どこまでも近くて遠い君

蓮華空

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摩矢episode3

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 隣でしくしくと泣く三隅を見ていると、桜木に対する依存度が高い分、俺より三隅の方が辛いような気がしてきた。

(気の毒に……)

 俺は同情の視線を三隅に送った。

「……僕……僕……、すごく寂しい……。桜木君に……彼女が出来ちゃったら……、桜木君は……もう……僕を膝の上に乗せてくれなくなるのかなあ?……頭も撫でてくれなくなるのかなあ?……可愛いなあと言って、頬っぺにちゅーもしてくれなくなるのかなあ?
 それどころか、僕はまた学校で孤立しちゃうのかなあ……。そう思うと、…………学校に来るのが怖くて……」



 …………………………んっ?



 ──こいつ、今……なんて言った?



 なんか、すげーこと言わなかったか?

 頬っぺにがなんだとか?

 頬っぺにって、確かに言ったよな?!!

 頬っぺにって?!

 ちょっと待て!! 三隅は何度も桜木にちゅーして貰ってるのか?!

 可愛いいって、そんなにも特な事なのかっ?!!


 俺は持っていた携帯を危うく妬みの怨念魂でへし折りそうになった。しかし、ここは辛うじて我慢した。まだ桜木からの連絡が来てないのに、ここで携帯を失うわけにはいかない!だが、その場で地団駄を踏みたいほどの悔しさがジリジリと腹の底から込み上げてきて、辛抱するのが辛い。何せ俺は、今まで自分は男だから仕方がない、とずっと諦めてきたのだ。それなのに、同じ男が桜木からそんな羨ましいスキンシップをされていたのかと思うと、桜木に彼女が出来た以上に悔しかった。

(三隅の野郎ぅ……同じ穴の狢だと思ったのに、俺よりよっぽど幸せじゃねえか!!膝の上に乗せられたり、頬っぺにちゅーされたり!俺はどれも一度だってされた事がねぇ!)

 俺は内心、羨ましさで涙が著著切れそうになった。めちゃくちゃ腹立つが、人間つーのはこうして不平等に出来ているもんだ。俺にはこいつのような可愛さなど、赤ん坊の時ですら敵わないのだから仕方がない。

「全く……贅沢な悩みだよな……」

 俺は苛立たしさを隠さずに言った。

「そ、そうかな?」
「だってそうだろう。男が男に惚れて、惚れた相手からそこまでのスキンシップをして貰える確立ってどれぐらいだと思う?かなり低いと思うぜ。だから、自分は幸運なんだと思っとけよ」

 俺からしたら桜木にキスなんかされたらそれだけで一生幸せに生きられるレベルだ。

 だが、俺にはそんな機会は一生与えられない。

 桜木からしたら俺の存在なんて、どうでもいいはずだ……。

 その証拠に、さっき送ったメッセージには既読が付いたきりで、未だに何の音沙汰もない。所詮、あいつからしたら俺の存在なんてミジンコのようなもんなんだ。博愛精神たっぷりな桜木だから、今まで何とかミジンコの相手もしてくれていたけど、それでもやっぱりミジンコにキスなんか普通しないし、出来ないし、それどころかいつ見限られても不思議じゃないし、これまで何とか関係を保ってきたこと自体、本当は俺にとって奇跡的な事なんだ。そう思うと次第に自分が惨めになってきた。

 俺はため息をついて、隣に腰かけている三隅のふっくらとした頬に視線を移した。
 うる艶卵肌とぷりぷりとしたピンクの唇がなんとも悩ましい。
 これなら確かに男でもキスしてしまうかもしれない……。






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