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第49話 処罰

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俺達はエリアス達勇者パーティを王都へ連行した。

ベリアルは全て喋った。彼も武人、本意ではなかった様だ。

こうして、シュツットガルト公と勇者エリアスの悪事は明るみになった。

アルベルティーナの後ろ盾は賢者マリアだった。

そして、国王陛下の元、裁判が始まった。

「皆の者、顔をあげい」

「「「「「はっ」」」」

国王陛下は凄まじい圧を発していた。

一国をまとめるには相当の胆力がいるのだろう。

ただの老人ではない。

「エール地方伯爵シュツットガルト、貴様の罪状明白、この飢饉の時に民の血税を不当にあげ、尚且つ、卑怯にもその要因を、自作自演するなど、言語道断、貴様には死罪を与える。斬首刑だ」

「はは、国王陛下の命ざれるがままに」

シュツットガルト公は毅然と死罪を受け入れた。もとより覚悟していたのだろう。

「そして、勇者パーティの悪事、看過できん。エール地方伯爵の所業、エリアス他、勇者の従者の入れ知恵である事、明白、従者アリシア、ベアトリス、アリス、3名を斬首刑とする。そして、勇者エリアス、貴様は謹慎せよ。」

「陛下の意のままに」

「そ、そんな!」

「私が、私が死罪」

アリシアだけが無言だった。最初から死罪を受け入れていたのか? 最初からわかっていたのか?

ベアトリスとアリスは受け入れ難い様だ。ベアトリスはエリアスを信じていただけなのだ。

「ま、待って下さい!」

俺は思わず声を出してしまった。平民、いや、奴隷の俺が発言などできる筈が等ないが、

「アリシアとベアトリスの刑を減刑下さい。二人は勇者に騙されていただけで、悪事には加担等していない筈です」

「レオンよ、そなたの気持ちはわかる。血を分け合った妹、かつての婚約者、だがな、ベアトリスが罪の無い冒険者を殺害した事実、アリシアがエール地方伯爵との連絡員だった事実、罪は重い。何より、民は許さない。決して」

「では、何故、勇者エリアスは謹慎だけなのですか? おかしいでは無いですか?」

「許せ、魔王を封印できる者は勇者エリアスだけだ。私とて不快極まるのだ」

「魔王は俺が倒します。虚数魔法使いの俺が必ず倒します。だから、お願いします!」

「御伽噺の世界を信じる訳にはいかん」

「......そ、そんな」

「国王陛下、アリスは関係ありません」

エリアスが言い出した。

「なんだと?」

「アリスは都のパーティにも行った事すらございません。二人と違って」

「エリアス様、私も助けて下さい。私を愛してくれているのでしょう?」

ベアトリスが悲鳴にも似たような声で訴える。

「お前は散々冒険者を殺したじゃ無いか?」

「だって、あの人達は悪い奴らだって......」

「そんな訳あるか、お前は俺の代わりに死ね」

「そ、そんな、私を愛してくれたんじゃ......」

「ただの遊びに決まってるだろ、頭悪いな」

『ぎり』

俺は唇を噛んだ。妹への侮辱、たとえ俺を裏切った妹へ対してのものでも悔しい。

エリアスが死罪なら、仕方がない、だが、エリアスだけはのうのうと生きるだと?

「わかった。アリスへの刑は減刑しよう。エリアス同様謹慎じゃ」

エリアスは俺を見た。そしてあの冷酷な薄ら笑いをした。

『ぎり』

俺は更に唇を噛んだ。

『こんな、こんな事ってあるか? 何故悪事を働いたエリアスが謹慎で、アリシアとベアトリスが極刑なんだ? そんなのおかしいだろ?』

兵がシュツットガルト公、エリアス、アリシア、ベアトリス、アリスを連行する。

手に枷を架されたアリシアとベアトリスは俺の横を通りすがら俺に話しかけた。

「レオン。ありがとう。助けようとしてくれて」

「お兄ちゃん、ありがとう。そして、ごめんなさい」

二人が通りすがら俺に声をかけた時、俺はもう我慢できなくなった。

「王よ、おかしいだろう? 二人の罪はそんなに重いのですか?」

「止めて、レオン」

アルベルティーナが俺を諭す。

「お願いだから、国王の決定は絶対なの」

アルベルティーナは目に涙を溜めて俺を諭した。

だが、

「俺は納得できません!」

「言ったであろう。民は許しはしないと、二人が王都で、どの様に思われているのかお前は知らぬのか?」

「そ、それは......」

アリシアとベアトリス、国民の顰蹙をかった二人。

「お前にとって二人は大切な人なのであろう、だが、民が飢えておる時、二人は何をしておった?」

俺は思い出した。国が飢饉の時、二人は豪奢な晩餐会に頻繁に出席していた事、たくさんの宝石やアクセサリーを身に付けて......国民が飢えている時に。

「それでも、エリアスについてはおかしいではないですか?」

「止めて、レオン様、レオン様まで」

エリスが俺にすがってきた。必死に止める気だ。

「いい加減にせよ、レオン。王の御前ぞ」

声は賢者マリアだった。

マリアは俺を押さえ込んだ。

「な、何を、うっ」

そして、俺は意識を失った。
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