39 / 62
第39話 ベアトリスの告白
しおりを挟む
「いい加減そいつにリザレクションをかけてやれ」
俺はベアトリスに言った。アリスは痛みをこらえ、うずくまっていた。
「まだ、いいんじゃない?それくらいの傷じゃ直ぐには死なないわよ、剣豪は」
「お前ら仲間なんだろう? 何故そんなに冷たくできる? ベネディクトだって仲間だったんだろ? あの時すぐにリザレクションをかけてれば生きていられた筈だ」
「なんであんなぽっと出の女の為にそんなことしなきゃいけないの? リザレクションは結構精神への負担が大きいの。すっごく疲れるのよ」
「つ、疲れるってお前、人の命だぞ!」
「虫けらの命に何の価値があるの?」
「ベアトリス、いい加減にしろ! これからはお前をもう妹とは思わない。俺の事も二度と兄とは呼ぶな!」
「本当、お兄ちゃんって酷い人ね。いったい私がいつもどんな気持ちだったか知ってるの? 知らないでしょう? そうやっていつもいつも自分の正義感を周りに押し付けて、私のことを傷つけて......お兄ちゃんてさ、私のことどう思ってたの? 私はね、お兄ちゃんのことがね」
「待て、ベアトリスお前、何を言って......」
だが俺の言葉は遮られてしまった。
「レオンのことが好きだったの。兄ではなく、一人の男の人として......レオンはそうじゃなかったでしょ? 違うの? 好きでもないのにどうしていつもいつもあんなに優しくしたのよ、おかしいでしょう? 好きじゃないならあんなに優しくしないでよ! 兄妹で愛し合って何がいけないのよ! 何か悪い事でもあるなら教えて!」
聞かなければよかった事もある。ベアトリスの気持ち......
そんな事考えた事もなかった。だって俺たちは兄妹なんだから。
俺は妹を散々に甘やかしてきた。
大切な、本当に大切な妹だ。だけど、一人の女として見たことは無かった。
「ベアトリス」
「何よ、どうせ気持ち悪いとかって思ってるんでしょ? いいわよ、もう。あんたなんか必要ない。だって今の私にはエリアス様がいるから。エリアス様さえいれば他に何もいらないの」
「ベアトリス、俺の事を恨むのは構わない。だけどな、これ以上エリアスと一緒になって悪事を働くのだけは止めるんだ」
「私達が悪事って? いったい何のこと言ってるの? 悪事を働いたのはお兄ちゃんの方でしょ?」
「俺達は商隊を護衛していただけだ。冒険者として」
「嘘よ、エリアス様が悪い奴らだって」
「そもそも犯罪者なら、殺すよりも生きたまま警護兵に引き渡した方がいいだろ? それを何故関係無い人まで殺す必要がある?」
「だって、エリアス様が、悪い奴らだから殺して構わないって」
「エリアスが言ったら、誰でも殺すのか?」
「殺すわよ。当たり前じゃないの。エリアス様はいつも正しいのよ」
「ベアトリス、お前騙されている。良く考えてみろ。悪人だからって、全部が全部殺して言い訳がないだろう?」
「そ、そんなの知らないわよ」
「もういいだろう」
エリアスが不機嫌に割り込んできた。
「お前ら、さっさとその二人のごみを持って帰れ。俺の気分が変わらないうちにな」
「......」
俺はベアトリスの事が気になったが、ここは無事に逃げる方が先決だ。
今の俺ではエリアスに勝てるかどうかわからない。
「レオン殿」
イェスタが俺を急かした。
「わかってる」
俺は渋々承知した。
「二人の遺体をもらい受ける」
俺達はシモンとベネディクトの遺体を引き取ると、その場を後にした。
俺はベアトリスに言った。アリスは痛みをこらえ、うずくまっていた。
「まだ、いいんじゃない?それくらいの傷じゃ直ぐには死なないわよ、剣豪は」
「お前ら仲間なんだろう? 何故そんなに冷たくできる? ベネディクトだって仲間だったんだろ? あの時すぐにリザレクションをかけてれば生きていられた筈だ」
「なんであんなぽっと出の女の為にそんなことしなきゃいけないの? リザレクションは結構精神への負担が大きいの。すっごく疲れるのよ」
「つ、疲れるってお前、人の命だぞ!」
「虫けらの命に何の価値があるの?」
「ベアトリス、いい加減にしろ! これからはお前をもう妹とは思わない。俺の事も二度と兄とは呼ぶな!」
「本当、お兄ちゃんって酷い人ね。いったい私がいつもどんな気持ちだったか知ってるの? 知らないでしょう? そうやっていつもいつも自分の正義感を周りに押し付けて、私のことを傷つけて......お兄ちゃんてさ、私のことどう思ってたの? 私はね、お兄ちゃんのことがね」
「待て、ベアトリスお前、何を言って......」
だが俺の言葉は遮られてしまった。
「レオンのことが好きだったの。兄ではなく、一人の男の人として......レオンはそうじゃなかったでしょ? 違うの? 好きでもないのにどうしていつもいつもあんなに優しくしたのよ、おかしいでしょう? 好きじゃないならあんなに優しくしないでよ! 兄妹で愛し合って何がいけないのよ! 何か悪い事でもあるなら教えて!」
聞かなければよかった事もある。ベアトリスの気持ち......
そんな事考えた事もなかった。だって俺たちは兄妹なんだから。
俺は妹を散々に甘やかしてきた。
大切な、本当に大切な妹だ。だけど、一人の女として見たことは無かった。
「ベアトリス」
「何よ、どうせ気持ち悪いとかって思ってるんでしょ? いいわよ、もう。あんたなんか必要ない。だって今の私にはエリアス様がいるから。エリアス様さえいれば他に何もいらないの」
「ベアトリス、俺の事を恨むのは構わない。だけどな、これ以上エリアスと一緒になって悪事を働くのだけは止めるんだ」
「私達が悪事って? いったい何のこと言ってるの? 悪事を働いたのはお兄ちゃんの方でしょ?」
「俺達は商隊を護衛していただけだ。冒険者として」
「嘘よ、エリアス様が悪い奴らだって」
「そもそも犯罪者なら、殺すよりも生きたまま警護兵に引き渡した方がいいだろ? それを何故関係無い人まで殺す必要がある?」
「だって、エリアス様が、悪い奴らだから殺して構わないって」
「エリアスが言ったら、誰でも殺すのか?」
「殺すわよ。当たり前じゃないの。エリアス様はいつも正しいのよ」
「ベアトリス、お前騙されている。良く考えてみろ。悪人だからって、全部が全部殺して言い訳がないだろう?」
「そ、そんなの知らないわよ」
「もういいだろう」
エリアスが不機嫌に割り込んできた。
「お前ら、さっさとその二人のごみを持って帰れ。俺の気分が変わらないうちにな」
「......」
俺はベアトリスの事が気になったが、ここは無事に逃げる方が先決だ。
今の俺ではエリアスに勝てるかどうかわからない。
「レオン殿」
イェスタが俺を急かした。
「わかってる」
俺は渋々承知した。
「二人の遺体をもらい受ける」
俺達はシモンとベネディクトの遺体を引き取ると、その場を後にした。
1
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる