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第48話 レオンの怒り
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「ど・う・で・も・い・い・だ・と・?」
俺は怒りのあまり、エリアスの聖剣を素手で片手で掴み、握りしめた。
バキン!
聖剣はいともあっさりと折れた。
「何故だ? 何故俺の一撃を浴びて生きてやがるんだ?」
「お前の剣の威力が足らんだけだ!」
俺には魔法障壁IIIのスキルがある。エリアスの剣をもってしても大したダメージではない。
「そ、そんな馬鹿な! 聖剣が折れる筈が!」
「例えな、裏切られても、嫌われていたとしても......俺にとって幼馴染のアリシアと妹のベアトリスは大切な人なんだ! 故郷で一緒に育った! たくさんの思い出がある! 命ぐらいかける! それを『たかが』だと?」
「そんな馬鹿な! 俺様がたかが荷物持ちに! たかが、こんな女のために!」
「まだ言うかぁ!!!!!」
俺の怒りは頂点を通り過ぎて、どす黒い感情があふれ出て来た。
「いや、こんなの間違いだ。聖剣はインチキだったに違いない。俺が今殴り殺してやる!」
「へぇ? 俺をどうするんだって?」
そう言うと、俺は加速IIIを発動した。
「な! に!?」
エリアスの右腕は俺の手によって、押さえられていた。
「貴様、まぐれで加速IIIのスキルでも手に入れたか? だがなぁ、たかが荷持ち持ちのお前が、お前ごときがぁ、勇者の俺の腕を組み伏せる事ができるとでも思ったのか? 俺はレベル80だぞ!!」
そう言い終わった瞬間、
「や、やめて、やだ、やめ――――い、いだい゛……ちぐしょう、おまえっ! あぐっ、いだい゛よぉ……あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
エリアスは情けない声を上げる。
「もう一度聞く、俺をどうしようて言うんだ?」
「そ、そんな馬鹿な!? 俺のレベルは80だぞ? 80なんだぞ!? 勇者だ、勇者なんだぞ! こんな馬鹿な事がある訳がない!? そうか! お前、力の指輪でズルをしているのだろう? そうだろう?」
俺はため息を吐く......何故、こいつは、ただ自分が弱いだけだという事がわからないのだろうか? 仮に力の指輪だとかいう魔道具のおかげだとしても、それも実力のうちだろう。何より自分の仲間を人質に取るなど恥を知らんのか?
「......俺はお前に大切な人を奪われた」
「ひっ、ひっ、ひぃぃぃぃぃいぃぃ!」
エリアスは失禁をしていた。ぼたぼたと汚らわしい小水が漏れ出る。
「ああ、それを問い詰めるつもりはない。俺の魅力が足らなかっただけだ......だがな! お前はアリシアを斬ろうとした!」
「レ、レオン......私なんかの為に」
アリシアが泣き出した。ポロポロと涙がこぼれているのが見てとれる。
見ると、汚らわしい小便がアリシアの方に流れる。
「......アリシアが汚れるじゃないか!」
次の瞬間、勇者エリアスの体は宙に舞った。
ズカン!! と凄まじい音と共に、エリアスの身体がねじれて後に吹っ飛んだ。俺がただ、エリアスを振り払っただけの行為で、エリアスの身体は壁に叩きつけられた。壁にはまるで大砲の弾丸が着弾したかの様な大きな破口を作っていた。
俺は怒りをエリアスを叩きのめす形で発散した。エリアスの顔面に拳をめり込ませ、そして、鼻もちならない、整ったその鼻をボキボキとへし折り、綺麗な白い歯を欠けさせ……た。
「ひっ……!? ひぐっ、ふぐっ……!」
「……これはアーネの分!」
俺は更にエリアスを殴った。折れた歯や血しぶきを撒き散らしながら……
エリアスの端正に整っていた顔は、見るも無残な姿になっていた。鼻は潰れ、歯は折れ、血まみれだ。
「や、止めてぇ、しゃめてくださいぃぃ」
エリアスが涙を流して地面をのた打ち回るその姿は、人を見下し上位の存在であることに何の疑問も持たず、傲慢をただ誇示していたモノとは思えないほどのものだ。
「……これはシモンさんとベネディクトさんの分」
