どこまでも近くて遠い君

蓮華空

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桜木episode 1

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 逆に訊ねられて、俺は少々困った。だが、これを機に自分の常識を疑ってみることにした。

「俺さぁ、実は昔からそういうことよくあったんだよねー。同級生は勿論、小学生の頃から隣の家の兄ちゃんとか、母親が連れてきた友人とか、中学の先輩とか、その他、諸々と経験した。うちは母子家庭で、母親が帰ってくるの遅かったから、つい彼らに甘えていると、そういうことになりがちだった」

 塚ちんが脇で顎が外れんばかりに驚いている。

「さ、さ、桜木……それって……」

「ああ、うん。言いたいことは分かるよ」

 塚ちんの反応を見て、やっぱり普通はやらないことなんだと思った。

「桜木ぃ~!お前は俺が思う以上に、小さい頃からいけない事してるんだぁ!俺は悲しいよぉ~!しかも、同級生は兎も角、母親が連れてきた友人って、大人だろお!それじゃあ最早、犯罪じゃんかよぉ!!」

「そうだね。でも、俺は今まで誰とそうしてきても嫌だとか気持ち悪いとか思った事がないんだよね。むしろ気持ちいいから好きだったくらいで……、あ!でも、誤解しないで、女の子とするセックスの方が気持ちいいから出来たら断然そっちの方が好き。でも、男同士で触りっこ程度なら、そっちも全然抵抗がないんだよねー。それを摩矢に言ったら『変態糞野郎』って言われて……。やっぱり、塚ちんもそう思う?」

 塚ちんは何も言わず、唖然としたまま静かに頷いた。

 俺は大きなため息をついて、「やっぱりそうかー」と俯いた。

 前々から薄々と感じてはいたけど、俺は人と性愛の感覚がかなりズレているんだ。秋ちゃんも相当ズレていると思ったけど、ひょっとしたら俺の方がズレにズレまくっているのかもしれない。だから、秋ちゃんは、俺が秋ちゃん以外ともしたことあるって言った時、顔色を変えて俺の事を振り切った。でも、怪我をしたままだったから、色々と一人ではままならず、仕方なく変態糞野郎の俺に、また触れる機会を与えた。秋ちゃんは見かけによらず、すっごく優しいから、全く自覚のなかった俺を、きっと渋々許してくれたのかもしれない。

 それなのに……俺ときたら……。

 秋ちゃんに対して、また変態的なことを……。

 ずーんと気持ちが奈落の底へと沈み込む。



「あ、いや……俺は摩矢くんみたいに、桜木の事を『変態糞野郎』とまでは思ってないから大丈夫だよ」

 塚ちんが優しくフォローしてくれた。

 俺は顔を上げ、にっこりと笑ってみせたが、きっと心から笑えていない。

「ありがとう塚ちん。まあ、糞野郎とまでは思ってなくても、であることには違いないから。うん。大丈夫。俺のことは気にしないで。俺はということを、しっかり自覚したから、これからは気を付けるよ」

 俺が変態と知りつつ、心配そうに見つめてくる塚ちんがすごく愛らしい。

「あー、いや……。俺は……だから、そこまで桜木を変態だとは思ってなくて、その……」

 そう言ってくれるのは有難いけど、今は自分のしたことに猛省しかない。

「そもそもさぁ、その隣の家の兄ちゃんだとか、母親の友人だったおっさんって、桜木から触った訳じゃないだろ?」

「まあ、確かにそうだけど……」

「だったら、桜木は被害者じゃないか?!桜木の方から誰かのちんちんを無理矢理触ったなら兎も角、そうじゃないなら、桜木は変態じゃない!!」

 そう言われて俺の胸は軋んだ。

 俺の秋ちゃんに対してのあれは、無理矢理じゃないか。

 そういえば幼い頃、性的虐待を受けた子が、成人になると、その子も性的虐待を犯すようになる──なんて話を聞いた事がある。

 そういう人は感覚が既に鈍っていて、自分が幼い頃そうだったから、別にしてもいいと自分を正当化する。しかも、相手は誰にも言えないということを、自分自身が経験しているから、簡単にはバレないことを知っている。

 そうして、自らが加害者に──。



 うわあああ──!!ごめん!!秋ちゃん!!俺はそんなつもりじゃあああ!!

 俺は頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
















 
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