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摩矢episode 6
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みんなが出て行くと、俺はまた松田と二人っきりになってしまった。桜木と二人っきりも困るが、こいつと二人でいるのもなんか嫌だ……。
「おい!セクハラ教師!」
「な、なんだ?!」
「さっきのような真似は二度とするなよ」
「分かってるよ!それより、あの事は桜木には絶対に言うなよ!」
今度は逆に俺が念を押された。松田の奴、よっぽど桜木にびびっているとみえる。
「言わねぇよ!あいつが暴れると本当っに厄介だからな!」
「そうか、なら安心だ……。それにしても、お前、あいつに愛されてるなぁ。だってさあ、俺は別に大したことしてないだろ?」
「大したことって……、あんたが言うことじゃねぇだろ!された方の気持ちが重要だ!」
「え?!摩矢くん。そんなに嫌だった?ちょっとだけじゃん!──あっ!まさか、初めてだったとか?!」
「別に初めてじゃねぇけど……」
そう言ったら松田は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「意外~。お前……普段、全然人を寄せ付けない癖に、やることやってんだなぁ。実はこっそり付き合ってる奴がいるとか?それとも、そういう遊びをする相手がいるとか?実は小さい頃から、桜木とやってるとか?」
「うるせぇなぁ。勝手に想像してろ!俺は今からweb小説の続きを読むから、話しかけるな!」
「えー!もうちょっと、色々と語ろうよ。Hはしたことあるのか?どうなんだ?」
「いい加減に黙らないと、桜木に、あんたに無理矢理キスされて、尻にち〇こを擦りつけられたって言うぞ!」
松田はひぃぃ!と言って青ざめた。
「それは止めてくんないかな?」
「だったら、黙ってろ!!」
はい……と言って松田は大人しくなった。暫くはこの手で松田を黙らせる事が出来そうだ。
俺はスマートフォンを取り出し、web小説ではなく、創作サイトに投稿した自分のページを開いた。この先に居るのは、きっと桜木経由で知った同じ学校の奴らだ。桜木でさえ、これが俺だと気付いてはいないから、他の奴らが俺だと気付く確率は低いはずだ。だが、見知った奴が感想を書いてきたかと思うと、何だか緊張する。
俺は恐る恐る感想ページを読み始めた。
****
こうして、午後の時間はずっと詩の感想を読んで、返信を送っていた。今までこんなに多くの人に読んでもらって、感想をもらう事なんてなかったものだから、お陰で自分以外の人が、どのような想いで、過ごしているのか、随分と見えてきた気がする。
共感してくれる声もあれば、当たって砕けろ!という奴までいる。または、俺の詩に触発されて、自分の辛い経験を涙ながらに話してくれた奴もいた。
自分の想いだけじゃない、それぞれの想いを実際に感じることで、皆がどこかで繋がっているような、そんな不思議な感覚になっていた。
俺は今まで、人を中々信じる事が出来ず、必ず裏には別の本心や考えが有象無象に存在するのではないかと疑っていた。いや、今でも有象無象に、一人の人間の中で、思考は流れていると思っているが、その全てが嘘や偽りではないと、思い始めている。目まぐるしい日常の変化の中で、考えや想いも変化していく。俺が今まで他人に対し、嘘だと疑っていたことは、嘘や偽りということではなくて、その変化の中で、自然と変わっていってしまったものがほとんどだったような気がする。事実、俺だって、桜木に対してずっと片想いをしていると思っていたが、そうではないと知って、すごく嬉しい反面、それが怖いと思っている。
怖いって、なんだよ?
両想いなんだから、もっと喜んでもいいと思うのだが、それでもやっぱり少し怖い。片想いでいる時は、桜木を失うことを恐れて、両想いだと知った後は、想いが成就したあと今後の俺の行動次第でそれをまた失うのではないか、という恐怖でいっぱいだ。
今の自分を以前の自分が見たら、俺は絶対に、『こいつ……本当に桜木の事が好きだったのかよ?』と、疑うことは間違いない。
でも、今だって好きなことに変わりはないのだ。
恋愛に於いての心の振り幅は本当に不思議なものだ。こういう事は別に俺に限ったことではなくて、感想をいくつか読んでいると、少なからず俺と同じような悩みを抱えている奴もいた。だから、別に俺だけが特別な訳でも、周りが特別な訳でもないんだな……。
そう思った途端、何かの錘が取れたような気がした。
そんな午後を過ごして、俺がリラックスしていると、桜木達がゲレンデから帰ってきた。
「秋ちゃん、お風呂の時間だよ」
部屋にやって来た桜木は、いつもより静かな様子で襖を開けた。その横にはピッタリと三隅も居る。
「ああ、分かった。有り難う」
俺は身を起こし、桜木の肩を借りて、立ち上がった。
松田はまた見廻りに行くと言って、俺達は部屋を後にした。
*****
昨日と同じく家族風呂の暖簾をくぐり、俺達は脱衣場で服を脱ぎ始めた。
俺はジャージを脱いだ後、肩に巻いたサポーターのマジックテープを剥がし、ゆっくりとそれを外す。そして、三隅がそれを受け取ってくれた。
「悪いな」
声をかけると、それだけで途端と三隅は顔を赤らめた。
「い、いえ、何でもサポートしますので、不便なところは何でも言って下さい」
「ああ、有り難う」
そんな感じで三隅が俺の側について、ジャージを畳んでくれたりしていたが、その横で桜木は自分の脱いだジャージを籠に入れたところで止まっていた。
「桜木?どうした?」
俺が声をかけると、桜木は我に返ったかのように、慌てて「いや、何でもない」と言って俺に微笑んだ。
どう考えても、何でもないって顔をしていない。何かあったのだろうか?
