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摩矢episode 6
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「あ、あれは……」
俺は何か言い訳を考えた。真実なんか言える訳ない。松田との誤解を全て話そうとしたら、銀狼の正体は俺だという所から話さなくちゃならない。況してや、それを言ったら、今度は俺が何であんな詩を書いたかまで話さなくちゃならない。出来れば例え桜木だろうと、墓場まで知られずに持っていきたい。
「秋ちゃん……布団の中で、泣いてたって、本当なの? それは何で?」
「あ、いや……それは……」
全部お前のせいだと言ってやりたいが、そんな事……やっぱりどうしても言いたくない!
「秋ちゃんって、本当は頼り甲斐のある大人の男性に甘えたいって願望があるんじゃないの? 俺……松田から聞いた話が、どうしても信じられなくて……。でも、松田の話も嘘だと思えなかった……。だから、ひょっとしたら……ひょっとするのかな、って……。でも、秋ちゃんが、人前で泣いて、他人の腕枕で寝るなんて……俺……やっぱり、それは、考えられないから…………俺……」
今にも消えてしまいそうなほど、か細い声で言いながらも、部屋の中では壊れた障子の枠が、桜木の豪腕でバキボキベキボキとへし折られていく。
「さ、桜木……いいから、落ち着け、な?」
「大丈夫。もう落ち着いてるよ」
にっこりと笑って見せたが、障子枠の一番太いところを、今度は膝を使って折り始めた。
しかも、折れた木の尖った部分が桜木の腕を刺し、血がにじみ始める。それでも桜木は気にした風もなく枠を折り続けた。
「さ、桜木!血が出てる!」
「ああ、大した事ないよ。こんなの放っておいたって平気」
桜木は傷を確認すると、自分でその血を舐めた。
「そんなことよりさ……」
桜木が口を開くと、俺の身体は緊張で強張った。
「秋ちゃん……松田に抱き締められたり、腕枕してもらっただけ? 他に……何かされてない?」
ゆっくりとこちらを見つめる視線に、俺は生唾を飲み込んだ。
「ない!絶対にない!!」
俺は嘘を付いた。これで松田にされたことも、俺は墓場まで持っていかなきゃならない。
「本当に?」
「ああ」
「本当にだね?」
「ああ!!」
真実を確かめるように、じっと俺を見つめるトパーズのような瞳が、恐ろしいほど綺麗で不気味だ。
「桜木!」
俺はそれに負けじと声を張り上げ、桜木の名を呼んだ。
「言っておくが、廊下で松田が言っていたことって、そもそも超~誤解の、超~勘違いだからなっ!」
俺は念を押した。
桜木が「え?!」とした顔で、目をしばたたく。
「恥ずかしいから、あんまり人には話したくなかったんだけど、俺は今、あるWeb小説に嵌まっていてな」
「Web小説?」
「そう。俺はその小説の続きが読みたくて。でも、松田が勉強しよう!とか横でうるさいから、具合の悪い振りをして、布団の中でこっそり続きを読んでいたんだよ。そしたら、ちょっと……感動する場面になっちゃって……、それでグズグズと布団の中で泣いていたら、松田に見付かって、あいつは何を勘違いしたのか、突然、俺を抱き締めてきて、愛情が足んないだの騒いで、違う!言っても聞いちゃくれない。俺は何とかそこから抜け出そうとしたんだけど、抜けないから、もう面倒臭せぇ!って、されるがままにしてたら、そのまんま寝ちまったんだよね。……うん。真相はそんな感じ」
俺は大嘘を付いた。
桜木だって、まだ告白もしていないのに、相手にその気持ちを、先に知られてると知った日には、流石に困るだろう。
俺もあの詩が、桜木の想いを綴った詩だったなんて、桜木自身には絶対に知られたくない!だから、ここはお互いの為にも、銀狼へのメッセージは知らなかった事として済ませたい。
「お前……、俺の話と松田の話。どっちを信じる?」
嘘を貫き通すなら堂々とだ。居丈高に俺は桜木に問いかけた。
「どっちって……そりゃもちろん、秋ちゃんだよ。本当に……そんな話だったの?」
「当たり前だろうが、馬鹿!俺と松田がどうなると思ってるんだ!!お前がどんな想像をしているのか考えただけで寒気がするっ!!」
桜木はへなへなと、その場に座り込んだ。ほっとしたような顔をして、「なんだ……そうだったのか……なんだ……」と、繰り返した。そして、急に畳の上にひっくり返った後「もう!秋ちゃんっ!!早く言ってよぉー!!」と、叫んだ。
「全くお前が聞かなかっただけだろっ!!俺は待てって言った!!」
「あ、そうか!!」
桜木は渋面を作って、布団の上に座る俺を見上げた。
「俺の早とちり?いや……それにしたって、俺がここに来たとき、涙目だったよね?」
ギクッっと俺は身を縮めた。
俺は何か言い訳を考えた。真実なんか言える訳ない。松田との誤解を全て話そうとしたら、銀狼の正体は俺だという所から話さなくちゃならない。況してや、それを言ったら、今度は俺が何であんな詩を書いたかまで話さなくちゃならない。出来れば例え桜木だろうと、墓場まで知られずに持っていきたい。
「秋ちゃん……布団の中で、泣いてたって、本当なの? それは何で?」
「あ、いや……それは……」
全部お前のせいだと言ってやりたいが、そんな事……やっぱりどうしても言いたくない!