ドカン!! と、また凄まじい音と共に、エリアスの身体は再び後に吹っ飛んだ。それは、人間に殴られて生じる現象とは思えないようなものだった。それこそ女神様の天罰、女神の槍が落ちたかの様だった。
折れた骨や血しぶきを撒き散らしながら、エリアスは再び床に叩きつけられた。
「よ、よくも勇者であるこの俺を殴り飛ばすとは……ど、奴隷ごときがぁ! 奴隷風情がぁ……!!」
エリアスは涙や血で顔を濡らし、鬼の様な形相だが、ついさっきまでの余裕のある力に満ちた様なものでは無く、プルプルと膝が笑っているのが見てとれた。まるで震えている小鹿のような情けなさだ。
「アリシアはお前の仲間だろう? 貴様の血は何色だ? それとも精子が流れてるか? お前に生きる資格は無い! 逝って来い、大霊界!!!」
「駄目です。レオン様!!」
俺の耳にエリスの声が響いた。
『死んでいい人間なんていないです』
『人を殺すレオン様は怖くて嫌いです』
エリスの言葉が思い出された。
俺はエリアスを怒りに任せて殴り殺そうとしていた。
それを、エリスに見透かされた。
「命だけは助けてやる。だがな......法の裁きは受けてもらう。覚悟しろ!」
「ちくしょう、ちくしょう。俺様が何故こんな」
エリアスは尚も生きていた。勇者はこれ位では死なない。
「俺にしか魔王は封印出来無い事を忘れるなよ!」
「エリアス、お前は裁きを受けろ! 少しは虐げられた人の気持ちを知れ!」
俺はエリアスに自身の置かれている立場を思い知らせた。
みんなが勇者エリアスを冷たい目で見下げた。
そして、俺はアルベルティーナに怪我人へリザレクションをかけてもらいながら、レベルドレインの魔法を使った。これで、勇者パーティは全員レベル1、普通の冒険者以下だ。
俺はアリシアを見た。アリシア、昔のアリシアに戻ったアリシア。
アリシアは俺を裏切った。だが、今は俺を好きだと言ってくれた。謝りたいとも言ってくれた。
そして、エリスの存在を知り、身を引いた。自分には資格が無いからと言って。
俺は幼馴染がまともになった事に安堵した。後は裁きを受けて更生して欲しい。
ただ、そう思った。あんなことになるとはついも知らずに。
俺は怒りのあまり、エリアスの聖剣を素手で片手で掴み、握りしめた。
バキン!
聖剣はいともあっさりと折れた。
「何故だ? 何故俺の一撃を浴びて生きてやがるんだ?」
「お前の剣の威力が足らんだけだ!」
俺には魔法障壁IIIのスキルがある。エリアスの剣をもってしても大したダメージではない。
「そ、そんな馬鹿な! 聖剣が折れる筈が!」
「例えな、裏切られても、嫌われていたとしても......俺にとって幼馴染のアリシアと妹のベアトリスは大切な人なんだ! 故郷で一緒に育った! たくさんの思い出がある! 命ぐらいかける! それを『たかが』だと?」
「そんな馬鹿な! 俺様がたかが荷物持ちに! たかが、こんな女のために!」
「まだ言うかぁ!!!!!」
俺の怒りは頂点を通り過ぎて、どす黒い感情があふれ出て来た。
「いや、こんなの間違いだ。聖剣はインチキだったに違いない。俺が今殴り殺してやる!」
「へぇ? 俺をどうするんだって?」
そう言うと、俺は加速IIIを発動した。
「な! に!?」
エリアスの右腕は俺の手によって、押さえられていた。
「貴様、まぐれで加速IIIのスキルでも手に入れたか? だがなぁ、たかが荷持ち持ちのお前が、お前ごときがぁ、勇者の俺の腕を組み伏せる事ができるとでも思ったのか? 俺はレベル80だぞ!!」
そう言い終わった瞬間、
「や、やめて、やだ、やめ――――い、いだい゛……ちぐしょう、おまえっ! あぐっ、いだい゛よぉ……あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
エリアスは情けない声を上げる。
「もう一度聞く、俺をどうしようて言うんだ?」
「そ、そんな馬鹿な!? 俺のレベルは80だぞ? 80なんだぞ!? 勇者だ、勇者なんだぞ! こんな馬鹿な事がある訳がない!? そうか! お前、力の指輪でズルをしているのだろう? そうだろう?」
俺はため息を吐く......何故、こいつは、ただ自分が弱いだけだという事がわからないのだろうか? 仮に力の指輪だとかいう魔道具のおかげだとしても、それも実力のうちだろう。何より自分の仲間を人質に取るなど恥を知らんのか?
