60 / 79
摩矢episode 6
45
しおりを挟む
「さあ~て!飯も食ったし、みんながスキーをやっている間、摩矢と俺はじっくり勉強するかとことん語り合おうか!」
食事の後、共にホテルの一室に戻った松田は、腕を捲りながら暑苦しいまでのやる気でそうのたまった。
「どっちも嫌です」
冷たい口調で返してやったが、松田は俺の気持ちなどお構いなしに「それじゃあ、俺の武勇伝を聞け!」と言ってきた。なんの武勇伝だか知らないが、全く興味がない。
「つーか、何であんた、ここに居るの?担任としての仕事は?」
「全部、佐々木先生に任せてきた」
「いいのか、それで?」
「誰一人として異論なしだな!それより、またお前が消えることの方が問題だから、ずっ─────っと、俺が付いていることにしたから、そこんとこよろしく!」
「えっ!ずっと?」
滅茶苦茶嫌な顔をして返すと、松田も表情を歪めた。
「言っておくが、俺だって正直、嫌なんだからな。なにが楽しくて、密室で銀髪仏頂面の可愛げのない男子生徒と1日中居なきゃなんねぇんだよ!俺だってゲレンデに出て、可愛い女子生徒の笑顔を見てた方が楽しいんだからな」
「そりゃあ、気の毒だったな」
俺は言われた通りの顔で返してやる。確かに仕事とはいえ、こんな俺に付いていなくちゃいけないなんて、先生稼業も大変だ。
「つー訳で、摩矢くん。これから何する?」
「何する?って、俺は何もしたくないんだけど……なんか本でも読んでりゃそれでいい」
「ほわっ?!」
松田が妙な声を上げるものだから、俺の身体はビクリとしてしまった。
「それじゃあ、俺がつまんねーだろうが!目的もなしに本を読むって、俺にとっちゃ苦痛なんだけど!!だから、止めて!!」
教師の癖に読書が苦痛とは……。生徒の手前、もうちょっと上手いはぐらかし方をしろ!と言いたい。
「……では、どうしろと?」
「だから、俺と語ろうじゃねぇか♪普段、言えないようなこと、小さな悩み、ネガティブなことでも、ポジティブなことでも、どーんと来い!」
なるほど……この熱血教師め!部屋に入ってからの、暑苦しいまでのやる気は、そういうことだったのか。
「先生、仕事熱心ですね。これを機に問題のある生徒の話を聞き出そうって魂胆ですか?」
「いや、別に~。そんなつもりはねぇよー。ただ単に知りたいだけさ。だって面白そうだろ!!お前って全然、素を表に出さないんだから、そういう奴の本性って逆にほじくり出したいんだよなあ。例えばさあ!摩矢みたいなタイプの恋愛観ってどうなの?!俺の想像では、誰かに惚れても何もしないで見ているだけな気がするんだよねー。下手すると次第にそれがエスカレートしてストーカーになるタイプだ!どうだ!当たってるだろ!違うか?!」
俺は呆気に取られて返す言葉もない。マジでこの状況を教師としての立場より、個人的に面白がろうとしている。
「俺……先生のそういう所、すっげえ尊敬します」
「だろぉ!当たってんだろ!俺の人を見る眼は中々なものだなぁ!」
得意気になっている担任を俺は冷めた目で見つめた。どうやら勘違いをしているらしいが訂正するのも面倒なのでそのままにしておく。
「では、話は終わりってことで」
俺は立ち上がって足を引き摺りながら、部屋の端まで行くと、出口の襖に手を置いた。
「は?ちょっと待て、話はこれからって時に、何処へ行く?」
「トイレ」
「俺も行く!」
襖を開けた、上り框の脇にあるトイレを指差し「俺はここに入るだけだけど?」と、言うと、松田は「じゃあ、俺はお前が出てくるまでドアの前に居る」と、立ち上がった。
──便所の前に立ってまで、俺を監視する気か……。
トイレのドアを閉め、溜め息を付く。
──俺が一人になれるような場所は、もうこの狭いトイレしかないようだ。
俺は便座に座り、気晴らしに携帯を覗いた。ロックを解除すると、見慣れない通知が沢山来ていた。
「ん?」
『あなたの作品がお気に入り登録されました』
──な、なんだと?!
創作サイトに投稿を始めて数年経つが、これまでのお気に入り件数はたったの1件のみ。
ハッシュタグも付けていないせいか、殆んど見る人のいない辺境の地に、どういう訳か今日だけで34件も登録数が出ていた。
なんの怪奇現象かと不信に思い、投稿サイトを覗いてみると、もっと不可思議な出来事が起きていた。
なんと感想投稿も12件入っている。
──何が起こっているんだ?
俺は恐怖すら感じ、わなわなと震える手で画面をスクロールする。そして、個人メールの通知を見たら、いつもの見慣れたアイコンからメッセージが届いていた。
──紅虫(桜木)!!!
