幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風

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第13話 エリス救出

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夕方になると、賢者マリアは宿から出かけた。俺もすぐに宿を出た。

目的地は例の奴隷商人の店だ。エリスを取り返す。

もちろん、あの奴隷商人は殺してやる。

王都は端から端までとにかく広い。だが、あの店の場所はよく覚えていた。忘れられる筈が無い。

俺はマリアに買ってもらったシャツとパンツを身に着け、黒いコートを羽織っていた。

黒いコートはいかにも魔法使いといった風情だが、コートはマリアに着ておけと言われたものだ。

このコートは好都合だった。剣士だった俺が正体を隠すにはもってこいだった。

俺の見かけは魔法使い風になっただけではなかった。失った右目にはアイパッチをしていた。

その他にも俺の外観に大きく変わったところがあった。頭髪が真っ白になっていたのだ。

拷問はそれ程過酷なものだったからだろう。

☆☆☆

奴隷商人の店につくと、普通に客のふりをして店に入った。

右腕の奴隷の烙印はコートで見えない。

身なりからは、誰も俺が奴隷だとは思わなかった様だ。

例の商人が話しかけてきやがった。俺の事はすっかり忘れてるらしい。

「これはこれは魔法使い様、本日はどのような奴隷をお求めですか?」

「俺が欲しいのは、美しい娘の奴隷だ」

「ほう、美しい娘ならたくさん在庫がございます。して、目的はどの様な?」

「美しい娘にしたい事など一つだけだろう、察しろ」

「これは大変失礼致しました。それでは、そういったご要望に答えられる奴隷をご案内致します。ただ少々値がはりますが、大変良い娘が入りましたので」

主人は店の奥に俺を連れて行った。奥には牢があった。それ程狭くは無い。

一番奥の牢にエリスはいた。

『!』

見違えた。化粧をほどこされ、艶やかな髪を結い上げたエリスはとても美しかった。

それに驚いたのはが、エリスはアリシアに瓜二つだった。違うのは、アリシアは銀髪で、エリスはストロベリーブロンド、薄い苺のような淡い綺麗なピンク色だった。

「どうです。なかなかのものでしょう。しかも、これは秘密ですが、この娘は罪などは犯していない普通の奴隷なのです。普通の奴隷を性奴隷にすることはできませんが、あるお方のお力添えで、それを可能にしました。それに、この娘、なんと生娘ですぞ! 私達も驚いたのですが、こんな性奴隷は滅多に手に入りませんぞ!」

「いいな。この娘をもらおう」

「承知しました。おい! この娘の準備をしろ!」

エリスは牢から出された。俺は店の商談室で、値段の交渉を行った。法外な値段を吹っかけてきやがった。

もちろん最初から払う気は少しも無いが、不審に思われない様に値段の交渉は十分粘った。

エリスは露出の多い服を着せられて俺の前に連れられて来た。手は拘束されたままだ。

「では、まず、お代を頂戴します。即金でお願いします」

「何だお前、まだ気がつかないのか?」

奴隷商人はキョトンとしていた。

「何がですか?」

「その娘を手に入れた時、男も一緒だったろう?」

「ああ、あの男なら、もう、生きては......な、何故それを!!」

「その時の男が俺だ。あれほどの酷い仕打ちをしておきながら忘れるとはな」

俺はコートをまくり、右腕の奴隷の烙印を見せた。

「な! ばかな、生きて帰れる筈が、公爵様のところから生きて帰った者などいない筈だ」

「簡単な事だ。あの貴族の娘は俺が殺した。だから、俺はここにいる」

奴隷商人は少し慌てた様だが、すぐに落ち着きを取り戻した。

「驚いたが、ここから貴様を生きて帰さなければいいだけの事だ。奴隷の分際で生意気な。おい、お前達、用心棒を呼んで来い!」

バタバタと音がして、何人かの雇われた冒険者達が集まってくる。

俺は冒険者たちに向かってこう言った。

「俺は勇者パーティのレオンという者だ。不当に奴隷の烙印を押された。この事は既に王都の賢者マリア様に伝えた。この奴隷商人に関わるなら、お前達も同罪だ!」

「何を言う!! こちらは勇者エリオス様が味方だ!」

「それは勇者エリアスの独断で、違法だろう? このことが知れたら勇者も国王からお叱りは受けるだろうな。勇者はお叱りだけで済むかもしれないが、お前らはどうなるかな? 冒険者諸君、良く考えてみろ。この奴隷商人は平民の俺に奴隷の烙印を押した。そして、このことは直に、明るみに出る。そうなる前に自分がどうすべきかを考えろ。
それに殺すつもりで来ないと俺には勝つことは出来んぞ。なにしろ俺は勇者パーティの一員だからな」