「おい!セクハラ教師!」
「な、なんだ?!」
「さっきのような真似は二度とするなよ」
「分かってるよ!それより、あの事は桜木には絶対に言うなよ!」
今度は逆に俺が念を押された。松田の奴、よっぽど桜木にびびっているとみえる。
「言わねぇよ!あいつが暴れると本当っに厄介だからな!」
「そうか、なら安心だ……。それにしても、お前、あいつに愛されてるなぁ。だってさあ、俺は別に大したことしてないだろ?」
「大したことって……、あんたが言うことじゃねぇだろ!された方の気持ちが重要だ!」
「え?!摩矢くん。そんなに嫌だった?ちょっとだけじゃん!──あっ!まさか、初めてだったとか?!」
「別に初めてじゃねぇけど……」
そう言ったら松田は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「意外~。お前……普段、全然人を寄せ付けない癖に、やることやってんだなぁ。実はこっそり付き合ってる奴がいるとか?それとも、そういう遊びをする相手がいるとか?実は小さい頃から、桜木とやってるとか?」
「うるせぇなぁ。勝手に想像してろ!俺は今からweb小説の続きを読むから、話しかけるな!」
「えー!もうちょっと、色々と語ろうよ。Hはしたことあるのか?どうなんだ?」
「いい加減に黙らないと、桜木に、あんたに無理矢理キスされて、尻にち〇こを擦りつけられたって言うぞ!」
松田はひぃぃ!と言って青ざめた。
「それは止めてくんないかな?」
「だったら、黙ってろ!!」
はい……と言って松田は大人しくなった。暫くはこの手で松田を黙らせる事が出来そうだ。
俺はスマートフォンを取り出し、web小説ではなく、創作サイトに投稿した自分のページを開いた。この先に居るのは、きっと桜木経由で知った同じ学校の奴らだ。桜木でさえ、これが俺だと気付いてはいないから、他の奴らが俺だと気付く確率は低いはずだ。だが、見知った奴が感想を書いてきたかと思うと、何だか緊張する。
俺は恐る恐る感想ページを読み始めた。
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こうして、午後の時間はずっと詩の感想を読んで、返信を送っていた。今までこんなに多くの人に読んでもらって、感想をもらう事なんてなかったものだから、お陰で自分以外の人が、どのような想いで、過ごしているのか、随分と見えてきた気がする。
共感してくれる声もあれば、当たって砕けろ!という奴までいる。または、俺の詩に触発されて、自分の辛い経験を涙ながらに話してくれた奴もいた。
自分の想いだけじゃない、それぞれの想いを実際に感じることで、皆がどこかで繋がっているような、そんな不思議な感覚になっていた。
俺は今まで、人を中々信じる事が出来ず、必ず裏には別の本心や考えが有象無象に存在するのではないかと疑っていた。いや、今でも有象無象に、一人の人間の中で、思考は流れていると思っているが、その全てが嘘や偽りではないと、思い始めている。目まぐるしい日常の変化の中で、考えや想いも変化していく。俺が今まで他人に対し、嘘だと疑っていたことは、嘘や偽りということではなくて、その変化の中で、自然と変わっていってしまったものがほとんどだったような気がする。事実、俺だって、桜木に対してずっと片想いをしていると思っていたが、そうではないと知って、すごく嬉しい反面、それが怖いと思っている。
怖いって、なんだよ?
両想いなんだから、もっと喜んでもいいと思うのだが、それでもやっぱり少し怖い。片想いでいる時は、桜木を失うことを恐れて、両想いだと知った後は、想いが成就したあと今後の俺の行動次第でそれをまた失うのではないか、という恐怖でいっぱいだ。
今の自分を以前の自分が見たら、俺は絶対に、『こいつ……本当に桜木の事が好きだったのかよ?』と、疑うことは間違いない。
でも、今だって好きなことに変わりはないのだ。
恋愛に於いての心の振り幅は本当に不思議なものだ。こういう事は別に俺に限ったことではなくて、感想をいくつか読んでいると、少なからず俺と同じような悩みを抱えている奴もいた。だから、別に俺だけが特別な訳でも、周りが特別な訳でもないんだな……。
そう思った途端、何かの錘が取れたような気がした。
そんな午後を過ごして、俺がリラックスしていると、桜木達がゲレンデから帰ってきた。
「秋ちゃん、お風呂の時間だよ」
部屋にやって来た桜木は、いつもより静かな様子で襖を開けた。その横にはピッタリと三隅も居る。
「ああ、分かった。有り難う」
俺は身を起こし、桜木の肩を借りて、立ち上がった。
松田はまた見廻りに行くと言って、俺達は部屋を後にした。
*****
昨日と同じく家族風呂の暖簾をくぐり、俺達は脱衣場で服を脱ぎ始めた。
俺はジャージを脱いだ後、肩に巻いたサポーターのマジックテープを剥がし、ゆっくりとそれを外す。そして、三隅がそれを受け取ってくれた。
「悪いな」
声をかけると、それだけで途端と三隅は顔を赤らめた。
「い、いえ、何でもサポートしますので、不便なところは何でも言って下さい」
「ああ、有り難う」
そんな感じで三隅が俺の側について、ジャージを畳んでくれたりしていたが、その横で桜木は自分の脱いだジャージを籠に入れたところで止まっていた。
「桜木?どうした?」
俺が声をかけると、桜木は我に返ったかのように、慌てて「いや、何でもない」と言って俺に微笑んだ。
どう考えても、何でもないって顔をしていない。何かあったのだろうか?
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