暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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本編 イザヤside1

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「お爺ちゃん?」

 その時、イザヤの後方で声がした。

 振り返って見ると、そこには黒目の大きな色白の少年が立っていた。艶やかな黒髪は前髪が少し長めで、小さな顔を更に小さく見せていた。

「来たか陶也、紹介する。私のもう一人の孫でイザヤだ」

 祖父が何かを喋ったが、日本語のためイザヤには何を言っているのか分からなかった。ただ、この子がさっき話していた陶也だということは雰囲気で分かった。
 その後も二人で何かを話していたが、陶也の様子は暗く不安そうにしていた。

 言葉の分からないイザヤはただ、陶也という子を眺めていた。陶也は綺麗な子だった。彼が頷く度に艶やかな黒髪はさらさらと靡き、目に髪がかかりそうになると首を少し反らした。その首筋の動きが白い肌と相まって何だか艶かしい。イザヤも白人であるから肌は白いが、イザヤと違って陶也の肌には透明感があり、所々、透けて見える血の管が肌の薄さと美しさを強調し、至極官能的に見せていた。

(こんなの刑務所に居たら2秒で犯られてるな)

 イザヤが軽く胸の内で感想を述べると、徐に陶也がこちらを向いた。

 イザヤの心臓はがらにもなく跳ね上がった。

 黒曜石のような瞳がこちらを見ている。ふと、イザヤは幼い頃に見た、日本人女性を思い出した。

「初めまして、如月陶也です。よ、ようこそお越し下さいました。よ……よろしくお願いします」

 丁寧な英語で挨拶をしてくれたが、かなり緊張しているようだ。

「イザヤ・フォスターだ。よろしく」

 右手を差し出すと、陶也はびくりとして肩にかけたカバンの紐をぎゅっと握りしめた。

「?」

 (──俺、怯えさすような真似をしたか?)

「すまないなイザヤ。陶也は人に触れる事が出来ないんだ」

「なんで?」

「それがこの子の特性なんだよ。悪気がある訳でも、お前の事が気に入らない訳でもない。ただ、人に触れる事が出来ないという事を理解してやってほしい」

「ふーん、そうなんだ」

 陶也が申し訳なさそうに頭を下げた。

「取り敢えず今日の所はイザヤも家へ行ってゆっくり休んでくれ。陶也、よろしく頼むぞ。私も少し休む事にする」

 と言って祖父は布団の中に入っていった。
 ほんの僅か喋っただけなのに顔は青ざめ何だか辛そうだ。容態は思ったより酷いのかもしれない。
 祖父にはまだ色々と聞きたい事があったが、日を改めた方が良さそうだ。

 
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