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9 挿し絵入り
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待合室の人は、しだいに表へと出て行ってしまった。
未だ、顔を愛撫されながらRETSUGAは、ちらりと横目で外を見、
「もうすぐ船がつくよ。俺も乗るから、そろそろ行かないか?」
と、言った。
瀬菜は、そうね……、と返事をし、膝から降りたが、ねちっこくRETSUGAの手を握ったまま離さない。
「船の中でも触らせて……」
と、性懲りも無くお願いする。
RETSUGAは、呆れながらも、はいはい、分かったよ、と答えた。
「あんたみたいな変態探偵があの島でする仕事ってなんなんだろうね~」
「あなたこそ、こんな時期に一人で帰省するって、どういうこと?仕事は?ひょっとしてスランプ?」
瀬菜は先ほど買った焼酎をぐびぐびと飲みながら聞いた。瓶から口を離し、ぷは~、と一息つくと、RETSUGAが、俺にも……、と瓶を奪ってこちらもぐびぐびとやった。中々の呑みっぷりに、へぇ~、と瀬菜は声を漏らした。RETSUGAは、瓶を握った手でそのまま口元をぬぐって答えた。
「俺は、兄貴に呼ばれたから帰るだけさ。仕事のことは、元からどうでもいい」
「ふ~ん、なりたくてなった仕事じゃないんだ」
「……まあね」
「?」
(なんか、今、心なしか沈んでなかったか?)
「実は、帰るのが嫌?」
ぎろり、とにらまれる。
(あ、やっぱ、嫌なんだ……)
「ところで、あなたが島にいたのは何年前?」
少し話を変えてみた。
「そうだな……。6年は経つかな?」
「ナイス!ちょっと聞きたいんだけど、6年前に起きた神隠し事件の事、覚えてるかな~?」
「なんで今更そんな話を持ち出す!」
声を荒げ、きつく睨まれた。
少し気を紛らわすための世間話に……、と思ったが彼にはどうやら逆効果だったらしい。ちょっと失敗だったか……、と肩をすくめて
「一応、それが仕事なのよ」
と、弁解をした。
気まずいな~、と思ったが正直に話しておく。嘘や誤魔化しは、反って彼の怒りを増強しかねない。
「帰んな!」
RETSUGAは、そう言って、瀬菜から離れ、突き飛ばした。
「今更、あの時のことをほじくるんじゃねぇ!どうせ、消えたものは戻ってこない……」
RETSUGAは苦しげに顔を歪めた。
「……あなた……、その事件の関係者ね」
この一言がまずかった。
二人は丁度、フェリーの乗り合い通路の最後尾にいて、今、まさに乗り込もうと船と海との境に立っていた。
瀬菜が最後に船に乗り込もうとしたとき、RETSUGAに強く突き飛ばされてしまった。
その隙に船の乗り込み口が閉まる。
「あ、ちょっと!!」
と、言っている間にも、船と港の距離は離れていく。
瀬菜は慌てて、飛び乗ろうとしたが、そうはさせぬ……と、RETSUGAがものすごい形相で睨んでいた。今、飛び移っても、海に突き落とされそうだ……。
「帰れ!あの事件はもう終わった。あんたの出る幕などない!」
有無など言わせぬ怒声。しかし、依頼人はRETSUGAではないのだ。関係者が拒否したところで、瀬菜は仕事を放棄するわけにはいかない。端から、こういう事態は想定済みだ。
瀬菜は自分の腰に手を回し、ウエストポーチから何かを取り出した。ピシッと革を打つ音をさせ、瀬菜は走り出した。
「帰れと言われて、帰ったとあっちゃ~、私はおまんま食べていけないのよ、坊や!」
船と陸との間は、すでに5メートル以上離れいる。
焼酎の瓶は放り出し、後方で激しく割れる音がする。
先程手にした物が、空を切って、唸りを上げた。
――鞭だ。
瀬菜は鞭を船の手すりへと巻き付かせ、一気に跳躍した。鮮やかな半円を描き、瀬菜はRETSUGAの傍らへと滑らかに着地をする。
RETSUGAと瀬菜の間に、海風だけが通り過ぎた。
二人は無言で視線を交わす。
彼の眉が微かにゆがみ、嫌悪感をあらわにした。
瀬菜は余裕の表情で、髪をうなじから掬って、さらりと風になびかせた。
「私をそこらの”女”と同じように甘くみないことね」
と、言って微笑んだ。
RETSUGAの口元にも笑みがこぼれた。だが、目は笑ってなどいない。
「そのようだな……。だったら、次の手と行きますか?」
「……?!」
その台詞と同時にRETSUGAは、瀬菜へと突進していた。女相手に本気の右フックだ。だが、瀬菜は僅かに後退して、余裕でそれをかわす。元から、かわされるのは計算済みか、間髪入れずに今度は左の後ろ回し蹴り。これもまた体を沈ませかわす。
未だ、顔を愛撫されながらRETSUGAは、ちらりと横目で外を見、
「もうすぐ船がつくよ。俺も乗るから、そろそろ行かないか?」
と、言った。
瀬菜は、そうね……、と返事をし、膝から降りたが、ねちっこくRETSUGAの手を握ったまま離さない。
「船の中でも触らせて……」
と、性懲りも無くお願いする。
RETSUGAは、呆れながらも、はいはい、分かったよ、と答えた。
「あんたみたいな変態探偵があの島でする仕事ってなんなんだろうね~」
「あなたこそ、こんな時期に一人で帰省するって、どういうこと?仕事は?ひょっとしてスランプ?」
瀬菜は先ほど買った焼酎をぐびぐびと飲みながら聞いた。瓶から口を離し、ぷは~、と一息つくと、RETSUGAが、俺にも……、と瓶を奪ってこちらもぐびぐびとやった。中々の呑みっぷりに、へぇ~、と瀬菜は声を漏らした。RETSUGAは、瓶を握った手でそのまま口元をぬぐって答えた。
「俺は、兄貴に呼ばれたから帰るだけさ。仕事のことは、元からどうでもいい」
「ふ~ん、なりたくてなった仕事じゃないんだ」
「……まあね」
「?」
(なんか、今、心なしか沈んでなかったか?)
