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摩矢episode 6
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また表の鉄扉が開く音がして、鈴木先生が戻ってきた。しかも、今度はその後ろに、思いもよらない奴がひょっこりと現れた。
おずおずと俺達の居る部屋に顔を出したのは三隅だった。相変わらず小動物のようにビクビクと警戒しながら、ペコリとお辞儀をする。
「三隅くんがね、どうしても摩矢くんに直接お礼がしたいんだって」
鈴木先生がにこやかに三隅を促す。
「さ、三隅くん」
「あ、は、はい!……あの……あの……」
と、あの……を、もう3回言ってから、三隅はまた暫く沈黙してしまった。
「あー、うん。気持ちは分かったから、無理しなくていいよ。俺は大丈夫だから、心配しないで、みんなの所に戻りなよ」
待ってたら明後日になりそうだから、俺は先に答えた。すると、三隅は棒立ちのままハラハラと涙を溢した。
「みーちゃん、どうしたの?」
さっと、動いたのは桜木だ。三隅に近付き、肩に手を添える。
「あらあら、三隅くん。どうしちゃったのかしら?摩矢くんに会って、ほっとしたのかしら?」
鈴木先生の問いに、三隅は首を振った。
「ち、違うんです!そういう事じゃなくて……あの……あの……。僕も、何か摩矢くんの為に出来る事はないかな?って思って……だから、僕に何か摩矢くんの助けになること、させて下さい!!」
「まあ、そういう事だったの?摩矢くん。何かある?」
「いや、別に……これといって何もないけど……」
と、そこまで答えたところで、ふと、三隅の隣に立った桜木と目が合った。
「あ、そうだ!じゃあ、今夜、風呂の介添えをお願い出来るか?」
「「え?!」」
と、桜木と三隅が同時に驚く。
「ちょ、ちょっと待って秋ちゃん!みーちゃんには、もしもの時があったら秋ちゃんを運ぶ事なんて出来ないよ!それは俺がやる!!」
俺は眉間に皺を寄せた。
だから、お前だけじゃ、昨夜の今日で、何をされるか分かったもんじゃないだろ!別にそれが嫌だって訳じゃないが、俺にだって、心の準備ってもんがあるし、出来れば五体満足の時にゆっくり体験したいし、初めてはもっと違うシチュエーションがいいし、だから、それを解ってくれ~!!という念を、額からぐぐっと送ってみたが、桜木には全く通じていない様子で、1人、ショックを受けていた。
そして、青ざめた桜木とは対称的に、顔を真っ赤にした三隅が胸を張っている。
「ぼ、ぼ、ぼ、僕で良ければ、何でもします!!」
完熟トマトがいつもより3割り増しの大声で言った。
……いや、頼むからそんな気合いを入れないで、普通にしてくれ、普通に。
「じゃあ、今夜は桜木くんだけじゃなく、三隅くんも一緒にお風呂に入ったらいいわ」
「俺もそれがいいと思うなぁ。桜木だけでは、別の意味で危ない気がするし~」
桜木の気持ちに気付いている松田が意味深な発言をする。
「それはどういう意味ですか?」
殺気を帯びた桜木の視線で松田は身を縮めた。
「いや、まあ……それは……あれだ!幼馴染みで慣れたもの同士だと、はしゃぎすぎて危ない場合もあるんじゃないのかなあ……と、思っただけさ」
睨まれた松田はしどろもどろだ。まあ、でも、それくらい言ってもらった方がこっちも助かる。流石に、三隅も居て、松田にも勘づかれていては、桜木も手を出してこないだろう。
「じゃあ、三隅。よろしく頼むよ。わざわざ来てくれて有り難う」
礼を言うと、三隅の顔が明るくなった。
「こちらこそ、助けてくれて有り難う御座います!!」
一生懸命な三隅に、俺は思わず顔を綻ばせた。そういやこんな風に、面と向かって誰かに礼を言われたのは初めてかもしれない。
それだけ俺は人に対して無関心というか、何もしてこなかった証なんだろうけど、案外、こういうのも悪くないもんだ。
けれども、ふと、桜木の方を見ると、奴は複雑な表情をしていた。そんなに、三隅が加わるのが嫌なのだろうか?
