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紅砂はコンラッドにこれからの事を訊ねた。
恐らく近いうちにアドリエンもこの島を訪れるだろう。その時、コンラッドはどうするつもりなのか?
このままずっと両腕を失ったジーナと共にひっそりと暮らしたいのなら、ここではない、どこか違う場所に案内するつもりだと伝えた。
「それでお前はどうする?アドリエンが来る前に逃げた方がいいんじゃないのか?」
赤い髪は陽光に当たって少しオレンジ色に輝いていた。青い瞳は至極穏やかで、これがあの残忍なアドリエンの遺伝子から作られた鬼だとは到底思えない。
「心配してくれるのですか?」
「いや、別に……。お前が食われようが、アドリエンが死のうが、俺はどっちだって構わない。ただ──」
コンラッドはここで言葉を濁した。なんとも言い難い複雑な表情をすると、「──ただ、ジーナと共にこのまま暮らすというのは、無理かもしれない」と、言った。
「人間と共に暮らす事は出来ない、と?」
コンラッドは頷いた。
「だから、お前に協力してやってもいいぞ。ジーナの暮らしを保証しろ。そうしたらお前の駒になってやる」
それは紅砂にとって願ってもない言葉だった。ちょっと意志薄弱な所もあるが、それでも高位結鬼の力を借りられるのだ。そんなことは、結鬼の歴史からするとあり得ない現象だ。高位の方から低位に従うなんて、父の奏閻が聞いたら飛び上がるほど驚くに違いない。
「じゃあ、お願い出来ますか?」
「いいぜ。何でも言ってみろよ」
「では、蘭武の護衛をお願いします」
「──あ?!」
よりによって何故??と、いうような、嫌な表情をしていたが、紅砂は構わずお願いした。
コンラッドとの交渉も無事に終わり、紅砂が家路に戻ると、木陰に小さな影が隠れていた。
紅砂は立ち止まって声をかけた。
「──父さん。心配事かけて、申し訳ありません」
「ふん!別におまえのことを心配している訳じゃねーど。おでが心配してるのは蘭ちゃんだ。蘭ちゃんの中に白閻を宿らせて、おまえは何をするつもりだ?」
「何を?って、今更その質問ですか?僕は前々から計画を立ててましたよね?」
「ん?なんだそりゃ?」
すっ惚ける奏閻に紅砂は深いため息をついた。
「兄さんを高位結鬼に甦らせて、結鬼の歴史を変えましょうって、前々から言ってましたよね?」
「──ええ?!」と、初めて聞いたかのように奏閻が驚いている。
前々から奏閻には振っていた話なのだが、やはり聞いていなかったらしい。
奏閻に過去や未来はない。気の遠くなるような長い年月を憂いもなく、いつでもハイテンションでいられるのは、奏閻が今にしか生きていない証拠だ。
「だ、だからおまえは卯月のねーちゃんとやったんか?意図して結鬼の禁忌を犯したんか?」
「い、いや……あれは意図してませんでしたけど……僕もびっくりしました」
木陰から驚く奏閻の気配を感じた。
「──な、なんだって?!おまえが襲った訳ではないのか?合意なのか?!ともすると……確かに結鬼の歴史を揺るがす問題だ……。あの紅髪の高位結鬼もどういう訳かおまえに協力すると言っているし、確かに何かがおかしい……。これで白閻が甦ったら……?」
「益々、先が分からなくなりますでしょう?」
ううむ……と奏閻は唸った。流石の奏閻も同意してくれている。ここまできたらあともう一息かもしれない。
「父さんにお願いしたい事があります。それこそ今生最後のお願いになるかもしれません」
「お、おう!なんだ?」
「一先ず、霧島に移動してもらえますか?ジーナさんと蘭武、後、護衛役にコンラッド・ヴィルトールを連れて」
「──ええ!!お姉ちゃん達はいいが、あの高位結鬼は嫌だ!!無理無理無理無理!!」
高位結鬼アレルギーの奏閻は力の限り拒否した。やっぱり無理か、と紅砂も諦めかけたが、もしも蘭武が出産した場合、奏閻が間近にいた方がやはり安心だ。紅砂はなんとか奏閻にうんと言わせる方法を考えた。
「コンラッド・ヴィルトールって……、あのご面相でしょ。すっごい女性にモテるんですよね」
「けっ!!だろうな!!」
奏閻は吐き捨てた。他人がモテても実に面白くもなんともねえっと言っている。
「でね~、あの人、フランスでは種馬してたらしいよ。高位結鬼なのに人間と交配出来るから」
「──な、なんだって?!」
余りの驚きに木陰から奏閻が遂に姿を現した。
「ジーナさんが産んだ結鬼の父親は彼だよ」
「──はああ?!??!!」
もう顎が地面に着きそうなほど驚いている。
「でねー。彼は種馬なんかやっていたせいか、1日に最低10回は女性を抱いてないと落ち着かないらしくて……」
「……と、とんでもねえ、セックス依存性だな……」
「そう、それも一人では物足りない」
「つまりあらゆるところでお姉ちゃんを引っかけてはパコパコと……」
「そうなんですよ、しちゃってるんですよ」
「こりゃ覗いてやらんといかんな……」
「その辺の事は、僕はなんとも……」
「隠しカメラを買ってもいい?」
奏閻が目をキラキラ輝かせて訊いてきた。紅砂はひっそりとガッツポーズを決めた。これで奏閻は動く。奴を操るにはエロを餌にすればいい。
恐らく近いうちにアドリエンもこの島を訪れるだろう。その時、コンラッドはどうするつもりなのか?
