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蘭武やコンラッド達を本土に行かせてから2ヶ月が経った。
クリスマスを間近に控え、彼らはその準備を楽しみながらそれなりに過ごしているようだったが、蘭武の腹にいる白閻の成長が異様に早すぎて、蘭武の体にはかなりの負荷がかかっていると、奏閻から連絡がきた。
『白閻の野郎め……何を焦っているのやら』
「それで?蘭武の様子はどうなんだ?」
紅砂の心は揺れていた。──やはり、無理をさせ過ぎてしまったのか……?
蘭武にもしもの事があったら……?
『まあ、安心しろ。普通の女なら干からびて死んでてもおかしくないんだが、蘭ちゃんはやっぱり強い女よのぉ。飯を5倍は食って何とか凌いでいる。白閻のせいで、胃も下から押し上げられているというのに、それでもあれだけの飯を詰め込んで身体を維持するとは、かなり苦しい筈だが、見事やってのけているぞ!』
「そ、そうか……。良かった。
──父さん、くれぐれも蘭武の事をよろしくお願いします」
『おう、こっちのことは任せておけ!』
紅砂は携帯を切ると、遠くの海を見つめながら、不穏な動きを感じ取っていた。
これまでの紅砂ならば、この不穏な気を感じただけで、逃げ出していたはずなのだが、これからは、卯月のためにも戦いながら自分を成長させなければならない。
「おい!紅砂。裏山の準備は万端だけど、島民の安全は本当に大丈夫なのか?」
港の船着き場に佇んでいた紅砂に声をかけてきたのは四鵬だった。
「100%保証は出来ないけど、アドリエンなら僕が姿を見せれば、僕だけにターゲットを絞ってくるから心配はない。問題はアドリエン以外の奴がどう動くかにかかっているんだけど、恐らくは大丈夫さ。大概の高位結鬼は人間なんて相手にしないからね」
「何でそう思うんだ?」
「人間だって忙しなく鳴いている蝉を見て、いちいち殺そうなんて思わないでしょ?寧ろ一時の命しかない蝉を憐れんでいるくらいだ。そんな感じさ」
「人間なんて虫と一緒か?」
「そうさ。だから、彼らの周りをブンブン飛んで煩わしいと感じさせたら、ぶちゅ!と潰されるから、その辺のところを気を付けてね」
うえっ!と言って四鵬は顔を歪めた。
「つまり、あたし達が普通に暮らしている分には、特に何もしてこないって訳ね?」
面倒臭そうに歩く龍一の手を引っ張りながら瀬菜が訊いた。
「ええ。何も知らない素振りをしていれば大丈夫でしょう」
「じゃあ、奴らに攻撃を仕掛ける時は姿を見られないようにしてやった方がいいのね?」
「勿論です。仕掛けを作った場所以外での攻撃は絶対にしないで下さいよ」
「わ、分かったわ!」
「──で?奴らはそろそろ来そうなのか?」
訊いたのは龍一だ。
「そうですね。いよいよだと思います。なので、そろそろ持ち場に付いた方がいいかもしれません」
「分かった」
瀬菜、四鵬、龍一は互いに顔を見合わせて頷いた。
彼らの力を借りて何処まで高位結鬼に対抗出来るのか?
一抹の不安を抱えながら、紅砂は海の向こうを見つめた。
クリスマスを間近に控え、彼らはその準備を楽しみながらそれなりに過ごしているようだったが、蘭武の腹にいる白閻の成長が異様に早すぎて、蘭武の体にはかなりの負荷がかかっていると、奏閻から連絡がきた。
『白閻の野郎め……何を焦っているのやら』
「それで?蘭武の様子はどうなんだ?」
紅砂の心は揺れていた。──やはり、無理をさせ過ぎてしまったのか……?
蘭武にもしもの事があったら……?
『まあ、安心しろ。普通の女なら干からびて死んでてもおかしくないんだが、蘭ちゃんはやっぱり強い女よのぉ。飯を5倍は食って何とか凌いでいる。白閻のせいで、胃も下から押し上げられているというのに、それでもあれだけの飯を詰め込んで身体を維持するとは、かなり苦しい筈だが、見事やってのけているぞ!』
「そ、そうか……。良かった。
──父さん、くれぐれも蘭武の事をよろしくお願いします」
『おう、こっちのことは任せておけ!』
紅砂は携帯を切ると、遠くの海を見つめながら、不穏な動きを感じ取っていた。
これまでの紅砂ならば、この不穏な気を感じただけで、逃げ出していたはずなのだが、これからは、卯月のためにも戦いながら自分を成長させなければならない。
「おい!紅砂。裏山の準備は万端だけど、島民の安全は本当に大丈夫なのか?」
港の船着き場に佇んでいた紅砂に声をかけてきたのは四鵬だった。
「100%保証は出来ないけど、アドリエンなら僕が姿を見せれば、僕だけにターゲットを絞ってくるから心配はない。問題はアドリエン以外の奴がどう動くかにかかっているんだけど、恐らくは大丈夫さ。大概の高位結鬼は人間なんて相手にしないからね」
「何でそう思うんだ?」
「人間だって忙しなく鳴いている蝉を見て、いちいち殺そうなんて思わないでしょ?寧ろ一時の命しかない蝉を憐れんでいるくらいだ。そんな感じさ」
「人間なんて虫と一緒か?」
「そうさ。だから、彼らの周りをブンブン飛んで煩わしいと感じさせたら、ぶちゅ!と潰されるから、その辺のところを気を付けてね」
うえっ!と言って四鵬は顔を歪めた。
「つまり、あたし達が普通に暮らしている分には、特に何もしてこないって訳ね?」
面倒臭そうに歩く龍一の手を引っ張りながら瀬菜が訊いた。
「ええ。何も知らない素振りをしていれば大丈夫でしょう」
「じゃあ、奴らに攻撃を仕掛ける時は姿を見られないようにしてやった方がいいのね?」
「勿論です。仕掛けを作った場所以外での攻撃は絶対にしないで下さいよ」
「わ、分かったわ!」
「──で?奴らはそろそろ来そうなのか?」
訊いたのは龍一だ。
「そうですね。いよいよだと思います。なので、そろそろ持ち場に付いた方がいいかもしれません」
「分かった」
瀬菜、四鵬、龍一は互いに顔を見合わせて頷いた。
彼らの力を借りて何処まで高位結鬼に対抗出来るのか?
一抹の不安を抱えながら、紅砂は海の向こうを見つめた。
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