「それでは、桜木くんと三隅くんは、またゲレンデの方に戻りましょうか? 松田先生!!」
「はい!」
「今度はしっかりとやって下さいよ!」
「分かってます!分かってます!この度はどうもご迷惑お掛けしました!」
松田が鈴木先生にお辞儀をすると、鈴木先生は彼らを連れて部屋を出て行った。
おずおずと俺達の居る部屋に顔を出したのは三隅だった。相変わらず小動物のようにビクビクと警戒しながら、ペコリとお辞儀をする。
「三隅くんがね、どうしても摩矢くんに直接お礼がしたいんだって」
鈴木先生がにこやかに三隅を促す。
「さ、三隅くん」
「あ、は、はい!……あの……あの……」
と、あの……を、もう3回言ってから、三隅はまた暫く沈黙してしまった。
「あー、うん。気持ちは分かったから、無理しなくていいよ。俺は大丈夫だから、心配しないで、みんなの所に戻りなよ」
待ってたら明後日になりそうだから、俺は先に答えた。すると、三隅は棒立ちのままハラハラと涙を溢した。
「みーちゃん、どうしたの?」
さっと、動いたのは桜木だ。三隅に近付き、肩に手を添える。
「あらあら、三隅くん。どうしちゃったのかしら?摩矢くんに会って、ほっとしたのかしら?」
鈴木先生の問いに、三隅は首を振った。
「ち、違うんです!そういう事じゃなくて……あの……あの……。僕も、何か摩矢くんの為に出来る事はないかな?って思って……だから、僕に何か摩矢くんの助けになること、させて下さい!!」
「まあ、そういう事だったの?摩矢くん。何かある?」
「いや、別に……これといって何もないけど……」
と、そこまで答えたところで、ふと、三隅の隣に立った桜木と目が合った。
「あ、そうだ!じゃあ、今夜、風呂の介添えをお願い出来るか?」
「「え?!」」
と、桜木と三隅が同時に驚く。
「ちょ、ちょっと待って秋ちゃん!みーちゃんには、もしもの時があったら秋ちゃんを運ぶ事なんて出来ないよ!それは俺がやる!!」
俺は眉間に皺を寄せた。
だから、お前だけじゃ、昨夜の今日で、何をされるか分かったもんじゃないだろ!別にそれが嫌だって訳じゃないが、俺にだって、心の準備ってもんがあるし、出来れば五体満足の時にゆっくり体験したいし、初めてはもっと違うシチュエーションがいいし、だから、それを解ってくれ~!!という念を、額からぐぐっと送ってみたが、桜木には全く通じていない様子で、1人、ショックを受けていた。
そして、青ざめた桜木とは対称的に、顔を真っ赤にした三隅が胸を張っている。
「ぼ、ぼ、ぼ、僕で良ければ、何でもします!!」
完熟トマトがいつもより3割り増しの大声で言った。
……いや、頼むからそんな気合いを入れないで、普通にしてくれ、普通に。
「じゃあ、今夜は桜木くんだけじゃなく、三隅くんも一緒にお風呂に入ったらいいわ」
「俺もそれがいいと思うなぁ。桜木だけでは、別の意味で危ない気がするし~」
桜木の気持ちに気付いている松田が意味深な発言をする。
「それはどういう意味ですか?」
殺気を帯びた桜木の視線で松田は身を縮めた。
「いや、まあ……それは……あれだ!幼馴染みで慣れたもの同士だと、はしゃぎすぎて危ない場合もあるんじゃないのかなあ……と、思っただけさ」
睨まれた松田はしどろもどろだ。まあ、でも、それくらい言ってもらった方がこっちも助かる。流石に、三隅も居て、松田にも勘づかれていては、桜木も手を出してこないだろう。
「じゃあ、三隅。よろしく頼むよ。わざわざ来てくれて有り難う」
礼を言うと、三隅の顔が明るくなった。
「こちらこそ、助けてくれて有り難う御座います!!」
一生懸命な三隅に、俺は思わず顔を綻ばせた。そういやこんな風に、面と向かって誰かに礼を言われたのは初めてかもしれない。
それだけ俺は人に対して無関心というか、何もしてこなかった証なんだろうけど、案外、こういうのも悪くないもんだ。
けれども、ふと、桜木の方を見ると、奴は複雑な表情をしていた。そんなに、三隅が加わるのが嫌なのだろうか?
「それでは、桜木くんと三隅くんは、またゲレンデの方に戻りましょうか? 松田先生!!」
「はい!」
「今度はしっかりとやって下さいよ!」
「分かってます!分かってます!この度はどうもご迷惑お掛けしました!」
松田が鈴木先生にお辞儀をすると、鈴木先生は彼らを連れて部屋を出て行った。
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