奇夜に結ぶ鬼

蓮華空

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「うおう!!何だお前?!帰って来れたのか?」

 息子の顔を見るなり驚く奏閻に、紅砂は冷たい視線を浴びせながら無視して奥へと入った。

 蘭武が気を利かせて素早く奥の和室に布団を敷くと、四鵬はそこに卯月を横たわらせた。

「傷はどうだ?」

「傷自体はもう全く見当たらないけど、ショックが強すぎたんだと思う……心臓を鷲掴みにされたんだ……流石に、きつかったんじゃないかと……」

 紅砂が卯月の体をチェックしながら、頷く。

「確かに今はもう傷跡さえない。卯月の再生速度は子供の頃と比べて上がっているようだな。と、言うことは身体に置けるダメージはほぼ受けないとみていい。だが、精神面となると……こればっかりは予想がつかないな……」

「予想がつかないって、どういうこと?」

「防衛の為に記憶を全て失くすとか、狂うとか……。潜在的に数万年からの恐怖記憶やなんかもあるから、それを呼び起こさないように、意識自体をシャットダウンするとか……。以前の彼女も、そうして半ば狂っていたから……ひょっとしたら今回も……」

「そんな……。じゃあもう、卯月と話をする事も出来なくなると言うのか?」

「その可能性もあるだろう」

 沈痛な面持ちの紅砂を見て、四鵬は肩を落とした。

 自分がもっと早く、あの金髪に攻撃を加えていれば良かったのかもしれない……。そう思うと、悔しさで涙が溢れてくる。そんな四鵬の背後から、小さな手が肩に置かれる。

「もうここまで来たら、なんの意味もないだろう。おで達はおで達の日常に戻る事が最適だど思うぞ。と、言っても羅閻はもう無駄だけどな」

「父さん!!そんな言い方……」

「何だよ、本当の事だろう。羅閻を抜かして、ここに居る奴らは、首さえ突っ込まなかったら平穏無事に生きられるで、おではお前らの安全の為に言っている。本当に生き残りたければ、卯月と羅閻を捨てろ。おでならお前らを安全な場所に連れて行けるど」

 奏閻なりに四鵬や蘭武の事を気遣っての言葉だ。紅砂も頷き、「今のうちにお前達も考え直した方がいい。父さんについて何処かへ行ってくれると助かる」と言った。すると、蘭武が立ち上がる。

「やだ!俺は絶対に嫌だからね!何年一緒に暮らしてきたと思ってるんだよ!!俺達はみんな家族なんだから、家族を捨てるなんて出来るか!バカ!!命に代えたって俺は家族を守る!!」



「バカか、お前は?」

 次に声をかけてきたのは、予想もしない相手だった。和室の襖を開け、びしょ濡れで入って来たのはコンラッドだ。彼は呆れた顔で、蘭武の前に立った。

「あのなー。お前は相手をよく見て考えろ。少なくとも俺の息の根を止められる位になってから言え。はっきり言って、お前らがどんなに頑張っても無理!無駄死にするだけだ。だから、とっとと奏閻と何処かへ行け!」

 コンラッドも奏閻と行く事を推奨した。だが、蘭武はあっさりと「嫌だ!」と言い、「お前が居るじゃん!!」とさえ言った。指を指されたコンラッドは「俺が居るからって何だよ?」と聞き返し、「お前も家族じゃん!だから、助けてくれたんだろ?」と言われて、目を丸くした。







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