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桜木episode 1
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全クラスが揃ったビュッフェ式の食堂は広く、高校の修学旅行にしては、イタリアンから和食まで、豪華なメニューが取り揃えられていた。
俺は自分のクラスがどこか、辺りを見回しながら、取り敢えず、自分の食事を盛ろうと、先ずは和食ブースへと足を踏み出した。
「あ、桜木!!戻ったんだ?」
不意に後ろから話しかけられ、俺は振り返る。
中肉中背のごく一般的な体格の癖に、物凄い量のパスタや揚げ物を皿に乗せた塚ちんが「や!」と言って微笑んだ。
「あれ?塚ちんも今から?」
「いや、俺のこれはお代わり」
ぶっ!と思わず吹き出してしまう。
「おかわりぃ?!」
どう見てもお代わりとは思えない。賽の河原でがっつり積み上げられた石のような唐揚げの山と、もはや遠目で見たら体育館掃除用の巨大なモップを手にしているようにしか見えない大量のパスタを持って、塚原はニコニコしている。
「さ、流石はフードファイター塚ちん。今日はバイキング形式で良かったね」
「うん。旅行でお腹いっぱい食べられるのなんて最高だよ!」
塚原は最高でも、ホテル側はきっと大打撃に違いない。
「それより、桜木遅かったなあ。摩矢くんと風呂に入るなんて大変な任務、大丈夫だったの?」
「あ、ああ、別に大丈夫だよ」
俺は思わず言い淀んだ。急に頭の中で、泣きながら真っ赤になってトロ顔をする、可愛い秋ちゃんが浮かんでしまったからだ。
あんなの見たら、全然、大丈夫じゃない。かといってそんなこと、誰かに言えるわけがない。
「そっか、桜木はすごいなあ。あの摩矢くんと二人っきりでお風呂なんて、俺、緊張して絶対無理だよ。もしも、摩矢くんの背中にもんもんあったら、俺、気絶しちゃうよ~。そういうのなかった?」
「無いよ。塚ちん、摩矢のこと、なんだと思ってるの?」
「え?噂ではどっかの組の若頭だとかって聞いたけど、違うの?」
「違うよ。摩矢のお父さんは会社員で3人の妹と母親の5人家族で、ごくごく一般的な家庭だよ」
「えー!似合わない!!あの迫力で一般家庭なの?!」
「そうだよ」
俺は答えながら、皿を取り、ビュッフェの品を適当に盛り始めた。
「マジかよ?!どんな育ちをしたら、一般家庭からあんな只者じゃないオーラの子供が生まれるんだ?」
塚ちんは秋ちゃんのことで驚いていたが、俺としては、すでに大量となった皿の上に、まだ天ぷらやら卵焼きやらを積み上げていく塚ちんの方に驚かされる。
「育ちとかは関係ないよ。実は俺、保育園の頃から摩矢を知ってるけど、ずっとあんなんだよ。だから、摩矢はあれが自然体」
「うへえ!」
と驚く塚原の声を聴きながら、俺は保育園時代からの秋ちゃんを思い出していた。
目が隠れるほど前髪を伸ばした仏頂面の小さい秋ちゃん。
思えばあの頃から、秋ちゃんは俺が触ると少し頬を赤らめてた気がする。
……あれ?
でも、お互いのちんこ擦り合わせた頃からそれがひどくなったか?
……あれ?あれ?どうだったっけかな?
「あのさあ、塚ちん。突然すごく変な事を聞くけど、男同士でちんちん握りっこしたことある?」
食事を持って、席に着くなり、俺がそんな質問をするもんだから、塚ちんは椅子ごとひっくり返った。でも、食い物はしっかりテーブルに置いてからひっくり返る所が、流石、食い物を愛するフードファイターだ。
「な、な、何でそんな事、急に聞くの?!」
「あー、なんとなく。小さい頃、そういうことよくやったなあと思って」
「ふぇ~、小さい頃ね~。俺はてっきり風呂場で摩矢くんに強要されたのかと思っちゃった!……『おい、俺の右手は使えねぇんだ!おめぇが俺のしゃぶれ!!』なんて、ギラつく目で言われたら、俺、どうしよう!怖くて摩矢くんのしゃぶっちゃうかもしれない!!」
キャー!と言って塚ちんは乙女のように自分の顔を覆った。
「ば、バカ!!なんつー想像してんだよ!!」
塚ちんが妙な事を言うもんだから、俺の脳内でもそんな秋ちゃんが再生されて、背筋がゾクゾクする。
しかも、秋ちゃんにそんな事を言われて、まんざらじゃない自分に驚いた。
「だってさー。話の流れからして、何となく想像しちゃうじゃん」
「え!!どこが?」
「摩矢くんと二人っきりで風呂に入ってきて、ちんちん握りっことか言うんだもん!摩矢くんに強要されて、してきたのかと思った」
「ま、摩矢はそんな奴じゃないって!!」
むしろそれは俺の方……。
秋ちゃんの泣き顔と強制猥褻罪の五文字がぐるぐると頭の中を回る。
「そう?じゃあ摩矢くんとは全く関連のない話なんだね?」
「ああ。でも……」
「──でも?」
塚ちんが椅子を元に戻し、座るなり身を乗り出す。
「いや、何でもない。それより、互いのにぎにぎしたことある?」
「うへえ!またその質問に戻るの?!ない、ない!!一切ない!俺のちんこは純潔よ!小さい頃、母親に触られる以外は全く経験のない!悲しいくらいのピュアピュアちんこさ!」
「あー、そうなんだー」