「秋ちゃんって、本当は頼り甲斐のある大人の男性に甘えたいって願望があるんじゃないの? 俺……松田から聞いた話が、どうしても信じられなくて……。でも、松田の話も嘘だと思えなかった……。だから、ひょっとしたら……ひょっとするのかな、って……。でも、秋ちゃんが、人前で泣いて、他人の腕枕で寝るなんて……俺……やっぱり、それは、考えられないから…………俺……」
今にも消えてしまいそうなほど、か細い声で言いながらも、部屋の中では壊れた障子の枠が、桜木の豪腕でバキボキベキボキとへし折られていく。
「さ、桜木……いいから、落ち着け、な?」
「大丈夫。もう落ち着いてるよ」
にっこりと笑って見せたが、障子枠の一番太いところを、今度は膝を使って折り始めた。
しかも、折れた木の尖った部分が桜木の腕を刺し、血がにじみ始める。それでも桜木は気にした風もなく枠を折り続けた。
「さ、桜木!血が出てる!」
「ああ、大した事ないよ。こんなの放っておいたって平気」
桜木は傷を確認すると、自分でその血を舐めた。
「そんなことよりさ……」
桜木が口を開くと、俺の身体は緊張で強張った。
「秋ちゃん……松田に抱き締められたり、腕枕してもらっただけ? 他に……何かされてない?」
ゆっくりとこちらを見つめる視線に、俺は生唾を飲み込んだ。
「ない!絶対にない!!」
俺は嘘を付いた。これで松田にされたことも、俺は墓場まで持っていかなきゃならない。
「本当に?」
「ああ」
「本当にだね?」
「ああ!!」
真実を確かめるように、じっと俺を見つめるトパーズのような瞳が、恐ろしいほど綺麗で不気味だ。
「桜木!」
俺はそれに負けじと声を張り上げ、桜木の名を呼んだ。
「言っておくが、廊下で松田が言っていたことって、そもそも超~誤解の、超~勘違いだからなっ!」
俺は念を押した。
桜木が「え?!」とした顔で、目をしばたたく。
「恥ずかしいから、あんまり人には話したくなかったんだけど、俺は今、あるWeb小説に嵌まっていてな」
「Web小説?」
「そう。俺はその小説の続きが読みたくて。でも、松田が勉強しよう!とか横でうるさいから、具合の悪い振りをして、布団の中でこっそり続きを読んでいたんだよ。そしたら、ちょっと……感動する場面になっちゃって……、それでグズグズと布団の中で泣いていたら、松田に見付かって、あいつは何を勘違いしたのか、突然、俺を抱き締めてきて、愛情が足んないだの騒いで、違う!言っても聞いちゃくれない。俺は何とかそこから抜け出そうとしたんだけど、抜けないから、もう面倒臭せぇ!って、されるがままにしてたら、そのまんま寝ちまったんだよね。……うん。真相はそんな感じ」
俺は大嘘を付いた。
桜木だって、まだ告白もしていないのに、相手にその気持ちを、先に知られてると知った日には、流石に困るだろう。
俺もあの詩が、桜木の想いを綴った詩だったなんて、桜木自身には絶対に知られたくない!だから、ここはお互いの為にも、銀狼へのメッセージは知らなかった事として済ませたい。
「お前……、俺の話と松田の話。どっちを信じる?」
嘘を貫き通すなら堂々とだ。居丈高に俺は桜木に問いかけた。
「どっちって……そりゃもちろん、秋ちゃんだよ。本当に……そんな話だったの?」
「当たり前だろうが、馬鹿!俺と松田がどうなると思ってるんだ!!お前がどんな想像をしているのか考えただけで寒気がするっ!!」
桜木はへなへなと、その場に座り込んだ。ほっとしたような顔をして、「なんだ……そうだったのか……なんだ……」と、繰り返した。そして、急に畳の上にひっくり返った後「もう!秋ちゃんっ!!早く言ってよぉー!!」と、叫んだ。
「全くお前が聞かなかっただけだろっ!!俺は待てって言った!!」
「あ、そうか!!」
桜木は渋面を作って、布団の上に座る俺を見上げた。
「俺の早とちり?いや……それにしたって、俺がここに来たとき、涙目だったよね?」
ギクッっと俺は身を縮めた。
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