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本編 イザヤside1
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「触るな!売女!」
女の手を振りほどき、睨み付けた。そんなイザヤの態度が気に入らないのか、女は一瞬だけ唇を噛み締めたが、直ぐに作り笑いを完成させた。大したもんだ。
「分かったわ。私達はもう帰るから、みんなを離してくれない?」
「二度と陶也と関わらないと約束するなら」
イザヤは念を押した。
「いいけど……。さっきからどうしてあなたが如月くんの交遊関係に口を出すの?あなた、彼の何?」
「俺はこいつの保護者みたいなもんだ」
「だったら余計に関係なくない?保護者が友人関係に口を出すなんて気持ち悪い。何?共依存?よくないわよ、それ。だったらまだ恋人関係っていう方が納得するな。彼が好きで好きで堪らないから嫉妬しちゃう、だから近寄らないでって、言ってくれた方が分かるけど、彼、美少年だし。でも、そういう訳じゃないんでしょ?」
「ああ、違うな」
「じゃあ、関係ないじゃない。どうするかは私達の勝手よ。だから約束は出来ないなあ」
(──このくそ女!!!)
「でもー。代わりにあなたが私とお友達になってくれるってのなら、約束してあげる」
(なんだ、そりゃ?)
女はまた媚びを売るような笑顔をイザヤに送ると片目を瞑って見せた。
「取り敢えず、名前と連絡先教えて」
そう言ってイザヤの手を握った。
──虫酸が走る。
ぶん殴ってやりたいが、この場じゃまずい。この女、そこまで計算しての振るまいか。だとしたら、本当にむかつく!!
「名はイザヤだ。連絡先はまだない」
「そ、じゃあ私の携帯の連絡先」
女は自分のバッグからメモを取り出し、連絡先を書いて寄越した。
「必ず連絡ちょうだい。さもなくば──、夏休みが明けたら学校でどうしようかなあ」
女は陶也をちらりと見ながら勿体ぶった言い方をわざとした。イザヤの沸点は限界近くまで上がっていた。
(超~~~~~~~ぶん殴りてぇ!!)
仕方なくイザヤは男達を解放して、必ず連絡すると約束した。女は喜んだ。何がそんなに嬉しいんだか……。
「絶対、連絡頂戴ね。約束だよ」
と、言って不本意そうなイザヤに、念を押す。顔が間近に迫ってきて鬱陶しい。仕方なく、わかったよ、と返事をすると、女は突然、イザヤの頬にチュッと音を立ててキスをした。うざい。思わず顔を反らし、逆を向いた瞬間に陶也と目が合った。陶也はそれまで唖然としていた様子だったが、イザヤと目が合うと慌てて目を反らした。何でだ?
じゃあね、と言って去って行く四人を見送りながら、イザヤは大きなため息をついた。
「おい、陶也。ありゃなんだ?何なんだあの……」
「蒔田さん、すっごい美人ですよね」
イザヤは硬直した。どこか言い方に刺がある。でも、あの女を美人と誉めてる。何かが変だ?
「どこがだよ!身の毛もよだつほど気色の悪い女じゃねぇか!あんな女が日本にも生息しているなんて、最悪だ!やっぱ日本も恐ろしいな」
イザヤは身震いしながら、キスされた頬をおしぼりでゴシゴシと拭き取る。
その姿を陶也は呆然と眺めていた。
「イザヤさんって、女性が嫌いなんですか?」
「いや、別に。さっきの女みたいなのが嫌いなだけだ。おぞましい」
「でも、蒔田さんって、モデルもやってる帰国子女なんですよ。最近では男性からも女性からも人気が出て、近々ドラマ出演もするって噂です。そんな人に連絡先を貰えるなんて嬉しくないですか?」
「お前の目はどうなってるんだ?この連絡先がそんないいもんに見えるのか?これは、次の身代金を指定するための連絡先みたいなもんだ!貰ってもちっとも嬉しくない!早くゴミに捨ててやりたいくらいだ!」
イザヤはまるで汚いものを持つように、親指と人差し指で辛うじて摘んで、なるべく自分から距離を離す。
「じゃあ、そうしたらどうですか?」
「はあ?お前、マジで言ってるのか?」
「だって、嫌なんですよね」
「だったら、お前。学校であいつらに何をされてるのか正直に言え!なんかされてるんだろ?」
「僕は……何もされてませんよ」
「嘘つくな!さっきあいつらに、こいつで触られて怯えてたじゃねえか!」
イザヤは孫の手を陶也の目の前にかざした。
「それはイザヤさんだってやってることじゃないですか?」
「う……!」
確かにそうだ。返す言葉もねえ。でも、俺がやっていた時はそんなに怯えた様子はなかったはず……。と思っていたが、嫌い、うざいと言われた事を思い出した。怯えた様子はなかったが嫌がっていたのは確かだ。イザヤは大いに反省した。
「僕が彼らにされてる事はその程度の事です。大したことはしてません。ただ、僕が特殊なだけなんです。彼らが悪い訳じゃない。僕の反応がどうしても過剰になってしまうから、周りはその相手に疑念を抱いてしまうんです。これはよくあることなんです。ですから、イザヤさん。そんなに、僕の事を心配しなくても大丈夫です。その連絡先、嫌なら捨てて下さい」
そう言って陶也はイザヤの持っている女の連絡先に手を伸ばしたが、イザヤはそれを許さなかった。
「ちょっと待て!だったら何であの女はあんな含んだ言い方したんだ!あれはどう見てもお前を盾に取った脅迫だぞ!」
陶也は困った顔をした。
「イザヤさんって、意外と鈍いんですね」
「はん?」
どういうことだ?
