どこまでも近くて遠い君

蓮華空

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摩矢episode 5

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 昼食が済んで、松田がちょっくら外の様子を見に行っている間、俺はテーブルに頭を突っ伏し悶々としていた。

 どうしよう……。桜木と風呂に入るのなんて10年ぶりだ。

 思えば俺が桜木を意識するようになったのは、5才の頃。桜木が家に泊まりに来た際、一緒に入った風呂が原因だった。

 当時の桜木はハーフだったこともあって、目がくりっとした色白で、髪も男にしては若干長かったせいか、女の子と見紛うほどの可愛らしい容姿をしていた。

 そんな奴が無邪気に素っ裸で絡み付くもんだから、その度に俺の下腹部はムズムズし、股間を膨らませていた。

 その頃は俺も桜木もどうしてそうなるのか分かっていなかったから、俺が勃つと、桜木も自分のモノをいじくりまわして「いっしょ、いっしょー!」と言っては、俺のモノに擦り付けてきた。

 そんな無邪気な行動から始まった行為だったが、肌と肌が触れ合う感覚が思いのほか気持ち良くて、まだ射精のなんたるかを知らない俺達だったが、何度も互いのモノを擦り合わせては、絶頂を体験していた。

 事が済むと、桜木は毎回、瞳を潤ませながら、「今の……気持ち良かったね」と、おっさんを惑わすロリータ映画の美少女ばりの蠱惑的な視線で俺の心をざわつかせた。

 以来、桜木と風呂に入る度に俺の股間は反応し、成長と共に、その意味が分かってくると、俺は桜木と一緒に入るのを拒否するようになった。

 今では桜木の身体も男らしい体躯になり、美少女と見紛うことはないが、珠のようなキメの細かい白い肌は相変わらずで、きっと今もしっとりとした心地の良い感触なんだろうと想像してしまうだけで、俺の心は風呂どころではなくなった。

 俺は裸になった桜木を前にして、勃起せずにすむのだろうか?

 いや、99.99999999999%無理なような気がする。

 
 刻一刻と迫る風呂の時間に、俺は悶々と悩み抜いていた。

 どうする?どうるする?

 このまま松田の言うように、桜木と風呂に入ってもいいのだろうか?

 俺は裸の桜木を前にして、邪な感情を起こさずにすむのだろうか?

 股間は反応せずに済むだろうか?

 ああ……何とかこの状況から逃れる術はないのか?

 こうして俺が悶々と悩んでいるうちに、いつの間にか日が暮れていたようで、不意に勢いよく部屋の引戸が開かれた。

「秋ちゃーん!お風呂行くよ!!」


 って──、もうそんな時間かよー!!

「秋ちゃんとお風呂に入るのなんか久しぶりにりだねー。しかも家族風呂を使わせてくれるんだって。秋ちゃん、ガヤガヤした大浴場は苦手だから良かったよねー」

 いや、良くねぇーよ!全くよくねぇーよ!かえってよくねぇーよ!

「や、やっぱり俺……今日は熱っぽいから止めとくよ」

「え?!そうなの?」

 俺の鞄からタオルや着替えを取り出した桜木は踵を返すなり俺の額に触れた。

「いや……、熱は無いみたいだよ。だから、大丈夫だよ。折角、二人だけで入れるんだしさー、ここの家族風呂って結構、豪華なんだって!それに打ち身とかに良く効く温泉なんだってさ!こりゃ入るっきゃないでしょー!!」

 やる気満々の桜木に、やっぱり入れません、とはもう言えず、俺は桜木に支えてもらいながら風呂に向かうことになった。

 俺を支えながホテルの廊下を歩く桜木は鼻歌混じりで大層上機嫌だ。

「お前……随分とご機嫌じゃないか?風呂に入って飯食った後は彼女と乳くりり合う約束でもしたのか?」

「そんなことしないよ。彼女には秋ちゃんの付き添いで俺は忙しいって言ってあるもん」

「おいおい、それって彼女からしたら最悪じゃねぇか!つーか、お前にとっても悲惨な展開だろ!何でそんな上機嫌なんだ?!」

 驚いた俺に桜木は不思議そうな顔して、唇を尖らせた。

「だって、これで秋ちゃんとゆっくり話し合いが出来るじゃん!俺は元々それが目的で秋ちゃんを修学旅行に連れてきたんだから、かえって二人だけの時間を貰えるのは嬉しい限りだ」

 マジかよ!!こいつはまだ俺を辞めさせまいと考えているのか?

「ほら、ここだよ」

 桜木に促されるまま家族風呂の暖簾を抜け、脱衣所に入った。

「ちょっと先にどんな風呂か見てこようか?」

 そう言って脱衣所に俺を残したまま、浴室のドアを開けた。

「わ!円形で丁度いい大きさだね。温度も38度。温泉にしては低めだ!これならゆっくり入れるね」

 桜木は満面の笑顔だ。

「さ、早く服を脱ごうか。俺、手伝うね」

 触れようとする桜木の手を、俺は左手で突き返した。

「いや、いい!自分で出来る!!」

「でも、ほら、あんまり肩を動かしちゃいけないんだし、足も痛めてるんだから俺に任せてよ」

「いや、大したことないから大丈夫だよ!」

「ダメダメ!変な風に動かして治りが遅くなったら大変でしょう。刺繍出来なくなっちゃうよ」

「う……」

 それを言われると俺は弱い。

 刺繍は俺の煩悩を払う唯一の手段なのだ。

 桜木が俺のジャージに手を掛け、するすると脱がしていく。続いてTシャツに手をかけ、またしても俺は桜木の手を止めた。

「秋ちゃん……?」

「やっぱ……いい、自分で何とかする」




 
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