このままずっと両腕を失ったジーナと共にひっそりと暮らしたいのなら、ここではない、どこか違う場所に案内するつもりだと伝えた。
「それでお前はどうする?アドリエンが来る前に逃げた方がいいんじゃないのか?」
赤い髪は陽光に当たって少しオレンジ色に輝いていた。青い瞳は至極穏やかで、これがあの残忍なアドリエンの遺伝子から作られた鬼だとは到底思えない。
「心配してくれるのですか?」
「いや、別に……。お前が食われようが、アドリエンが死のうが、俺はどっちだって構わない。ただ──」
コンラッドはここで言葉を濁した。なんとも言い難い複雑な表情をすると、「──ただ、ジーナと共にこのまま暮らすというのは、無理かもしれない」と、言った。
「人間と共に暮らす事は出来ない、と?」
コンラッドは頷いた。
「だから、お前に協力してやってもいいぞ。ジーナの暮らしを保証しろ。そうしたらお前の駒になってやる」
それは紅砂にとって願ってもない言葉だった。ちょっと意志薄弱な所もあるが、それでも高位結鬼の力を借りられるのだ。そんなことは、結鬼の歴史からするとあり得ない現象だ。高位の方から低位に従うなんて、父の奏閻が聞いたら飛び上がるほど驚くに違いない。
「じゃあ、お願い出来ますか?」
「いいぜ。何でも言ってみろよ」
「では、蘭武の護衛をお願いします」
「──あ?!」
よりによって何故??と、いうような、嫌な表情をしていたが、紅砂は構わずお願いした。
コンラッドとの交渉も無事に終わり、紅砂が家路に戻ると、木陰に小さな影が隠れていた。
紅砂は立ち止まって声をかけた。
「──父さん。心配事かけて、申し訳ありません」
「ふん!別におまえのことを心配している訳じゃねーど。おでが心配してるのは蘭ちゃんだ。蘭ちゃんの中に白閻を宿らせて、おまえは何をするつもりだ?」
「何を?って、今更その質問ですか?僕は前々から計画を立ててましたよね?」
「ん?なんだそりゃ?」
すっ惚ける奏閻に紅砂は深いため息をついた。
「兄さんを高位結鬼に甦らせて、結鬼の歴史を変えましょうって、前々から言ってましたよね?」
「──ええ?!」と、初めて聞いたかのように奏閻が驚いている。
前々から奏閻には振っていた話なのだが、やはり聞いていなかったらしい。
奏閻に過去や未来はない。気の遠くなるような長い年月を憂いもなく、いつでもハイテンションでいられるのは、奏閻が今にしか生きていない証拠だ。
「だ、だからおまえは卯月のねーちゃんとやったんか?意図して結鬼の禁忌を犯したんか?」
「い、いや……あれは意図してませんでしたけど……僕もびっくりしました」
木陰から驚く奏閻の気配を感じた。
「──な、なんだって?!おまえが襲った訳ではないのか?合意なのか?!ともすると……確かに結鬼の歴史を揺るがす問題だ……。あの紅髪の高位結鬼もどういう訳かおまえに協力すると言っているし、確かに何かがおかしい……。これで白閻が甦ったら……?」
「益々、先が分からなくなりますでしょう?」
ううむ……と奏閻は唸った。流石の奏閻も同意してくれている。ここまできたらあともう一息かもしれない。
「父さんにお願いしたい事があります。それこそ今生最後のお願いになるかもしれません」
「お、おう!なんだ?」
「一先ず、霧島に移動してもらえますか?ジーナさんと蘭武、後、護衛役にコンラッド・ヴィルトールを連れて」
「──ええ!!お姉ちゃん達はいいが、あの高位結鬼は嫌だ!!無理無理無理無理!!」
高位結鬼アレルギーの奏閻は力の限り拒否した。やっぱり無理か、と紅砂も諦めかけたが、もしも蘭武が出産した場合、奏閻が間近にいた方がやはり安心だ。紅砂はなんとか奏閻にうんと言わせる方法を考えた。
「コンラッド・ヴィルトールって……、あのご面相でしょ。すっごい女性にモテるんですよね」
「けっ!!だろうな!!」
奏閻は吐き捨てた。他人がモテても実に面白くもなんともねえっと言っている。
「でね~、あの人、フランスでは種馬してたらしいよ。高位結鬼なのに人間と交配出来るから」
「──な、なんだって?!」
余りの驚きに木陰から奏閻が遂に姿を現した。
「ジーナさんが産んだ結鬼の父親は彼だよ」
「──はああ?!??!!」
もう顎が地面に着きそうなほど驚いている。
「でねー。彼は種馬なんかやっていたせいか、1日に最低10回は女性を抱いてないと落ち着かないらしくて……」
「……と、とんでもねえ、セックス依存性だな……」
「そう、それも一人では物足りない」
「つまりあらゆるところでお姉ちゃんを引っかけてはパコパコと……」
「そうなんですよ、しちゃってるんですよ」
「こりゃ覗いてやらんといかんな……」
「その辺の事は、僕はなんとも……」
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