「それは、イザヤさんが僕の事を心配しているのを察した蒔田さんが、イザヤさんとの繋がりを持ちたくて、一芝居打っただけだと思います」
「何であの女が俺と繋がりたいなんて思うんだ。そして、何故、お前にそれが解る?」
そう言うと陶也は驚いた顔でこちらを見た。
「だってイザヤさん、すごく格好いいじゃないですか。女の人なら、一目惚れしてもおかしくないです」
イザヤは深くため息を吐いた。
「あの女がその程度の玉か?お前、女を見る目が甘過ぎるぞ」
「そうでしょうか?僕は蒔田さんにはそんな悪い印象はないんです。ただ、男好きなだけで……」
「ふーん。まあ、いい。ただの男好きだったら、一回寝てみりゃ分かるだろ」
イザヤは念のため連絡先を財布にしまった。そして、ふと陶也を見ると、何故か沈んでいた。
「おい……、お前、まさか……。あの女が好きって訳じゃないよな」
「そ、そんなんじゃないです!」
「あ、そう。なら何でそんな嫌そうな顔をしてるんだ」
「べ、別に……そんなつもり……ないですけど……」
イザヤは次第にイライラしてきた。どうも陶也の言う事は歯切れが悪い。嫌いなら嫌い、むかつくならむかつく、好きなら好き。はっきりしろと言いたい。どれも曖昧な態度で切り向けようとする。こいつは全ての人間を性善説で捉えようとしてるから迷うんだ。どう見ても性悪人間だと思う奴らにも別の良い面があると信じていたい良い子ちゃんだ。だが、それだときっといつか痛い目をみる。これ以上、突っ込んで訊くのは嫌がると思うが、イザヤは敢えてはっきりさせる事にした。
女の手を振りほどき、睨み付けた。そんなイザヤの態度が気に入らないのか、女は一瞬だけ唇を噛み締めたが、直ぐに作り笑いを完成させた。大したもんだ。
「分かったわ。私達はもう帰るから、みんなを離してくれない?」
「二度と陶也と関わらないと約束するなら」
イザヤは念を押した。
「いいけど……。さっきからどうしてあなたが如月くんの交遊関係に口を出すの?あなた、彼の何?」
「俺はこいつの保護者みたいなもんだ」
「だったら余計に関係なくない?保護者が友人関係に口を出すなんて気持ち悪い。何?共依存?よくないわよ、それ。だったらまだ恋人関係っていう方が納得するな。彼が好きで好きで堪らないから嫉妬しちゃう、だから近寄らないでって、言ってくれた方が分かるけど、彼、美少年だし。でも、そういう訳じゃないんでしょ?」
「ああ、違うな」
「じゃあ、関係ないじゃない。どうするかは私達の勝手よ。だから約束は出来ないなあ」
(──このくそ女!!!)
「でもー。代わりにあなたが私とお友達になってくれるってのなら、約束してあげる」
(なんだ、そりゃ?)
女はまた媚びを売るような笑顔をイザヤに送ると片目を瞑って見せた。
「取り敢えず、名前と連絡先教えて」
そう言ってイザヤの手を握った。
──虫酸が走る。
ぶん殴ってやりたいが、この場じゃまずい。この女、そこまで計算しての振るまいか。だとしたら、本当にむかつく!!
「名はイザヤだ。連絡先はまだない」
「そ、じゃあ私の携帯の連絡先」
女は自分のバッグからメモを取り出し、連絡先を書いて寄越した。
「必ず連絡ちょうだい。さもなくば──、夏休みが明けたら学校でどうしようかなあ」
女は陶也をちらりと見ながら勿体ぶった言い方をわざとした。イザヤの沸点は限界近くまで上がっていた。
(超~~~~~~~ぶん殴りてぇ!!)
仕方なくイザヤは男達を解放して、必ず連絡すると約束した。女は喜んだ。何がそんなに嬉しいんだか……。
「絶対、連絡頂戴ね。約束だよ」
と、言って不本意そうなイザヤに、念を押す。顔が間近に迫ってきて鬱陶しい。仕方なく、わかったよ、と返事をすると、女は突然、イザヤの頬にチュッと音を立ててキスをした。うざい。思わず顔を反らし、逆を向いた瞬間に陶也と目が合った。陶也はそれまで唖然としていた様子だったが、イザヤと目が合うと慌てて目を反らした。何でだ?