俺ははったりをかました。勇者エリアスが敵ではうやむやにされるのは目にみえていた。

「ここで残って頂いた方には報酬を十倍出します!!」

冒険者達は真っ二つに分かれた。残って十倍の報酬を得ようとする者、関わりあいになりたく無い者。

残った冒険者は4名だった。

冒険者達は剣を抜いた。

「警告はした。死んでも恨むなよ」

これははったりでは無い。今の俺の魔法の威力ならおそらく。

「はったりだ。4人相手に丸腰で勝てるか」

「俺は魔法使いだぞ。丸腰では無い!」

「魔法使いならロッドかスタッフを持っているものだろう!」

「俺には必要無い!」

冒険者達と対峙する。もちろん俺から先に動いた。

「『ダムド』!」

最初の一人が血飛沫をあげて四散する。

「こ、殺した、お前、本当に勇者パーティの人間か?」

「加減出来ないんだ。これ以上威力の弱い魔法がない。命が惜しければさっさと逃げる事だ。そこの奴隷商人のおかげで俺は人間らしい心を失くした。人を殺す事など躊躇はしない」

「「「こ、こいつやばい。逃げろ」」」

冒険者達は逃げた。俺を倒すには少なくとも何人かが死ぬ。いい判断だ。

「さて、返してもらうぞ、エリスを」

「わ、わかりました。返したらどうかお引き取りください」

エリスの拘束は解かれた。かわいそうに、手に拘束具の痣ができている。

「これでいいでしょう。私もその冒険者の事は口外しません。勇者様とレオン様の間の事は私にもわかりかねます。私もあなた様が勇者パーティ様の一員の方とは知らなかったのです。なにとぞご容赦くださいませ」

「嫌だな」

奴隷商人は顔が引きつる。

「わ、私はただの商人です。望まれる物を売っただけです」

「あの貴族の屋敷には大勢の奴隷がいたぞ。そして皆、拷問されて死んだ。体中を切り刻まれてな。お前が特別な奴隷として売ったせいだ。あの奴隷達の無残な死に様を知ってるのか?」

「そ、そんなの知る訳が無いじゃないですか!」

「じゃあ、お前の身体で教えてやろう」

「ひっ、やっ、やめ、やめて、やめてください」

俺の顔に冷たい笑みが浮かんだ。

奴隷商人は失禁した。気がついたのだろう。俺の狂気に。

「『ダムド』!」

奴隷商人の身体は粉々に四散した。人だったものは消え、後に残ったのは血と肉片だけだった

☆☆☆

エリスは最初俺だとは分からなかった様だった。だが、

「レ、レオン様なんですか?」

「ああ、少し姿形が変わってしまったが、レオンだ」

「助けに来てくれたんですか?」

「ああ、当たり前だ。エリスを放ってなんておけない。俺のせいだ」

「レオン様、ありがとうございます。エリスは嬉しいです。折角仲良くなれたのに二度と会えないと思ってました」

「エリス、君には謝らなければいけない。無関係な君を巻き込んでしまって、本当にすまん」

「......そんな。多分、違うと思います。勇者エリアス様はいつも私のことを嫌なものを見る目で見ていました。私はエリアス様が悪事を働く時に、いつも睨んでました。だからエリアス様は私の事が嫌いだったんだと思います」

「エリス、エリアスに様なんてつけるな。君はエリアスから売られたんだぞ?」

「そうですね。じゃあ、私はレオン様だけの奴隷ですね」

「俺も今は奴隷だ。見ろよ。奴隷の烙印」

「私とお揃いですね」

「ああ」

エリスは奴隷の烙印を俺とお揃いと言って嬉しそうに笑顔を向けた。

この子はなんていい子なんだろう。俺は癒されるのを感じた。

......しかし。

「でも、レオン様、何故さっきの奴隷商人を殺してしまったんですか? 私、レオン様のあんな姿は見たくありませんでした」

「あの男はたくさんの奴隷を貴族に売っていた。売られた奴隷たちは、貴族の屋敷で拷問を受けて結局みんな死んでしまった。あんな男は死んだ方が世の中のためになるんだ」

「レオン様、死んで当然な人間なんていませんよ。女神様の教えをお忘れですか?」

「......エリス」

「エリスの為にあんな事はしないでください。エリスは優しいレオン様が好きです。さっきのレオン様は怖かった」

「エリス、ごめん。俺は君から教えてもらってばかりだね」

俺はエリスに殺人を戒められた。そして、エリスは俺の心を癒してくれた。

闇に包まれていた俺の心が少しだけ晴れた様な気がした。
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