なるほど!これは、お前の仕業かあ!!
食事の後、共にホテルの一室に戻った松田は、腕を捲りながら暑苦しいまでのやる気でそうのたまった。
「どっちも嫌です」
冷たい口調で返してやったが、松田は俺の気持ちなどお構いなしに「それじゃあ、俺の武勇伝を聞け!」と言ってきた。なんの武勇伝だか知らないが、全く興味がない。
「つーか、何であんた、ここに居るの?担任としての仕事は?」
「全部、佐々木先生に任せてきた」
「いいのか、それで?」
「誰一人として異論なしだな!それより、またお前が消えることの方が問題だから、ずっ─────っと、俺が付いていることにしたから、そこんとこよろしく!」
「えっ!ずっと?」
滅茶苦茶嫌な顔をして返すと、松田も表情を歪めた。
「言っておくが、俺だって正直、嫌なんだからな。なにが楽しくて、密室で銀髪仏頂面の可愛げのない男子生徒と1日中居なきゃなんねぇんだよ!俺だってゲレンデに出て、可愛い女子生徒の笑顔を見てた方が楽しいんだからな」
「そりゃあ、気の毒だったな」
俺は言われた通りの顔で返してやる。確かに仕事とはいえ、こんな俺に付いていなくちゃいけないなんて、先生稼業も大変だ。
「つー訳で、摩矢くん。これから何する?」
「何する?って、俺は何もしたくないんだけど……なんか本でも読んでりゃそれでいい」
「ほわっ?!」
松田が妙な声を上げるものだから、俺の身体はビクリとしてしまった。
「それじゃあ、俺がつまんねーだろうが!目的もなしに本を読むって、俺にとっちゃ苦痛なんだけど!!だから、止めて!!」
教師の癖に読書が苦痛とは……。生徒の手前、もうちょっと上手いはぐらかし方をしろ!と言いたい。
「……では、どうしろと?」
「だから、俺と語ろうじゃねぇか♪普段、言えないようなこと、小さな悩み、ネガティブなことでも、ポジティブなことでも、どーんと来い!」
なるほど……この熱血教師め!部屋に入ってからの、暑苦しいまでのやる気は、そういうことだったのか。
「先生、仕事熱心ですね。これを機に問題のある生徒の話を聞き出そうって魂胆ですか?」
「いや、別に~。そんなつもりはねぇよー。ただ単に知りたいだけさ。だって面白そうだろ!!お前って全然、素を表に出さないんだから、そういう奴の本性って逆にほじくり出したいんだよなあ。例えばさあ!摩矢みたいなタイプの恋愛観ってどうなの?!俺の想像では、誰かに惚れても何もしないで見ているだけな気がするんだよねー。下手すると次第にそれがエスカレートしてストーカーになるタイプだ!どうだ!当たってるだろ!違うか?!」
俺は呆気に取られて返す言葉もない。マジでこの状況を教師としての立場より、個人的に面白がろうとしている。
「俺……先生のそういう所、すっげえ尊敬します」
「だろぉ!当たってんだろ!俺の人を見る眼は中々なものだなぁ!」
得意気になっている担任を俺は冷めた目で見つめた。どうやら勘違いをしているらしいが訂正するのも面倒なのでそのままにしておく。
「では、話は終わりってことで」
俺は立ち上がって足を引き摺りながら、部屋の端まで行くと、出口の襖に手を置いた。
「は?ちょっと待て、話はこれからって時に、何処へ行く?」
「トイレ」
「俺も行く!」
襖を開けた、上り框の脇にあるトイレを指差し「俺はここに入るだけだけど?」と、言うと、松田は「じゃあ、俺はお前が出てくるまでドアの前に居る」と、立ち上がった。
──便所の前に立ってまで、俺を監視する気か……。
トイレのドアを閉め、溜め息を付く。
──俺が一人になれるような場所は、もうこの狭いトイレしかないようだ。
俺は便座に座り、気晴らしに携帯を覗いた。ロックを解除すると、見慣れない通知が沢山来ていた。
「ん?」
『あなたの作品がお気に入り登録されました』
──な、なんだと?!
創作サイトに投稿を始めて数年経つが、これまでのお気に入り件数はたったの1件のみ。
ハッシュタグも付けていないせいか、殆んど見る人のいない辺境の地に、どういう訳か今日だけで34件も登録数が出ていた。
なんの怪奇現象かと不信に思い、投稿サイトを覗いてみると、もっと不可思議な出来事が起きていた。
なんと感想投稿も12件入っている。
──何が起こっているんだ?
俺は恐怖すら感じ、わなわなと震える手で画面をスクロールする。そして、個人メールの通知を見たら、いつもの見慣れたアイコンからメッセージが届いていた。
──紅虫(桜木)!!!
なるほど!これは、お前の仕業かあ!!
0
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる