暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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本編 イザヤside1

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 国際免許証の手続きを済ませ、次は買い物に行くという陶也の後に付いて、今度は駅前へとやって来た。

 何の買い物だ?と聞くと、イザヤの服とか身の回りの物を買おう、と言ってきた。どうやら爺さんからも、そう言われているらしく、多めに金額を渡されているという。

「気に入ったの、あるといいですね」

 と、にこやかに陶也は言うが、金のないイザヤからしたら、買ってもらえるのなら何だって構わない。

「じ、実は僕……、お爺ちゃん以外と買い物に来るのなんて初めてで……、だから、ちょっと、今はドキドキしてます」

 そう言われてみるとイザヤにとっても買い物なんて初めてだ。まず、イザヤには昔から物を買う金がない。だから大抵、欲しいものは盗むもの、と思っていたし、しかも、内10年は刑務所の中だ。考えてみたら、陶也以上に買い物などしたことはないのだ。そう思うと何だがイザヤまで緊張してきた。 どうやら、悪さばかりしてると、逆に当たり前の事で緊張するらしい。

「で、何を買うんだ?」

「まず、服を買いましょう!イザヤさんはどんなのが好みですか?」

 困る質問だ。

「んー、好みって言われてもなあ」

 イザヤの服選びの基準は趣味ではなく、盗りやすいか、そうでないかだ。そして、服を盗りに行く基準は、尻に穴が空きそうになったか寒い時だ。

「取り敢えず、破れてなければなんでもいいぞ」

「そんなの当たり前です!!!」

 陶也はからかわれたと思ったのか、怒ったように頬を膨らませている。そうは言われてもイザヤにとっては本当に何でもいいのだ。 イザヤが困って渋面をしていると、陶也も困った顔をした。

「じゃあ、僕が勝手に選んでもいいですか?」

 怖々と陶也が上目使いで尋ねた。

「ああ、よろしく頼むよ」

 只でさえ買い物初心者で、しかも異国でとなるとハードルが高いので助かった。

 

 緊張すると言っていた割に、陶也は案外、楽しんでいるようだった。だが、店員が話しかけるとびくりと体を震わすので、間にイザヤが入る事もあった。
 そうすると少しずつ緊張も解れ、店員とも打ち解けていき、店を出る頃にはイザヤを振り返っては微笑んでくれた。そんな陶也をイザヤは眺めていただけだったが、とても和やかな気持ちでいられた。
 兄弟を亡くしてから、久しくなかった安堵感にイザヤは感謝した。

「お待たせしました。これで用は済みましたので、どっかでお昼でも食べましょう」

「そうだな。随分買ったな、荷物持つよ」

「ありがとうございます」
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