奇夜に結ぶ鬼

蓮華空

文字の大きさ
73 / 85

72

しおりを挟む
蘭武やコンラッド達を本土に行かせてから2ヶ月が経った。

 クリスマスを間近に控え、彼らはその準備を楽しみながらそれなりに過ごしているようだったが、蘭武の腹にいる白閻の成長が異様に早すぎて、蘭武の体にはかなりの負荷がかかっていると、奏閻から連絡がきた。

『白閻の野郎め……何を焦っているのやら』

「それで?蘭武の様子はどうなんだ?」

 紅砂の心は揺れていた。──やはり、無理をさせ過ぎてしまったのか……?
 蘭武にもしもの事があったら……?

『まあ、安心しろ。普通の女なら干からびて死んでてもおかしくないんだが、蘭ちゃんはやっぱり強い女よのぉ。飯を5倍は食って何とか凌いでいる。白閻のせいで、胃も下から押し上げられているというのに、それでもあれだけの飯を詰め込んで身体を維持するとは、かなり苦しい筈だが、見事やってのけているぞ!』

「そ、そうか……。良かった。
 ──父さん、くれぐれも蘭武の事をよろしくお願いします」

『おう、こっちのことは任せておけ!』

 紅砂は携帯を切ると、遠くの海を見つめながら、不穏な動きを感じ取っていた。

 これまでの紅砂ならば、この不穏な気を感じただけで、逃げ出していたはずなのだが、これからは、卯月のためにも戦いながら自分を成長させなければならない。

「おい!紅砂。裏山の準備は万端だけど、島民の安全は本当に大丈夫なのか?」

 港の船着き場に佇んでいた紅砂に声をかけてきたのは四鵬だった。

「100%保証は出来ないけど、アドリエンなら僕が姿を見せれば、僕だけにターゲットを絞ってくるから心配はない。問題はアドリエン以外の奴がどう動くかにかかっているんだけど、恐らくは大丈夫さ。大概の高位結鬼は人間なんて相手にしないからね」

「何でそう思うんだ?」

「人間だって忙しなく鳴いている蝉を見て、いちいち殺そうなんて思わないでしょ?寧ろ一時の命しかない蝉を憐れんでいるくらいだ。そんな感じさ」

「人間なんて虫と一緒か?」

「そうさ。だから、彼らの周りをブンブン飛んで煩わしいと感じさせたら、ぶちゅ!と潰されるから、その辺のところを気を付けてね」

 うえっ!と言って四鵬は顔を歪めた。

「つまり、あたし達が普通に暮らしている分には、特に何もしてこないって訳ね?」

 面倒臭そうに歩く龍一の手を引っ張りながら瀬菜が訊いた。

「ええ。何も知らない素振りをしていれば大丈夫でしょう」

「じゃあ、奴らに攻撃を仕掛ける時は姿を見られないようにしてやった方がいいのね?」

「勿論です。仕掛けを作った場所以外での攻撃は絶対にしないで下さいよ」

「わ、分かったわ!」

「──で?奴らはそろそろ来そうなのか?」

 訊いたのは龍一だ。

「そうですね。いよいよだと思います。なので、そろそろ持ち場に付いた方がいいかもしれません」

「分かった」

 瀬菜、四鵬、龍一は互いに顔を見合わせて頷いた。



 彼らの力を借りて何処まで高位結鬼に対抗出来るのか?

 一抹の不安を抱えながら、紅砂は海の向こうを見つめた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...