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摩矢episode4
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「待ってよ!何で秋ちゃんはそういう大事な事をあっさり決めちゃうの?それ、誰かに相談した?」
「いや……。するわけないだろ。きっと反対される。だから、この話をしたのもお前が初めてだ」
「ちょっと待って!何で急に辞めるなんて思ったの?」
桜木は半分怒ったような顔をした。
「悪りぃな……桜木。急にじゃねぇんだよ……。ずっと昔から、学校も……家も……俺の居る場所じゃない気がして仕方がないんだ。だから、働きながら独り暮らしして、それから高校認定試験でも取って、何か探す」
「ちょっと待って!何でわざわざそんな遠回りな事をする訳?あと1年くらいしたら高校卒業なんだし!それから独り暮らしすればいいじゃん!今辞めるのなんか、馬鹿のすることだよ!!」
必死の桜木に俺は思わず微笑んだ。
「ありがとうな、桜木。けど、俺はその大馬鹿野郎になってみたいんだ。他人が馬鹿だと思う人生を送ってみたい」
「はあ?!」
桜木が呆れるのも当然だ。だけど、俺の心は妙に清々しく、その道を進む事に不思議と迷いはなかった。むしろ、そう決めた途端、胸の内はすっきりと晴れていた。
──桜木とまた綺麗な月を見たからだろうか?
「桜木、もうちょっと後ろに下がれ」
「?」
頭に?マークを付けたまま桜木が一歩下がると、俺は一階の屋根から飛び降り、桜木の前に立った。
蒼い月明かりに照らされた、静かで優しげな黒瞳が俺を見ている。この綺麗な瞳が永遠に俺だけを視ていればいいのに……。
そんな叶わぬ夢を思い描きながら、俺はそっと桜木の首に腕を回し、ぎゅっと抱き締めた。
桜木の髪からは仄かなシトラスと甘いウッド系の香りがした。──癒しのアロマの香り。俺は今までどれだけこいつに癒され、救われて来たか……。大好きな、大好きな香り。
この香りに包まれた瞬間、俺の想いは更に溢れ、桜木の艶やかなアッシュブラウンの髪をきつく抱き締めていた。
「あ、あ、……秋ちゃん?」
珍しく桜木が戸惑っている。そりゃそうだ。後にも先にも俺がこんなことをするのは今日だけだ。
「お前にはいつも世話ばかりかけてすまなかったな。でも、もうそんな面倒臭い事をしなくていいからな。──じゃあな桜木。お前は誰よりも幸せになれよ」
そう言って俺は身を離し、さっさと部屋に戻ろうとした。だが、直ぐに腕を掴まれ、引き戻される。
「ちょ、ちょい待ち!!──じゃあな、って……何、それ!?じゃあなって!!何で今生の別れみたいな挨拶してるのっ?!」
桜木が半分戸惑い、半分慌てた様子で噛みついてくる。
「みたいな、じゃなくて、今生のお別れだからさ」
それを聞いて桜木は深い溜め息を付いた。
「あのさー。学校を辞めるのも、独り暮らしするのも、もうこの際どうでもいいよ!ちゃんと認める!!でも、だからって俺と二度と会えないってのはおかしいだろ?!たまには連絡したり、会ったりとかしようよ!それじゃあ、ダメなの?急にぷっつり俺らの関係って切らなきゃダメ?!」
「うん」
と、即答したら桜木は仰天して、直ぐさま、俺に頭突きをかましてきた。
「──痛って!!」
「何で秋ちゃんはそうやって極端なの!!人の気持ちを何だと思ってる訳?!俺は4つの頃からずっと秋ちゃんの事を親友だと思っていたんだよ!!それなのに、進路が違うだけで、俺たちの関係ってそこで終わりなの?!俺は嫌だよ!!俺はずっと秋ちゃんと親友でいたい!!秋ちゃんはそうじゃないの?俺が側に居るのはそんなにダメ?それとも、俺、秋ちゃんに何かした?そうやって……、秋ちゃんまで……何だか分からないまま俺の元を去らないでよ!!」
思ってもみなかった桜木の悲痛な叫びに、俺は戸惑った。桜木の交遊関係は広い。だが、いつも来る者は拒まず、去る者は追わずだ。割りかし友人としての関係なら、あっさりしていると思っていたが……。それが俺に対してこんな執着を見せるなんて……。それとも、俺が知らなかっただけで、実は誰の時でもこうだったのか?
「俺はやっぱり絶対に反対だからね!秋ちゃんが学校辞めて、俺の元を去るなんて!!俺を納得させる話をちゃんとしてくれなきゃ俺は絶対に許さないよ!!」
いつになく強硬な態度の桜木に俺は面を食らった。俺は一体、今までこいつの何を見ていたのだろう?