「......俺はお前に大切な人を奪われた」
「ひっ、ひっ、ひぃぃぃぃぃいぃぃ!」
エリアスは失禁をしていた。ぼたぼたと汚らわしい小水が漏れ出る。
「ああ、それを問い詰めるつもりはない。俺の魅力が足らなかっただけだ......だがな! お前はアリシアを斬ろうとした!」
「レ、レオン......私なんかの為に」
アリシアが泣き出した。ポロポロと涙がこぼれているのが見てとれる。
見ると、汚らわしい小便がアリシアの方に流れる。
「......アリシアが汚れるじゃないか!」
次の瞬間、勇者エリアスの体は宙に舞った。
ズカン!! と凄まじい音と共に、エリアスの身体がねじれて後に吹っ飛んだ。俺がただ、エリアスを振り払っただけの行為で、エリアスの身体は壁に叩きつけられた。壁にはまるで大砲の弾丸が着弾したかの様な大きな破口を作っていた。
俺は怒りをエリアスを叩きのめす形で発散した。エリアスの顔面に拳をめり込ませ、そして、鼻もちならない、整ったその鼻をボキボキとへし折り、綺麗な白い歯を欠けさせ……た。
「ひっ……!? ひぐっ、ふぐっ……!」
「……これはアーネの分!」
俺は更にエリアスを殴った。折れた歯や血しぶきを撒き散らしながら……
エリアスの端正に整っていた顔は、見るも無残な姿になっていた。鼻は潰れ、歯は折れ、血まみれだ。
「や、止めてぇ、しゃめてくださいぃぃ」
エリアスが涙を流して地面をのた打ち回るその姿は、人を見下し上位の存在であることに何の疑問も持たず、傲慢をただ誇示していたモノとは思えないほどのものだ。
「……これはシモンさんとベネディクトさんの分」
ドカン!! と、また凄まじい音と共に、エリアスの身体は再び後に吹っ飛んだ。それは、人間に殴られて生じる現象とは思えないようなものだった。それこそ女神様の天罰、女神の槍が落ちたかの様だった。
折れた骨や血しぶきを撒き散らしながら、エリアスは再び床に叩きつけられた。
「よ、よくも勇者であるこの俺を殴り飛ばすとは……ど、奴隷ごときがぁ! 奴隷風情がぁ……!!」
エリアスは涙や血で顔を濡らし、鬼の様な形相だが、ついさっきまでの余裕のある力に満ちた様なものでは無く、プルプルと膝が笑っているのが見てとれた。まるで震えている小鹿のような情けなさだ。
「アリシアはお前の仲間だろう? 貴様の血は何色だ? それとも精子が流れてるか? お前に生きる資格は無い! 逝って来い、大霊界!!!」
「駄目です。レオン様!!」
俺の耳にエリスの声が響いた。
『死んでいい人間なんていないです』
『人を殺すレオン様は怖くて嫌いです』
エリスの言葉が思い出された。
俺はエリアスを怒りに任せて殴り殺そうとしていた。
それを、エリスに見透かされた。
「命だけは助けてやる。だがな......法の裁きは受けてもらう。覚悟しろ!」
「ちくしょう、ちくしょう。俺様が何故こんな」
エリアスは尚も生きていた。勇者はこれ位では死なない。
「俺にしか魔王は封印出来無い事を忘れるなよ!」
「エリアス、お前は裁きを受けろ! 少しは虐げられた人の気持ちを知れ!」
俺はエリアスに自身の置かれている立場を思い知らせた。
みんなが勇者エリアスを冷たい目で見下げた。
そして、俺はアルベルティーナに怪我人へリザレクションをかけてもらいながら、レベルドレインの魔法を使った。これで、勇者パーティは全員レベル1、普通の冒険者以下だ。
俺はアリシアを見た。アリシア、昔のアリシアに戻ったアリシア。
アリシアは俺を裏切った。だが、今は俺を好きだと言ってくれた。謝りたいとも言ってくれた。
そして、エリスの存在を知り、身を引いた。自分には資格が無いからと言って。
俺は幼馴染がまともになった事に安堵した。後は裁きを受けて更生して欲しい。
ただ、そう思った。あんなことになるとはついも知らずに。
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