奇夜に結ぶ鬼

蓮華空

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※※※※※


「大丈夫か、四鵬?代わろうか?」

 追われながら、卯月を抱えて海を飛んで来た四鵬の体力は限界に達していたようで、荒い息を吐きながら、足元をふらつかせていた。

「いや、大丈夫だ。卯月は俺が抱えて居るから……、紅砂は奴らが来た場合の事だけを考えていてくれ」

「わかった。だが、無理はするなよ。隠れ家まで、あと5kmはある。気を付けろ」

「ああ、分かってるよ!」

 四鵬は力を振り絞った。目の前の峠を越えれば、隠れ家である小屋があるはずだ。だが、そこまで行く道のりが険しく、人が通れるような道ではない。足元には折れた枝葉が散らばり、地面もぬかるんでいる。飛んで行けば一瞬かもしれないが、もしも、仮に近くまで奴らが来ていたとしたら、空中の方が見つかる確率が高い。よって、地道に地面を歩いているのだが、僅か5kmの距離とはいえ、かなりきつい道程だ。

 次第に四鵬の目が疲れで霞んできた頃、目の前の道が僅かだが開け、小ぢんまりとした小屋が見えてきた。そして、窓からこちらを見ていた人影が動き、小屋の木扉が開け放たれると、中から蘭武が飛び出してきた。

「兄さん!四鵬!それに、卯月も!!良かった、無事だったんだね!」

 駆け寄って来た蘭武に紅砂は「父さんは?」と聞いた。

「あ、奏閻なら奥でテレビ観てたけど……、あの赤い奴は?」

 蘭武が言っているのは、コンラッドの事だろう。

「古い同期と面会中。お陰で助かった。お前が彼を向かわせたんだって?」

「ああ、だってヤバイ奴が近付いているって言うからさ……。それなのに、あいつと来たらぼうっとして、なんもしないんだもん!腹立つから、俺が行く!!って言ったら、渋々動き出した。やる気ねぇよな、本当にアイツは!!直ぐに動けよ!!」

「動くには彼なりの動機が必要なんだよ」

 意味が分からないというように、肩を竦めた蘭武を尻目に、紅砂は小屋に四鵬を導き、卯月の容態を見るべく、奥の和室へと向かった。










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