71 / 85
70
しおりを挟む
蘭武は未だに頭の整理が上手くいかなかった。今後、危険な結鬼がやってくる可能性があるから霧島にある別荘に避難しろ、ということまでは分かる。だが、その道行きのメンバーが良く分からない。
先ずは突然紹介された、見た目3歳児にしか見えない紅砂の父親だ。
低位の結鬼は年を取るとまた凝固体期に戻り、また赤子となって成長すると聞いたが、この福福とした頬っぺの幼児が紅砂の父親と言われても釈然としない。
蘭武の手を引いて、「蘭たん、ジュース飲む?おで、ふぁんたオレンジがいい」なんて、ニコニコしながら話しかけられると、もう駄目だ。紅砂は子ども扱いをして、甘やかしてはいけない、と言ったが、どう見ても可愛い子供にしか見えない。
自動販売機でジュースを買ったあと、フェリーに乗り込み、海が一望できる甲板の席に座った。すると、尽かさず奏閻が甘えて膝の上に乗ってくる。しかもやたらと赤ん坊のように胸に顔を押し付けてきた。
(結鬼と言うのは、子供に戻ると赤ちゃん返りするのか?)
そんな事を考えていたら、鮮やかな紅髪を海風に靡かせながら、コンラッド・ヴィルトールがジーナを伴ってやって来た。
「お前……随分と公衆の面前で豪快にセクハラされまくってるな」
「セ、セクハラ?!」
コンラッドは蘭武の隣にどかっと腰を下ろした。陽の光の下、間近で見る青い瞳はぞくりとするほど美しかった。
「そいつ、見た目は子供でも中身はおっさんだぞ」
「そうだろうけど、この見た目でおっさんと言われてもなあ……」
「せいぜいエスカレートして、血を吸われないようにな」
蘭武は鼻で笑った。
「だとしてもお前に吸われるよりかはましだろ」
吐き捨てた途端にこちらを見つめる青く冷たい視線に蘭武の身は凍った。思えば海岸で初めてコンラッドと会った時、身体に落とした血糊をコンラッドは舐め取ったのだ。その時の肌を這う舌の柔らかな感触を思い出し、蘭武は慌てて目をそらした。舌は腹から順に上がって乳房まで吸われた。その感触まで思い出すと今度は羞恥で身を震わせた。
「そりゃ残念。中々美味い血だったけどな」
コンラッドが身を乗り出し、耳元で囁いた。彼の吐息を感じ反射的にそちらを向くと、深紅に染まった瞳と目が合って血の気が引く。
「おま……」
素早く飛び退こうとしたが、それよりも早く腕を掴まれて蘭武は逃げようがなかった。
コンラッドの唇が笑いの形に歪む。
「バーカ、冗談だよ。お前の血なんか二度と口にしたくもねえ。最悪な血だったさ」
そう言った時にはコンラッドの目は静かな青に戻っていた。
蘭武はほっと息ついた。だが、安心すると途端に腹が立ってきた。
「だったら、あんなにベロベロ舐めるな!!気色悪い!」
「気色悪いだあ?!」
流石にカチンときた様子のコンラッドが声を荒げた。
「だってそうじゃん!お前のしたことは最低だぞ!あれじゃあ、セクハラどころかレイプだ!レイプ!!このレイプ殺人魔!」
蘭武が罵るとコンラッドは片方の眉を上げてその言葉に反論した。
「つーか、お前だってある意味殺人を犯しただろ!俺の心臓、貫きやがって!」
「でも、死んでないじゃん!」
確かに死んでなければ殺人も糞もない。
「相手が人間だったら死んでるぞ」
「でも、人間じゃないから別にいいじゃん」
「だったらこっちだってレイプじゃねーじゃん。あれは捕食だ、捕食!」
「うわ!その考え方、完全に獣だな。俺の半径2m以内に近付くなよ」
蘭武は奏閻を抱っこしたまま座席をずらして、そっぽを向いた。
コンラッドが苛立たしげに舌打ちする。
「分かったよ。但し、危険な状態になっても俺は助けないからな」
「結構ですー。自分の身は自分で守りますー。だから、金輪際、俺らには近付かないで下さいー。声もかけないで下さいー」
と、言って蘭武はあっかんべーをした。
その顔を見てコンラッドはフン!と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
蘭武は勝った!と思った。
膝の上では奏閻がキラキラした瞳で蘭武を見上げていた。
「蘭ちゃん、なんて頼もしい……」
先ずは突然紹介された、見た目3歳児にしか見えない紅砂の父親だ。
低位の結鬼は年を取るとまた凝固体期に戻り、また赤子となって成長すると聞いたが、この福福とした頬っぺの幼児が紅砂の父親と言われても釈然としない。
蘭武の手を引いて、「蘭たん、ジュース飲む?おで、ふぁんたオレンジがいい」なんて、ニコニコしながら話しかけられると、もう駄目だ。紅砂は子ども扱いをして、甘やかしてはいけない、と言ったが、どう見ても可愛い子供にしか見えない。
自動販売機でジュースを買ったあと、フェリーに乗り込み、海が一望できる甲板の席に座った。すると、尽かさず奏閻が甘えて膝の上に乗ってくる。しかもやたらと赤ん坊のように胸に顔を押し付けてきた。
(結鬼と言うのは、子供に戻ると赤ちゃん返りするのか?)
