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摩矢episode 6
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今頃になって、昨晩のことを悪いと思い始めたのだろうか? 俺の顔を見ては、何かを言おうとして、やっぱり止める。その様子を見ているとだんだんとイライラしてきた。
「なんか、言いたい事があるなら言えよ」
俺はTシャツを一気に脱いで、それを籠に入れながら、靴下を脱ぐ。
桜木はチラリと三隅の様子を見ながら、俺に微笑み「うん。後で話すよ。今は取り敢えずお風呂に入ろう」と言った。
俺は釈然としないまま、桜木ではなく、三隅を呼びつけ、肩を貸してもらうことにした。
「あ、秋ちゃん。俺も手を貸すよ」
桜木がそう言ってくれたが、俺はそれを断った。
「お前に上から吊られるより、三隅に体重を乗せた方が楽だからいいよ」
本当にその方が楽だからなのだが、桜木は「そっか」と言って寂しそうに微笑んだ。その表情に、後ろ髪を引かれるような、申し訳ない気持ちになったが、どうしたって俺の中では、色々なことが急に動き過ぎて、桜木に対していつもと同じにように甘えてはいられない。
俺達は無言のまま浴場へと向かった。
浴場は家族風呂といっても、蛇口が2つ付いていて、俺と桜木はその前に座り、三隅は俺の介添えとして俺の後ろに付いた。
ゆっくりとシャワーをかけてもらいながら、俺は桜木の様子を伺う。
桜木も蛇口をひねり、シャワーを浴びる。
濡れた髪が肌に張り付き、頭の形や輪郭が露になった。それでも桜木の美しさは損なわれることはない。それどころか、しとどに濡れた白い肌が、艶かしく輝き、普段目にする桜木とは違った色香を漂わせる。特に俺が好きなのは、桜木が目を伏せた時の長い睫毛と、目の形。そして、そこから伸びる、日本人離れした鼻梁だ。完璧な比率と位置で各パーツが最高のバランスを取っている。
シャンプーを取るために桜木が首を捻る。すると、くっきりと現れる胸鎖乳突筋から鎖骨のラインがまた美しい。
今でさえ、どこもかしこも完璧にいい男なのに、こいつがそれなりの年齢になったら、どれだけいい男になるんだろう。きっと今よりモテて、結婚したいと思う女がわらわらと現れて、引く手あまたになるだろう。そんな奴が本当に俺なんかを好きでいいのだろうか? 信じられない気持ちで、ぼうっと桜木に見惚れていたら、三隅に声をかけられていたことに気付かなかった。
「ま、摩矢くん」
「なんだ?」
「頭……洗うけど、いい?」
と、訊くから、俺は咳払いをして、よろしく頼む、とお願いする。
三隅はおずおずと俺の頭に触れ、優しく洗い始めた。本当に触れるか触れないかの微妙な力加減でふわふわと洗う。少し物足りないような気もするが、適度に泡立ってきているから、まあ、良しとした。
そして、時間が経つにつれ、背中に三隅の腰に巻いたタオルが触れる。その触れ方が次第に妙な案配になってきて、もしかしたら三隅の腰に巻いたタオルが落ちそうなのではと思い、ならば教えてやらなくてはと「あのさ」と声をかけ、振り返ったら、俺の予想とは違うものが目に飛び込んできた。
──な、な、何でこいつ……勃ってんの?!
驚きと共に俺は直ぐに視線を桜木に移す。
桜木は洗った髪をシャワーで濯いでいる最中だった。閉じた瞳と真っ直ぐ伸びた鼻梁の横顔が半端なく美しい。
──そうだった!三隅は桜木の事が好きだったんだ!!
三隅は日頃から桜木に話しかけらる度に赤くなっていた。彼女が出来た時も、寂しくて泣いていたくらいだ。それだけ好きだった奴の裸が目の前にあるんだ。三隅も男だったということか……? にしたって、俺も居るっつーのに、あそこをおっ勃てるなんて、何を考えてるんだ?
俺は三隅に鋭い眼光を送った。気付いた三隅は手を止めて「あ、あの……どこか痛かったですか?」と訊いた。
「いや、別に……。けど」
俺は三隅の腕を掴んで、桜木とは反対の位置に三隅を座らせた。
「お前……どういうつもりだ、それ?」
顎で三隅の股間の位置を示すと、三隅は慌ててあそこを押さえた。
「こ、こ、こ、これは……見ないで下さい!ごめんなさい……」
「何を想像して勃てたんだ?言ってみろよ」
「そ、それは……」
下を向いた三隅の顎に手を掛け、上を向かせる。そして、顔を近付け、三隅の耳に唇を寄せ、桜木に聞こえないよう囁いた。
『黙ってててやるから、正直に言えよ』
背後でガタン!と大きな音がして、俺は振り向いた。
青い顔をして、立ち上がった桜木と目が合う。
「あ、秋ちゃん……い、今……みーちゃんと……キスした?」
「してねぇーよ!!バカ!!」
一体、どうすりゃそんな展開になるんだ?
「だって、こっちから見ると、そんな風に見えるんだもん!!」
「勘違いだ!何で俺がそんなことをするんだ?!」
「秋ちゃんからとは限らないじゃん!みーちゃんからするかもしれない……」
「はあ?!」
何で三隅が俺にキスなんかすると思うんだ? 俺にそんなことをする馬鹿はお前くらいしかいないだろうに……。あ、変態教師もいたか!だが、松田と桜木はどっかおかしな変態だから仕方ないと思うが、三隅は違うだろう?
「なんか、言いたい事があるなら言えよ」
俺はTシャツを一気に脱いで、それを籠に入れながら、靴下を脱ぐ。
桜木はチラリと三隅の様子を見ながら、俺に微笑み「うん。後で話すよ。今は取り敢えずお風呂に入ろう」と言った。
俺は釈然としないまま、桜木ではなく、三隅を呼びつけ、肩を貸してもらうことにした。
「あ、秋ちゃん。俺も手を貸すよ」
桜木がそう言ってくれたが、俺はそれを断った。
「お前に上から吊られるより、三隅に体重を乗せた方が楽だからいいよ」
本当にその方が楽だからなのだが、桜木は「そっか」と言って寂しそうに微笑んだ。その表情に、後ろ髪を引かれるような、申し訳ない気持ちになったが、どうしたって俺の中では、色々なことが急に動き過ぎて、桜木に対していつもと同じにように甘えてはいられない。
俺達は無言のまま浴場へと向かった。
浴場は家族風呂といっても、蛇口が2つ付いていて、俺と桜木はその前に座り、三隅は俺の介添えとして俺の後ろに付いた。
ゆっくりとシャワーをかけてもらいながら、俺は桜木の様子を伺う。
桜木も蛇口をひねり、シャワーを浴びる。
濡れた髪が肌に張り付き、頭の形や輪郭が露になった。それでも桜木の美しさは損なわれることはない。それどころか、しとどに濡れた白い肌が、艶かしく輝き、普段目にする桜木とは違った色香を漂わせる。特に俺が好きなのは、桜木が目を伏せた時の長い睫毛と、目の形。そして、そこから伸びる、日本人離れした鼻梁だ。完璧な比率と位置で各パーツが最高のバランスを取っている。
シャンプーを取るために桜木が首を捻る。すると、くっきりと現れる胸鎖乳突筋から鎖骨のラインがまた美しい。
今でさえ、どこもかしこも完璧にいい男なのに、こいつがそれなりの年齢になったら、どれだけいい男になるんだろう。きっと今よりモテて、結婚したいと思う女がわらわらと現れて、引く手あまたになるだろう。そんな奴が本当に俺なんかを好きでいいのだろうか? 信じられない気持ちで、ぼうっと桜木に見惚れていたら、三隅に声をかけられていたことに気付かなかった。
「ま、摩矢くん」
「なんだ?」
「頭……洗うけど、いい?」
と、訊くから、俺は咳払いをして、よろしく頼む、とお願いする。
三隅はおずおずと俺の頭に触れ、優しく洗い始めた。本当に触れるか触れないかの微妙な力加減でふわふわと洗う。少し物足りないような気もするが、適度に泡立ってきているから、まあ、良しとした。
そして、時間が経つにつれ、背中に三隅の腰に巻いたタオルが触れる。その触れ方が次第に妙な案配になってきて、もしかしたら三隅の腰に巻いたタオルが落ちそうなのではと思い、ならば教えてやらなくてはと「あのさ」と声をかけ、振り返ったら、俺の予想とは違うものが目に飛び込んできた。
──な、な、何でこいつ……勃ってんの?!
驚きと共に俺は直ぐに視線を桜木に移す。
桜木は洗った髪をシャワーで濯いでいる最中だった。閉じた瞳と真っ直ぐ伸びた鼻梁の横顔が半端なく美しい。
──そうだった!三隅は桜木の事が好きだったんだ!!
三隅は日頃から桜木に話しかけらる度に赤くなっていた。彼女が出来た時も、寂しくて泣いていたくらいだ。それだけ好きだった奴の裸が目の前にあるんだ。三隅も男だったということか……? にしたって、俺も居るっつーのに、あそこをおっ勃てるなんて、何を考えてるんだ?
俺は三隅に鋭い眼光を送った。気付いた三隅は手を止めて「あ、あの……どこか痛かったですか?」と訊いた。
「いや、別に……。けど」
俺は三隅の腕を掴んで、桜木とは反対の位置に三隅を座らせた。
「お前……どういうつもりだ、それ?」
顎で三隅の股間の位置を示すと、三隅は慌ててあそこを押さえた。
「こ、こ、こ、これは……見ないで下さい!ごめんなさい……」
「何を想像して勃てたんだ?言ってみろよ」
「そ、それは……」
下を向いた三隅の顎に手を掛け、上を向かせる。そして、顔を近付け、三隅の耳に唇を寄せ、桜木に聞こえないよう囁いた。
『黙ってててやるから、正直に言えよ』
背後でガタン!と大きな音がして、俺は振り向いた。
青い顔をして、立ち上がった桜木と目が合う。
「あ、秋ちゃん……い、今……みーちゃんと……キスした?」
「してねぇーよ!!バカ!!」
一体、どうすりゃそんな展開になるんだ?
「だって、こっちから見ると、そんな風に見えるんだもん!!」
「勘違いだ!何で俺がそんなことをするんだ?!」
「秋ちゃんからとは限らないじゃん!みーちゃんからするかもしれない……」
「はあ?!」
何で三隅が俺にキスなんかすると思うんだ? 俺にそんなことをする馬鹿はお前くらいしかいないだろうに……。あ、変態教師もいたか!だが、松田と桜木はどっかおかしな変態だから仕方ないと思うが、三隅は違うだろう?
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