俺は少しがっかりした。
「ちょい待ち、夕緋くん。何でそんな残念そうなの?」
「だって、それじゃあ参考にならないからさぁ」
「全然、話が見えないんだけど、何でそんなこと気になるの?」
俺は自分のクラスがどこか、辺りを見回しながら、取り敢えず、自分の食事を盛ろうと、先ずは和食ブースへと足を踏み出した。
「あ、桜木!!戻ったんだ?」
不意に後ろから話しかけられ、俺は振り返る。
中肉中背のごく一般的な体格の癖に、物凄い量のパスタや揚げ物を皿に乗せた塚ちんが「や!」と言って微笑んだ。
「あれ?塚ちんも今から?」
「いや、俺のこれはお代わり」
ぶっ!と思わず吹き出してしまう。
「おかわりぃ?!」
どう見てもお代わりとは思えない。賽の河原でがっつり積み上げられた石のような唐揚げの山と、もはや遠目で見たら体育館掃除用の巨大なモップを手にしているようにしか見えない大量のパスタを持って、塚原はニコニコしている。
「さ、流石はフードファイター塚ちん。今日はバイキング形式で良かったね」
「うん。旅行でお腹いっぱい食べられるのなんて最高だよ!」
塚原は最高でも、ホテル側はきっと大打撃に違いない。
「それより、桜木遅かったなあ。摩矢くんと風呂に入るなんて大変な任務、大丈夫だったの?」
「あ、ああ、別に大丈夫だよ」
俺は思わず言い淀んだ。急に頭の中で、泣きながら真っ赤になってトロ顔をする、可愛い秋ちゃんが浮かんでしまったからだ。
あんなの見たら、全然、大丈夫じゃない。かといってそんなこと、誰かに言えるわけがない。
「そっか、桜木はすごいなあ。あの摩矢くんと二人っきりでお風呂なんて、俺、緊張して絶対無理だよ。もしも、摩矢くんの背中にもんもんあったら、俺、気絶しちゃうよ~。そういうのなかった?」
「無いよ。塚ちん、摩矢のこと、なんだと思ってるの?」
「え?噂ではどっかの組の若頭だとかって聞いたけど、違うの?」
「違うよ。摩矢のお父さんは会社員で3人の妹と母親の5人家族で、ごくごく一般的な家庭だよ」
「えー!似合わない!!あの迫力で一般家庭なの?!」
「そうだよ」
俺は答えながら、皿を取り、ビュッフェの品を適当に盛り始めた。
「マジかよ?!どんな育ちをしたら、一般家庭からあんな只者じゃないオーラの子供が生まれるんだ?」
塚ちんは秋ちゃんのことで驚いていたが、俺としては、すでに大量となった皿の上に、まだ天ぷらやら卵焼きやらを積み上げていく塚ちんの方に驚かされる。
「育ちとかは関係ないよ。実は俺、保育園の頃から摩矢を知ってるけど、ずっとあんなんだよ。だから、摩矢はあれが自然体」
「うへえ!」
と驚く塚原の声を聴きながら、俺は保育園時代からの秋ちゃんを思い出していた。
目が隠れるほど前髪を伸ばした仏頂面の小さい秋ちゃん。
思えばあの頃から、秋ちゃんは俺が触ると少し頬を赤らめてた気がする。
……あれ?
でも、お互いのちんこ擦り合わせた頃からそれがひどくなったか?
……あれ?あれ?どうだったっけかな?
「あのさあ、塚ちん。突然すごく変な事を聞くけど、男同士でちんちん握りっこしたことある?」
食事を持って、席に着くなり、俺がそんな質問をするもんだから、塚ちんは椅子ごとひっくり返った。でも、食い物はしっかりテーブルに置いてからひっくり返る所が、流石、食い物を愛するフードファイターだ。
「な、な、何でそんな事、急に聞くの?!」
「あー、なんとなく。小さい頃、そういうことよくやったなあと思って」
「ふぇ~、小さい頃ね~。俺はてっきり風呂場で摩矢くんに強要されたのかと思っちゃった!……『おい、俺の右手は使えねぇんだ!おめぇが俺のしゃぶれ!!』なんて、ギラつく目で言われたら、俺、どうしよう!怖くて摩矢くんのしゃぶっちゃうかもしれない!!」
キャー!と言って塚ちんは乙女のように自分の顔を覆った。
「ば、バカ!!なんつー想像してんだよ!!」
塚ちんが妙な事を言うもんだから、俺の脳内でもそんな秋ちゃんが再生されて、背筋がゾクゾクする。
しかも、秋ちゃんにそんな事を言われて、まんざらじゃない自分に驚いた。
「だってさー。話の流れからして、何となく想像しちゃうじゃん」
「え!!どこが?」
「摩矢くんと二人っきりで風呂に入ってきて、ちんちん握りっことか言うんだもん!摩矢くんに強要されて、してきたのかと思った」
「ま、摩矢はそんな奴じゃないって!!」
むしろそれは俺の方……。
秋ちゃんの泣き顔と強制猥褻罪の五文字がぐるぐると頭の中を回る。
「そう?じゃあ摩矢くんとは全く関連のない話なんだね?」
「ああ。でも……」
「──でも?」
塚ちんが椅子を元に戻し、座るなり身を乗り出す。
「いや、何でもない。それより、互いのにぎにぎしたことある?」
「うへえ!またその質問に戻るの?!ない、ない!!一切ない!俺のちんこは純潔よ!小さい頃、母親に触られる以外は全く経験のない!悲しいくらいのピュアピュアちんこさ!」
「あー、そうなんだー」
俺は少しがっかりした。
「ちょい待ち、夕緋くん。何でそんな残念そうなの?」
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