どこまでも近くて遠い君

蓮華空

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摩矢episode 5

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「でも……」

「だから、お前は何もしなくていい!……頼む……」

 間近で感じる桜木の吐息だけで、早くも下半身が反応し、俺はまともに顔をあげられない。

「そもそもこんな怪我してバカやったのは俺なんだし……、お前に面倒な真似はさせたくないんだ」

 下半身の膨らみに気付かれぬよう、体をずらしながら、ロッカーに凭れて下を向いた。すると、上から突然ふわりと抱き寄せられる。

「秋ちゃんはバカじゃないでしょ。今日の秋ちゃん……すごく格好良かったよ。危機一髪でみーちゃんを助けたんだから……。そんな事、誰ができる?だから、秋ちゃんは誰よりも格好いいよ。前にも言ったけど、秋ちゃんは俺のヒーローなんだよ」

 俺より頭一つでかい桜木が、俺の高さまで身を屈めて優しく抱き締める。ふわりと桜木から香る優しいラベンダー系の香りに思わず意識が遠退く。すると、手がそっと俺の頭を撫で付け、頭にキスを落とした。なんでそんなことをしてくれるのか分からないが、俺はその心地よさに泣き出したい気分になった。

「……でも……」

 今のキスだけで俺にとっては最高のご褒美だった。

「いいから、秋ちゃんは俺に身を任せて、大事をとろうよ。ね」

 身を離し、正面から俺を見つめる瞳が余りにも綺麗で俺は陶然となった。

 その隙にするするとTシャツをたくしあげられ、先ずは左腕を抜かれる。その後、ゆっくりと首を抜かれ、Tシャツは足下に落ちた。

 次に桜木は俺の前に跪き、今度は下半身に手を掛ける。

「あ、そこは!!」

 さっきの抱擁で、俺の股間はしっかり反応してしまっていた。

「あ、そっか!秋ちゃん、さっきからこれを気にかけてたんだ?」

 桜木に気付かれた。

 遂にバレてしまった。それだけでもめちゃくちゃ恥ずかしいことなのに、桜木は服の上から俺の硬くなったものに触れた。

「バカ!触るなよ!!」

 そう言って桜木の手を払い除けると、桜木は艶やかに微笑んだ。

「そう言えば秋ちゃん、子供の頃から俺とお風呂に入るといつも勃たせてたね。だから、今さら恥ずかしがることないじゃん」

「アホ!!あの頃のポークヴィッツとは訳が違うんだぞ!!」

 俺が噛みつく勢いでそう言うと、桜木は仰け反って笑った。

「じゃあさ、俺も全部脱いで勃たせるからちょっと待ってて」

 ──は?!なんでそうなる?

「馬鹿野郎!!なんでお前まで勃起する必要があるんだ?!」

「だってその方がお互い様で恥ずかしくないでしょう?」

「はあ?!意味が分からん!!」

 俺の突っ込みを無視して桜木は立ち上がり、パパッと服を脱ぎ捨てた。

 そして、ギリシャ彫刻のような見事な裸体を俺の前に出現させた。

 ──うっわ!マジかよ?!こいつ一気に脱ぎやがった!!

 桜木の素肌が一瞬だけ視界に入り、慌てて目をそらした。だが、目の中に茫と輝く白い肌の残像がちらついている。おまけに下腹部よりもっと下の  がぶら下がっている位置までうっかり視点を移してしまい、ぼんやりと脳内で再現されてきたのを慌てて強制終了させた。

 ──ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!!ヤバイものを見ちまった!

 俺は桜木に背を向け、ロッカーに張り付く。かくなる上は、ずっとこのままロッカーに張り付いて過ごすしかない!ロッカーよ!頼むから俺の頭を冷やし、股間のモノを鎮めたまえ!

 神にすがり付くように、俺はロッカーにすがり付き願いを籠めたが、やはりそこはロッカー。無機質で中身が伽藍堂なロッカーにそんな願いをしたって、どうにかなるもんじゃない。俺のこのイカれた頭を何とかしないとこには──!!

 焦る俺に対して桜木はどこ吹く風。

「あれー?秋ちゃん、なんで後ろ向いちゃうの?」

 と、のんびり声で暢気なことを言った。

「恥ずかしいからに決まってるだろう!」

 お前には羞恥心ってものが無いのか?!と、怒鳴りたかったが、普段の奴の行動を思い出す限り、うん、無さそうだよな……、という結論に至った。

 桜木は尚も暢気に、そうなんだ、とぼやけた声で言い、おもむろに俺の腰に触れると、

「じゃあ、このまんま脱がした方がいいね」

 と、言って俺のジャージのズボンをパンツごと一気に下げた。

 ──ぎゃああああああ!!何てことしやがる!!

 俺の勃ち上がったモノは勢い良く宙を仰ぎ、急いでそれを隠そうと左手で押さえる。すると、背後で桜木が感嘆の声を上げた。

「おお!秋ちゃんって、すごい美尻だぁ!!」

 ──し、尻だとっ?!

 前にばっか意識が集中していた俺は、尻のことなど全く範疇になかった。

「わあ!すごーい!ぷりっと上に上がってて、きゅっと締まった小尻だぁ!!なんか……すごくエッチだね。可愛いv」

 俺はバタン!と大きな音を立てて、今度は正面を向いた。

「な、な、な……何を言ってるんだ……てめぇ……」

 か、可愛いだと?!俺のそんなところが可愛いだと?!尻を誉めれてもちっとも嬉しくないわ!ボケ!!

 俺の顔はすっかり紅潮し、この場から逃げ出したい一心だったが、負傷した身体では逃げることも出来ない。

 仕方なくロッカーにベッタリと背を付け、前を隠しながらジリジリと桜木から離れたが、同時に桜木もゆっくりと近付いてきてしまうので距離的にはちっとも変わらない。

「どうする?秋ちゃん……」

 妙に真顔で問いかけられ、何だか分からない緊張で汗が出てくる。

「どうするって……何が?」

 問うと俺の首筋付近に桜木の手が伸びた。俺は壁ドンされた状態で、もう逃げられない。




 

 

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