奇夜に結ぶ鬼

蓮華空

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 ついにアドリエンが膝を立て、身を起こした。

「つまり──、お前を吸収出来たら、もっと精がつくということだな」

 そう言ってアドリエンは凶悪な笑みを浮かべた。

「行け!」

 紅砂は背後で躊躇っている龍一に指示を出した。だが、足を負傷した龍一に、どこまで逃げられるか?

 紅砂の額に汗が滴る。

 紅砂自身も出来れば正面からは戦いたくはない。が、龍一を逃がすためには仕方がない。

 紅砂は懐の小刀を手にした。後払はスピードが勝負だった。紅砂は地を蹴り、アドリエン目掛けて刃を翻す。

 最初は腕を、そして、脚を──。アドリエンからの攻撃を避けるために、紅砂は先ず、四肢に攻撃を集中させた。その方が結鬼との戦いには効率がいいのだ。相手が再生する前に全てを裁つ。

 足を裁たれたアドリエンは歯を軋めながら憎悪の目で紅砂を睨む。

 そして、遂に木の根元へと倒れこんだアドリエンの額を紅砂は小刀で貫き、木の幹へと固定させた。

「おのれ!!」

 怒りに震えるアドリエンに対し、紅砂は澄ました顔で、ズタズタに引き裂かれたアドリエンの腕を取ると、根元から両方とももぎ取った。

「あなたがそこから身動き出来ないように、この腕は貰っていきますね。そして、僕の朝食用に頂くことにします。どうも有り難う」

 取った腕に紅砂は軽くキスをして微笑んだ。

「低位の癖に……高位である僕の一部を口にするというのか?……そんなことが許されるとでも……」

「いつの時代でも下克上ってあるんですよ。じゃあ、また」

 紅砂は踵を返した。

「おい!こら待て!」

 アドリエンが背後で騒いでいるが、紅砂はもう気にしないことにした。

 先ずは龍一の安全の確保をして、卯月の元へと走らねばならない。

 紅砂は本土に向かう海上をもうスピードで飛んだ。

 コンラッドが間に合っていてくれればいいけれど、間に合ったとして、コンラッドが元仲間から四鵬らを命懸けで守ってくれるとは限らない。

 紅砂の目からみても、コンラッドという男はいまいち自分の要求というのが定まらない。風のように、煙のように、その場の空気によって、あっちに流され、こっちに流され生きてきたように思う。

 そんな奴が元仲間であるキースと会うことで、また心変わりでもしたら?

 不安は焦躁となり、紅砂は先を急いだ。

 暫くすると前方にコンラッドの赤い髪が見えてきた。

 そして、その向かい側にはキースの姿があった。

 紅砂は周辺に四鵬と卯月が居ないか確かめた。

 暗い海上は、表面を月明かりで輝かせるばかりで四鵬と卯月の姿はない。二人はもっと先に行っているのかもしれない。取り敢えず、紅砂はほっと胸を撫で下ろした。

 四鵬と卯月がここに居ないのならば、二人を刺激しないように紅砂は先を急ぐことにした。だが、キースの双眸が赤光を放つと、紅砂の目前にもうスピードで現れた。

「何故、お前がここにいる?アドリエン様はどうした?」

 バラバラになったアドリエンを放置した口がよく言う。

「また解体して木に縫い付けておきました」

 すると、キースは腹を抱えて笑った。

「はははは、あのプライドの高いアドリエン様にそこまでの屈辱を与えるとは。なるほど、貴方が500年前からアドリエン様を苦しめてきた低位の結鬼」

「まあ、少なくともあなた方よりは歳を重ねてますのでねぇ。低位といえども、高位の扱いは慣れています」
    
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