「実は、帰るのが嫌?」
ぎろり、とにらまれる。
(あ、やっぱ、嫌なんだ……)
「ところで、あなたが島にいたのは何年前?」
少し話を変えてみた。
「そうだな……。6年は経つかな?」
「ナイス!ちょっと聞きたいんだけど、6年前に起きた神隠し事件の事、覚えてるかな~?」
「なんで今更そんな話を持ち出す!」
声を荒げ、きつく睨まれた。
少し気を紛らわすための世間話に……、と思ったが彼にはどうやら逆効果だったらしい。ちょっと失敗だったか……、と肩をすくめて
「一応、それが仕事なのよ」
と、弁解をした。
気まずいな~、と思ったが正直に話しておく。嘘や誤魔化しは、反って彼の怒りを増強しかねない。
「帰んな!」
RETSUGAは、そう言って、瀬菜から離れ、突き飛ばした。
「今更、あの時のことをほじくるんじゃねぇ!どうせ、消えたものは戻ってこない……」
RETSUGAは苦しげに顔を歪めた。
「……あなた……、その事件の関係者ね」
この一言がまずかった。
二人は丁度、フェリーの乗り合い通路の最後尾にいて、今、まさに乗り込もうと船と海との境に立っていた。
瀬菜が最後に船に乗り込もうとしたとき、RETSUGAに強く突き飛ばされてしまった。
その隙に船の乗り込み口が閉まる。
「あ、ちょっと!!」
と、言っている間にも、船と港の距離は離れていく。
瀬菜は慌てて、飛び乗ろうとしたが、そうはさせぬ……と、RETSUGAがものすごい形相で睨んでいた。今、飛び移っても、海に突き落とされそうだ……。
「帰れ!あの事件はもう終わった。あんたの出る幕などない!」
有無など言わせぬ怒声。しかし、依頼人はRETSUGAではないのだ。関係者が拒否したところで、瀬菜は仕事を放棄するわけにはいかない。端から、こういう事態は想定済みだ。
瀬菜は自分の腰に手を回し、ウエストポーチから何かを取り出した。ピシッと革を打つ音をさせ、瀬菜は走り出した。
「帰れと言われて、帰ったとあっちゃ~、私はおまんま食べていけないのよ、坊や!」
船と陸との間は、すでに5メートル以上離れいる。
焼酎の瓶は放り出し、後方で激しく割れる音がする。
先程手にした物が、空を切って、唸りを上げた。
――鞭だ。
瀬菜は鞭を船の手すりへと巻き付かせ、一気に跳躍した。鮮やかな半円を描き、瀬菜はRETSUGAの傍らへと滑らかに着地をする。
RETSUGAと瀬菜の間に、海風だけが通り過ぎた。
二人は無言で視線を交わす。
彼の眉が微かにゆがみ、嫌悪感をあらわにした。
瀬菜は余裕の表情で、髪をうなじから掬って、さらりと風になびかせた。
「私をそこらの”女”と同じように甘くみないことね」
と、言って微笑んだ。
RETSUGAの口元にも笑みがこぼれた。だが、目は笑ってなどいない。
「そのようだな……。だったら、次の手と行きますか?」
「……?!」
その台詞と同時にRETSUGAは、瀬菜へと突進していた。女相手に本気の右フックだ。だが、瀬菜は僅かに後退して、余裕でそれをかわす。元から、かわされるのは計算済みか、間髪入れずに今度は左の後ろ回し蹴り。これもまた体を沈ませかわす。
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