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第40話 婚約破棄
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俺は自分の部屋で休んでいた。
俺たちはエリアスの宿から領主アンダースの館へと帰ってきた。
まだ日は落ちていないが、俺はベットで横になっていた。
目を瞑り妹のベアトリスと許嫁のアリシアのことを想っていた。
色々な事が頭をよぎっている、そんな時。
『コン・コン』
控えめなノックの音が聞こえた。
おかしいな。アルベルティーナ達との約束には大分時間がある。
エリスなら、ノックなどしない。
「......レオン」
涼やかでいて、それでいてどこか悲しみを含んだような声がした。
......アリシアか?
「誰だ?」
声の主を知りながらも答えた。怒気を含めた声で。
「......私、アリシアよ......」
「............」
アリシアは何か言葉を待っているのだろう。だが、俺は無言をつらぬいた。
待ちきれなかったのか、アリシアはドアを開けた。
部屋の前には無言で立つアリシアがいた。
待っていれば俺から何かしらの優しい言葉をかけてもらえると期待しているのかもしれない。
そんな表情だった。
俺はまたしても根負けした。
「何しに来たんだ?」
アリシアはやっと顔をあげた。一瞬、笑顔が見えた。
「後をつけてきたのか?」
「そうよ。でも安心して、別にエリアスの命令じゃない。ただ、レオンと話したくて」
「今更俺と話す事なんて無いだろう。お前はエリアスの女になったんだろう?」
「それは違う、今はエリアスとは距離を置いてるの。信じて」
「そんな事が信じられる訳無いだろ。お前、俺を何だと思ってるんだ?」
「私は、私はレオンが好きなだけ。わ、私、本当に後悔してる。私にとって本当に大事な人が誰なのか、今ならよく分かる」
「俺の気持ちはどうなるんだ。これまで俺がどれだけ惨めな思いをしたか分かるか? 役立たずだった俺のことを、お前はゴミ屑みたいに捨てたんだ。本当に大事だったのは俺だって? 今さら過ぎるだろ!」
「ごめん、私、自分でもどうしてあんな事したのかわからなくて。私、馬鹿だった。一時の感情に流されて。お願い、許して。私、ようやく気づいたの。レオンは私にとって、居心地の良い空気みたいな人。私、レオンがいなくなったら、息が出来ずに死んでしまう」
「恋愛は勇者として、俺はいざという時のキープか? 馬鹿にするな! あの時だってお前から一方的に離れて行ったじゃないか!」
「......」
「俺の事なんてどうでもよかったんだろ? ホント、何なんだよ?」
「許してください。なんでもします」
「じゃ、俺の前から消えてくれ。前も言ったがそれが俺の願いだ」
「ごめんなさい。お願い、許して。あなたと別れたくないの」
「......」
「私にとっで一番大切なのはレオン、あなたなのよ」
「じゃあ、何故エリアスとは別れないんだ?」
「エリアスとは別れるわよ。本当よ」
アリシアは顔をあげた。瞳からは涙が溢れていた。
「私、おかしくなってた。ごめんなさい。ごめんなさい。もう二度と間違いは犯さない」
「そんな嘘が通用するか。謝っても許されない事だってあるんだぞ!!!」
「わ、私、私、あああああああああああああああああああ」
アリシアは号泣し始めた。
「結局、二人を天秤にかけただけだろう」
「違う、違う、違う......」
アリシアは泣き続けた......
アリシアは泣き尽くしたあと、しばらくの間、沈黙していた。
そして意を決したように、やおら自分の服に手をかけた。
「な、何を?」
アリシアはただ、黙って服を脱いでいった。
「何でもするから。だから......」
アリシアは裸で抱きついてきた。懐かしいアリシアの香り、ひと肌の温もりが俺を包む。アリシアの身体は暖かく、そして柔らかかった。
「アリシア、止めろ!」
俺は冷たく言った。
「アリシア、俺はお前たちを殺そうと思っていた」
『びくん』とアリシアが震える
「嘘よ、レオンはそんな事しない」
アリシアが顔を上げる。潤んだ瞳は淫靡な色に包まれている。
「俺はお前らの所為で死線を彷徨ったんだぞ?」
「それでもレオンは私を殺したりしない」
どうやら俺のことはアリシアには見透かされているようだ。
「アリシア、殺したいと思った事は本当にあった。今でもお前を見るたびにあの日の夜のことを思い出してしまう」
アリシアは俺を見つめると。
「ごめんなさい。私、何でもする、どんな償いでもする。でも、あなただけは失いたくないの」
「アリシア、駄目だ。俺達はもう終わりなんだ」
「レオン、お願い。せめて一度だけでもいいから私を抱いて」
「なんだ、これからエリアスと寝るんじゃなかったのか?」
「あれは、あなたを助ける為に仕方なく言ったのよ。本当に」
「俺と寝た後にエリアスと寝るのか? ふざけるのも大概にしろ、アリシア! 俺はもうお前の事何とも思ってない!」
「そんな筈ない。一緒に育んだいっぱいの思い出、私には忘れられないわ。レオンだってそうでしょ?」
本当は俺もアリシアの事を簡単に忘れる事なんて出来ない。
例え、どんなに汚れて、堕ちてしまった幼馴染でも、俺にとっては大切な人だ。
だが、今の俺にはエリスがいる。
その時。
『バタン』