じゃあね、と言って去って行く四人を見送りながら、イザヤは大きなため息をついた。
「おい、陶也。ありゃなんだ?何なんだあの……」
「蒔田さん、すっごい美人ですよね」
イザヤは硬直した。どこか言い方に刺がある。でも、あの女を美人と誉めてる。何かが変だ?
「どこがだよ!身の毛もよだつほど気色の悪い女じゃねぇか!あんな女が日本にも生息しているなんて、最悪だ!やっぱ日本も恐ろしいな」
イザヤは身震いしながら、キスされた頬をおしぼりでゴシゴシと拭き取る。
その姿を陶也は呆然と眺めていた。
「イザヤさんって、女性が嫌いなんですか?」
「いや、別に。さっきの女みたいなのが嫌いなだけだ。おぞましい」
「でも、蒔田さんって、モデルもやってる帰国子女なんですよ。最近では男性からも女性からも人気が出て、近々ドラマ出演もするって噂です。そんな人に連絡先を貰えるなんて嬉しくないですか?」
「お前の目はどうなってるんだ?この連絡先がそんないいもんに見えるのか?これは、次の身代金を指定するための連絡先みたいなもんだ!貰ってもちっとも嬉しくない!早くゴミに捨ててやりたいくらいだ!」
イザヤはまるで汚いものを持つように、親指と人差し指で辛うじて摘んで、なるべく自分から距離を離す。
「じゃあ、そうしたらどうですか?」
「はあ?お前、マジで言ってるのか?」
「だって、嫌なんですよね」
「だったら、お前。学校であいつらに何をされてるのか正直に言え!なんかされてるんだろ?」
「僕は……何もされてませんよ」
「嘘つくな!さっきあいつらに、こいつで触られて怯えてたじゃねえか!」
イザヤは孫の手を陶也の目の前にかざした。
「それはイザヤさんだってやってることじゃないですか?」
「う……!」
確かにそうだ。返す言葉もねえ。でも、俺がやっていた時はそんなに怯えた様子はなかったはず……。と思っていたが、嫌い、うざいと言われた事を思い出した。怯えた様子はなかったが嫌がっていたのは確かだ。イザヤは大いに反省した。
「僕が彼らにされてる事はその程度の事です。大したことはしてません。ただ、僕が特殊なだけなんです。彼らが悪い訳じゃない。僕の反応がどうしても過剰になってしまうから、周りはその相手に疑念を抱いてしまうんです。これはよくあることなんです。ですから、イザヤさん。そんなに、僕の事を心配しなくても大丈夫です。その連絡先、嫌なら捨てて下さい」
そう言って陶也はイザヤの持っている女の連絡先に手を伸ばしたが、イザヤはそれを許さなかった。
「ちょっと待て!だったら何であの女はあんな含んだ言い方したんだ!あれはどう見てもお前を盾に取った脅迫だぞ!」
陶也は困った顔をした。
「イザヤさんって、意外と鈍いんですね」
「はん?」
どういうことだ?
「それは、イザヤさんが僕の事を心配しているのを察した蒔田さんが、イザヤさんとの繋がりを持ちたくて、一芝居打っただけだと思います」
「何であの女が俺と繋がりたいなんて思うんだ。そして、何故、お前にそれが解る?」
そう言うと陶也は驚いた顔でこちらを見た。
「だってイザヤさん、すごく格好いいじゃないですか。女の人なら、一目惚れしてもおかしくないです」
イザヤは深くため息を吐いた。
「あの女がその程度の玉か?お前、女を見る目が甘過ぎるぞ」
「そうでしょうか?僕は蒔田さんにはそんな悪い印象はないんです。ただ、男好きなだけで……」
「ふーん。まあ、いい。ただの男好きだったら、一回寝てみりゃ分かるだろ」
イザヤは念のため連絡先を財布にしまった。そして、ふと陶也を見ると、何故か沈んでいた。
「おい……、お前、まさか……。あの女が好きって訳じゃないよな」
「そ、そんなんじゃないです!」
「あ、そう。なら何でそんな嫌そうな顔をしてるんだ」
「べ、別に……そんなつもり……ないですけど……」
イザヤは次第にイライラしてきた。どうも陶也の言う事は歯切れが悪い。嫌いなら嫌い、むかつくならむかつく、好きなら好き。はっきりしろと言いたい。どれも曖昧な態度で切り向けようとする。こいつは全ての人間を性善説で捉えようとしてるから迷うんだ。どう見ても性悪人間だと思う奴らにも別の良い面があると信じていたい良い子ちゃんだ。だが、それだときっといつか痛い目をみる。これ以上、突っ込んで訊くのは嫌がると思うが、イザヤは敢えてはっきりさせる事にした。
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