を終えた。

☆☆☆

「そうすると、これからハーンの街に行くのか?」

「はい、ハーンで冒険者になって、そこで生計をたてようと思います」

「しかし、何故お前はエリスにそこまでこだわるのだ?」

「言って無かったのですが、俺が虚数魔法使いになれたのはエリスのおかげなんです」

「どういう事だ?」

「エリスは俺の魔法で俺の従者になったんです。その魔法が虚数魔法使いへのトリガーだったみたいなんです」

「なるほど!」

「ちょっと、エリス、ステータス見せてくれ?」

「あ、私、奴隷なのでステータスの見方は知らなくて」

「私が教えてあげよう」

マリアさんはエリスに一般魔法の『ステータス』を手ほどきした。

エリスのステータスにマリアさんと俺は目を見張った。

『タレント』
「虚数戦士Lv1」
「良妻賢母Lv10」
『スキル』
「剣技Lv1」
「加速Lv1」

「何これ?」

「虚数戦士、聞いた事無いな。俺は虚数魔法使い、多分、これが従者の正式タレントなんでしょうか?」

「それにしても、『加速』なんてクラス4タレントのハイランカーでも無いと手に入らないスキルだぞ、つまり、エリスはクラス4の戦闘のタレントをお前から付与された訳だ!」

「俺の魔法の威力を考えると、当然の様な気もします」

「わかった。レオンにはエリスに対して責任があるのだな」

「はい、俺がエリスのことを巻き込んでしまったから」

「たしかにな」

「お金を貯めて、エリスを平民に戻す。それが目標です。少なくとも奴隷の烙印は消してあげたい」

「わかったわ。とりあえず協力はする」

「ありがとうございます」

マリアさんは冒険者ギルドへの紹介状と当面の路銀を調達してくれた。
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