俺はドアの方を見た。そこにはエリスがいた。
「エ、エリス、これは違うんだ!」
俺は狼狽した。これじゃエリスに勘違いされてしまう。
「レオン様、私は勘違いなんかしません。ごめんなさい、お二人の話はさっきから聞いてました。それで、我慢できなくて、つい......レオン様、レオン様がアリシアさんを受け入れられない理由は本当にアリシアさんが許せないからなんですか?」
「そ、それは」
「私の存在って何なんですか?」
「エリス、すまなかった。俺の今の恋人は君だ」
「アリシア様は以前のアリシア様に戻ってます。今のアリシア様は良い人なのかもしれないです。それでも、レオン様は私のものなんです。アリシア様には渡しません!」
「エリス、ごめん。俺、どっちつかずで中途半端だった。俺は君のおかげでアリシアやベアトリスを殺そうだなんて思わないで済むまともな人間に戻れたのもエリスのおかげだ」
「レオン様!」
「アリシア、悪いが、今の俺にはエリスが大事なんだ」
「......ごめんなさい......もう遅かったのね」
アリシアは小さな声で言った。
どうやら俺がアリシアを抱かない理由を悟ったようだ。
今の俺に必要なのはエリスだけだ。そこにはもう、アリシアの入り込む余地は無い。
アリシアは服を身に着けていった。そして.....
「ひっく」
アリシアは時々すすり泣いた。
汚れきった俺の幼馴染。どんなに汚れても、俺は彼女を許していた。
だが、恋人として彼女を受け入れる事はもう出来なかった。
「ごめんなさい。私が馬鹿だった。いつまでも許嫁のつもりで、ごめん。私にそんな資格がある訳ないわよね。ごめんなさい」
「......ア、アリシア」
「婚約は破棄しましょう。故郷の両親には手紙を送っておくわ」
「すまないアリシア。だけど、勇者パーティだけは早く抜けてくれ。このままじゃ取り返しのつかないことになる」
「そうね。でも、ベアトリス一人残すのは可哀想だから。ベアトリスが正気に戻ったら、二人で抜けるわ」
「ああ、お願いする」
「エリスさん、レ、レオンを......レオンさんのことをお願いします」
そういうとアリシアは泣きながら部屋を出て行った。
俺たちはエリアスの宿から領主アンダースの館へと帰ってきた。
まだ日は落ちていないが、俺はベットで横になっていた。
目を瞑り妹のベアトリスと許嫁のアリシアのことを想っていた。
色々な事が頭をよぎっている、そんな時。
『コン・コン』
控えめなノックの音が聞こえた。
おかしいな。アルベルティーナ達との約束には大分時間がある。
エリスなら、ノックなどしない。
「......レオン」
涼やかでいて、それでいてどこか悲しみを含んだような声がした。
......アリシアか?
「誰だ?」
声の主を知りながらも答えた。怒気を含めた声で。
「......私、アリシアよ......」
「............」
アリシアは何か言葉を待っているのだろう。だが、俺は無言をつらぬいた。
待ちきれなかったのか、アリシアはドアを開けた。
部屋の前には無言で立つアリシアがいた。
待っていれば俺から何かしらの優しい言葉をかけてもらえると期待しているのかもしれない。
そんな表情だった。
俺はまたしても根負けした。
「何しに来たんだ?」
アリシアはやっと顔をあげた。一瞬、笑顔が見えた。
「後をつけてきたのか?」
「そうよ。でも安心して、別にエリアスの命令じゃない。ただ、レオンと話したくて」
「今更俺と話す事なんて無いだろう。お前はエリアスの女になったんだろう?」
「それは違う、今はエリアスとは距離を置いてるの。信じて」
「そんな事が信じられる訳無いだろ。お前、俺を何だと思ってるんだ?」
「私は、私はレオンが好きなだけ。わ、私、本当に後悔してる。私にとって本当に大事な人が誰なのか、今ならよく分かる」
「俺の気持ちはどうなるんだ。これまで俺がどれだけ惨めな思いをしたか分かるか? 役立たずだった俺のことを、お前はゴミ屑みたいに捨てたんだ。本当に大事だったのは俺だって? 今さら過ぎるだろ!」
「ごめん、私、自分でもどうしてあんな事したのかわからなくて。私、馬鹿だった。一時の感情に流されて。お願い、許して。私、ようやく気づいたの。レオンは私にとって、居心地の良い空気みたいな人。私、レオンがいなくなったら、息が出来ずに死んでしまう」
「恋愛は勇者として、俺はいざという時のキープか? 馬鹿にするな! あの時だってお前から一方的に離れて行ったじゃないか!」
「......」
「俺の事なんてどうでもよかったんだろ? ホント、何なんだよ?」
「許してください。なんでもします」
「じゃ、俺の前から消えてくれ。前も言ったがそれが俺の願いだ」
「ごめんなさい。お願い、許して。あなたと別れたくないの」
「......」
「私にとっで一番大切なのはレオン、あなたなのよ」
「じゃあ、何故エリアスとは別れないんだ?」
「エリアスとは別れるわよ。本当よ」
アリシアは顔をあげた。瞳からは涙が溢れていた。
「私、おかしくなってた。ごめんなさい。ごめんなさい。もう二度と間違いは犯さない」
「そんな嘘が通用するか。謝っても許されない事だってあるんだぞ!!!」
「わ、私、私、あああああああああああああああああああ」
アリシアは号泣し始めた。
「結局、二人を天秤にかけただけだろう」
「違う、違う、違う......」
アリシアは泣き続けた......