そんな事を考えていたら、鮮やかな紅髪を海風に靡かせながら、コンラッド・ヴィルトールがジーナを伴ってやって来た。
「お前……随分と公衆の面前で豪快にセクハラされまくってるな」
「セ、セクハラ?!」
コンラッドは蘭武の隣にどかっと腰を下ろした。陽の光の下、間近で見る青い瞳はぞくりとするほど美しかった。
「そいつ、見た目は子供でも中身はおっさんだぞ」
「そうだろうけど、この見た目でおっさんと言われてもなあ……」
「せいぜいエスカレートして、血を吸われないようにな」
蘭武は鼻で笑った。
「だとしてもお前に吸われるよりかはましだろ」
吐き捨てた途端にこちらを見つめる青く冷たい視線に蘭武の身は凍った。思えば海岸で初めてコンラッドと会った時、身体に落とした血糊をコンラッドは舐め取ったのだ。その時の肌を這う舌の柔らかな感触を思い出し、蘭武は慌てて目をそらした。舌は腹から順に上がって乳房まで吸われた。その感触まで思い出すと今度は羞恥で身を震わせた。
「そりゃ残念。中々美味い血だったけどな」
コンラッドが身を乗り出し、耳元で囁いた。彼の吐息を感じ反射的にそちらを向くと、深紅に染まった瞳と目が合って血の気が引く。
「おま……」
素早く飛び退こうとしたが、それよりも早く腕を掴まれて蘭武は逃げようがなかった。
コンラッドの唇が笑いの形に歪む。
「バーカ、冗談だよ。お前の血なんか二度と口にしたくもねえ。最悪な血だったさ」
そう言った時にはコンラッドの目は静かな青に戻っていた。
蘭武はほっと息ついた。だが、安心すると途端に腹が立ってきた。
「だったら、あんなにベロベロ舐めるな!!気色悪い!」
「気色悪いだあ?!」
流石にカチンときた様子のコンラッドが声を荒げた。
「だってそうじゃん!お前のしたことは最低だぞ!あれじゃあ、セクハラどころかレイプだ!レイプ!!このレイプ殺人魔!」
蘭武が罵るとコンラッドは片方の眉を上げてその言葉に反論した。
「つーか、お前だってある意味殺人を犯しただろ!俺の心臓、貫きやがって!」
「でも、死んでないじゃん!」
確かに死んでなければ殺人も糞もない。
「相手が人間だったら死んでるぞ」
「でも、人間じゃないから別にいいじゃん」
「だったらこっちだってレイプじゃねーじゃん。あれは捕食だ、捕食!」
「うわ!その考え方、完全に獣だな。俺の半径2m以内に近付くなよ」
蘭武は奏閻を抱っこしたまま座席をずらして、そっぽを向いた。
コンラッドが苛立たしげに舌打ちする。
「分かったよ。但し、危険な状態になっても俺は助けないからな」
「結構ですー。自分の身は自分で守りますー。だから、金輪際、俺らには近付かないで下さいー。声もかけないで下さいー」
と、言って蘭武はあっかんべーをした。
その顔を見てコンラッドはフン!と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
蘭武は勝った!と思った。
膝の上では奏閻がキラキラした瞳で蘭武を見上げていた。
「蘭ちゃん、なんて頼もしい……」
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる