どこまでも近くて遠い君

蓮華空

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摩矢episode 6

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 その後はずっと夢見心地で呆然とした時を過ごした。その後の夕食も何を食べたのか全然思い出せない。周囲の音も遠く感じられ、まだ湯煙の中にいるような気がした。唇には未だ残る桜木の余韻が今も熱く身体中を駆け巡り、心が浮わついている。

 そんな最中、三隅が俺にゆっくりと近付いて来た。

「ま、摩矢くん……さっきは、あの……」

「ああ、三隅か。悪いが今、ちょっといいか?」

 俺は三隅を呼んで、誰も居ない廊下に連れ出した。正直な話をしなくてはいけない。



「悪い……三隅。俺はやっぱりお前とは付き合えない」

 伝えると、三隅は涙の粒を一雫だけ溢した。

「ぼ、僕も……そ、そんな気はしていたんだ……きっと何かの間違いじゃないかって……。摩矢くんは僕をからかっているだけなんじゃないかって……」

「待て!それは違う!!からかうとかそういう気持ちは全くない!!それだけは誤解しないでくれ!」

「大丈夫だよ。摩矢くん、ちゃんと分かってたから……僕なんかじゃ駄目だってこと」

 三隅は唇の端を綻ばせた。無理して笑うその姿に、俺の胸がギリギリと痛む。

「だから、お前は自分の事をとかいうな!俺はお前が駄目だとは思ってない!そういうことじゃないんだ!!俺も今の気持ちを正直に言うから、二度と自分の事をなんかとかいうな!」

 三隅は驚いた顔をした後、こくりと頷いた。

 俺は一気に、言いたいことを三隅に伝えた。三隅はしばしの間、沈黙を続けていたが、肩の力を不意に緩ませ、穏やかに微笑んだ。

「そ、そっか……。そうなんだ……。摩矢くん、好きな人が居るんだ……」

「ああ、だから、結局お前を傷付けるような真似をして、本当に申し訳なかったと思う。でも、やっぱり自分の気持ちは欺けなくて……。本当にごめん!!」

 俺は頭を下げて何度も謝った。

「そっか……そうなんだ……。でも、摩矢くんは真剣に僕の事を考えてくれたんだね……。だったら、やっぱり僕は嬉しいな。どうも有り難う」 

 三隅は涙を浮かべながら礼を言った。

 誰も居ない廊下を三隅が踵を返して去る。途中、弱々しく震える肩の寂しさに、俺はもう一人の自分を見ている気持ちになった。

「三隅!ちょっと待て!!」

 俺は痛む足を庇いながら、三隅を追いかけ、後ろから抱き締めた。

「……こっちこそ、勇気を出して気持ちを打ち明けてくれて、有り難う……」

 三隅の耳元に唇を寄せ、俺は礼を言った。

「摩矢くんのバカ……!こんなことされたら、諦めがつかないじゃないか!!……でも、有り難う。僕……摩矢くんを好きになって良かった」

 不意に声を上げて泣き出す三隅の頭を俺は撫でた。ごめんと有り難うを心の中で繰り返しながら、俺はその場を後にした。



 人と人が心を繋ぐ時、例えそこに、物理的な別れがあったとしても、感謝という気持ちで繋がっているような気がする。三隅と俺が一緒に過ごした時間はかなり短いけれども、普段、見せることのない心の底を、しっかりと開き切った感じがあった。その瞬間を人生の要所要所でしっかり捉えることが、生きる上で一番大事な事なのではないかと、今は何となく、そんな気がしていた。

 夕食後の全体集会が終わり、俺は桜木と供に部屋に戻った。想いが伝わった後の、最初の夜だ。これまでとは違うことが起きそうで、俺は緊張したまま、その場に立ち尽くした。
























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