アリシアは泣き尽くしたあと、しばらくの間、沈黙していた。
そして意を決したように、やおら自分の服に手をかけた。
「な、何を?」
アリシアはただ、黙って服を脱いでいった。
「何でもするから。だから......」
アリシアは裸で抱きついてきた。懐かしいアリシアの香り、ひと肌の温もりが俺を包む。アリシアの身体は暖かく、そして柔らかかった。
「アリシア、止めろ!」
俺は冷たく言った。
「アリシア、俺はお前たちを殺そうと思っていた」
『びくん』とアリシアが震える
「嘘よ、レオンはそんな事しない」
アリシアが顔を上げる。潤んだ瞳は淫靡な色に包まれている。
「俺はお前らの所為で死線を彷徨ったんだぞ?」
「それでもレオンは私を殺したりしない」
どうやら俺のことはアリシアには見透かされているようだ。
「アリシア、殺したいと思った事は本当にあった。今でもお前を見るたびにあの日の夜のことを思い出してしまう」
アリシアは俺を見つめると。
「ごめんなさい。私、何でもする、どんな償いでもする。でも、あなただけは失いたくないの」
「アリシア、駄目だ。俺達はもう終わりなんだ」
「レオン、お願い。せめて一度だけでもいいから私を抱いて」
「なんだ、これからエリアスと寝るんじゃなかったのか?」
「あれは、あなたを助ける為に仕方なく言ったのよ。本当に」
「俺と寝た後にエリアスと寝るのか? ふざけるのも大概にしろ、アリシア! 俺はもうお前の事何とも思ってない!」
「そんな筈ない。一緒に育んだいっぱいの思い出、私には忘れられないわ。レオンだってそうでしょ?」
本当は俺もアリシアの事を簡単に忘れる事なんて出来ない。
例え、どんなに汚れて、堕ちてしまった幼馴染でも、俺にとっては大切な人だ。
だが、今の俺にはエリスがいる。
その時。
『バタン』
俺はドアの方を見た。そこにはエリスがいた。
「エ、エリス、これは違うんだ!」
俺は狼狽した。これじゃエリスに勘違いされてしまう。
「レオン様、私は勘違いなんかしません。ごめんなさい、お二人の話はさっきから聞いてました。それで、我慢できなくて、つい......レオン様、レオン様がアリシアさんを受け入れられない理由は本当にアリシアさんが許せないからなんですか?」
「そ、それは」
「私の存在って何なんですか?」
「エリス、すまなかった。俺の今の恋人は君だ」
「アリシア様は以前のアリシア様に戻ってます。今のアリシア様は良い人なのかもしれないです。それでも、レオン様は私のものなんです。アリシア様には渡しません!」
「エリス、ごめん。俺、どっちつかずで中途半端だった。俺は君のおかげでアリシアやベアトリスを殺そうだなんて思わないで済むまともな人間に戻れたのもエリスのおかげだ」
「レオン様!」
「アリシア、悪いが、今の俺にはエリスが大事なんだ」
「......ごめんなさい......もう遅かったのね」
アリシアは小さな声で言った。
どうやら俺がアリシアを抱かない理由を悟ったようだ。
今の俺に必要なのはエリスだけだ。そこにはもう、アリシアの入り込む余地は無い。
アリシアは服を身に着けていった。そして.....
「ひっく」
アリシアは時々すすり泣いた。
汚れきった俺の幼馴染。どんなに汚れても、俺は彼女を許していた。
だが、恋人として彼女を受け入れる事はもう出来なかった。
「ごめんなさい。私が馬鹿だった。いつまでも許嫁のつもりで、ごめん。私にそんな資格がある訳ないわよね。ごめんなさい」
「......ア、アリシア」
「婚約は破棄しましょう。故郷の両親には手紙を送っておくわ」
「すまないアリシア。だけど、勇者パーティだけは早く抜けてくれ。このままじゃ取り返しのつかないことになる」
「そうね。でも、ベアトリス一人残すのは可哀想だから。ベアトリスが正気に戻ったら、二人で抜けるわ」
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