俺の知らない桜木がそこにいた。
「秋ちゃんの事だから今さら学校生活が合わないとか、嫌だからとかそんな理由じゃないと思うんだよね!もっと違う理由があるでしょ!それをちゃんと話してくれるまでは俺は絶対に秋ちゃんから離れないからね!」
「いや……。するわけないだろ。きっと反対される。だから、この話をしたのもお前が初めてだ」
「ちょっと待って!何で急に辞めるなんて思ったの?」
桜木は半分怒ったような顔をした。
「悪りぃな……桜木。急にじゃねぇんだよ……。ずっと昔から、学校も……家も……俺の居る場所じゃない気がして仕方がないんだ。だから、働きながら独り暮らしして、それから高校認定試験でも取って、何か探す」
「ちょっと待って!何でわざわざそんな遠回りな事をする訳?あと1年くらいしたら高校卒業なんだし!それから独り暮らしすればいいじゃん!今辞めるのなんか、馬鹿のすることだよ!!」
必死の桜木に俺は思わず微笑んだ。
「ありがとうな、桜木。けど、俺はその大馬鹿野郎になってみたいんだ。他人が馬鹿だと思う人生を送ってみたい」
「はあ?!」
桜木が呆れるのも当然だ。だけど、俺の心は妙に清々しく、その道を進む事に不思議と迷いはなかった。むしろ、そう決めた途端、胸の内はすっきりと晴れていた。
──桜木とまた綺麗な月を見たからだろうか?
「桜木、もうちょっと後ろに下がれ」
「?」
頭に?マークを付けたまま桜木が一歩下がると、俺は一階の屋根から飛び降り、桜木の前に立った。
蒼い月明かりに照らされた、静かで優しげな黒瞳が俺を見ている。この綺麗な瞳が永遠に俺だけを視ていればいいのに……。
そんな叶わぬ夢を思い描きながら、俺はそっと桜木の首に腕を回し、ぎゅっと抱き締めた。
桜木の髪からは仄かなシトラスと甘いウッド系の香りがした。──癒しのアロマの香り。俺は今までどれだけこいつに癒され、救われて来たか……。大好きな、大好きな香り。
この香りに包まれた瞬間、俺の想いは更に溢れ、桜木の艶やかなアッシュブラウンの髪をきつく抱き締めていた。
「あ、あ、……秋ちゃん?」
珍しく桜木が戸惑っている。そりゃそうだ。後にも先にも俺がこんなことをするのは今日だけだ。
「お前にはいつも世話ばかりかけてすまなかったな。でも、もうそんな面倒臭い事をしなくていいからな。──じゃあな桜木。お前は誰よりも幸せになれよ」
そう言って俺は身を離し、さっさと部屋に戻ろうとした。だが、直ぐに腕を掴まれ、引き戻される。
「ちょ、ちょい待ち!!──じゃあな、って……何、それ!?じゃあなって!!何で今生の別れみたいな挨拶してるのっ?!」
桜木が半分戸惑い、半分慌てた様子で噛みついてくる。
「みたいな、じゃなくて、今生のお別れだからさ」
それを聞いて桜木は深い溜め息を付いた。
「あのさー。学校を辞めるのも、独り暮らしするのも、もうこの際どうでもいいよ!ちゃんと認める!!でも、だからって俺と二度と会えないってのはおかしいだろ?!たまには連絡したり、会ったりとかしようよ!それじゃあ、ダメなの?急にぷっつり俺らの関係って切らなきゃダメ?!」
「うん」
と、即答したら桜木は仰天して、直ぐさま、俺に頭突きをかましてきた。
「──痛って!!」
「何で秋ちゃんはそうやって極端なの!!人の気持ちを何だと思ってる訳?!俺は4つの頃からずっと秋ちゃんの事を親友だと思っていたんだよ!!それなのに、進路が違うだけで、俺たちの関係ってそこで終わりなの?!俺は嫌だよ!!俺はずっと秋ちゃんと親友でいたい!!秋ちゃんはそうじゃないの?俺が側に居るのはそんなにダメ?それとも、俺、秋ちゃんに何かした?そうやって……、秋ちゃんまで……何だか分からないまま俺の元を去らないでよ!!」
思ってもみなかった桜木の悲痛な叫びに、俺は戸惑った。桜木の交遊関係は広い。だが、いつも来る者は拒まず、去る者は追わずだ。割りかし友人としての関係なら、あっさりしていると思っていたが……。それが俺に対してこんな執着を見せるなんて……。それとも、俺が知らなかっただけで、実は誰の時でもこうだったのか?
「俺はやっぱり絶対に反対だからね!秋ちゃんが学校辞めて、俺の元を去るなんて!!俺を納得させる話をちゃんとしてくれなきゃ俺は絶対に許さないよ!!」
いつになく強硬な態度の桜木に俺は面を食らった。俺は一体、今までこいつの何を見ていたのだろう?
俺の知らない桜木がそこにいた。
「秋ちゃんの事だから今さら学校生活が合わないとか、嫌だからとかそんな理由じゃないと思うんだよね!もっと違う理由があるでしょ!それをちゃんと話してくれるまでは俺は絶対に秋ちゃんから離れないからね!」
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