47 / 116
陶也side1
45
しおりを挟む
陶也がお爺ちゃんの病室の前に来ると、彼はそこに来て居た。
ベッドの脇に座り、お爺ちゃんの方を見ているせいで顔は見えない。腕に彫られた刺青が目に飛び込んできて怖じ気づいた。しかし、昨日の話を思い出し、何とか留まって、もう一度彼の姿を見た。
彼はいかにもアメリカ人といった風情で、身体も大きくしっかりとした骨格をしていた。後ろ姿だけ見ても、陶也とは真逆の男らしい人だった。
陶也は勇気を振り絞って、お爺ちゃんの病室に顔を出した。
「お爺ちゃん」
と、声をかけた瞬間、彼が振り返った。
ーー息が止まった。
お爺ちゃんよりも鮮やかな青い瞳がこちらを見た。深い海の青が陶也に向かって波のように押し寄せ、今度は潮が引いていくように、その瞳に魅了された。
お爺ちゃんが彼を紹介したが、陶也の耳にはお爺ちゃんの声が入ってこなかった。目の前に立ち上った、彼から吹き付けるオーラが、陶也には精錬された刃のように感じた。熱い炎で焼かれ、叩かれ、強靭に鍛えられた美しい刀剣。その醒めるような鋭い刃に触れると、一瞬で斬れてしまいそうな癖に禍々しさはなく、清廉とした佇まいが印象的だった。
緊張の自己紹介も済んで、家に帰るようお爺ちゃんに言われた時は更に総毛立つほど緊張した。これから、この人と二人っきりでどうしろというのか?陶也の心臓は故障してしまったのではないかと思うほど、鼓動が早くなった。病院の出口が見えてくると、今からでもお爺ちゃんの元に走って、やっぱり無理だと泣き付きに行こうかと思ったくらいだった。だが、病院から一歩外に出たら、さっきまで、狂おしいほど美しくて強いと思った刀剣は一瞬にして、ぐにゃっ、とだらけた。陶也は目を疑った。
「日本の夏って暑いね」
と普通に話しかけられ、気が付けば陶也も自然と答えられていた。日本の夏はこれからが本番でもっと暑苦しなると言うと、驚き、でも、家は山の上にあるから過ごしやすい事を伝えるとほっとしていた。テキサス出身なのに暑さに弱い事実を知り、意外と気さくに話してくれる事に安堵していたら、終いには帽子をうちわ代わりに仰いで型崩れした、と口を尖らせている姿を見せた時には、第一印象とのギャップが激しくて思わず吹き出してしまった。すると、何が可笑しいんだ?という風にこちらを見る目と目が合った。
ーーしまった!ここ、笑うところじゃない!!
慌てて、帽子を誉めて誤魔化したら、ギロリと睨まれ、「帽子だけ?俺は?」と怒ったように訊かれ青ざめた。ーー僕はなんて失礼な事を連続で!!
あっという間にパニックに陥った。もう日本語と英語がごっちゃになって、泣きそうになった時、「悪い悪い、冗談だから気にするな」と可笑しそうに言った。そして、陶也がほっとしていると、頭の上に帽子がふわりと乗っかって、「似合ってるぞ」と顔を覗かれた時の笑顔といったらーー!
陶也は一瞬で心を奪われた。優しく微笑む青い瞳がお爺ちゃんと同じ、様々な命を産み、育んできた海のように澄んだ優しい瞳だった。
ベッドの脇に座り、お爺ちゃんの方を見ているせいで顔は見えない。腕に彫られた刺青が目に飛び込んできて怖じ気づいた。しかし、昨日の話を思い出し、何とか留まって、もう一度彼の姿を見た。
彼はいかにもアメリカ人といった風情で、身体も大きくしっかりとした骨格をしていた。後ろ姿だけ見ても、陶也とは真逆の男らしい人だった。
陶也は勇気を振り絞って、お爺ちゃんの病室に顔を出した。
「お爺ちゃん」
と、声をかけた瞬間、彼が振り返った。
ーー息が止まった。
お爺ちゃんよりも鮮やかな青い瞳がこちらを見た。深い海の青が陶也に向かって波のように押し寄せ、今度は潮が引いていくように、その瞳に魅了された。
お爺ちゃんが彼を紹介したが、陶也の耳にはお爺ちゃんの声が入ってこなかった。目の前に立ち上った、彼から吹き付けるオーラが、陶也には精錬された刃のように感じた。熱い炎で焼かれ、叩かれ、強靭に鍛えられた美しい刀剣。その醒めるような鋭い刃に触れると、一瞬で斬れてしまいそうな癖に禍々しさはなく、清廉とした佇まいが印象的だった。
緊張の自己紹介も済んで、家に帰るようお爺ちゃんに言われた時は更に総毛立つほど緊張した。これから、この人と二人っきりでどうしろというのか?陶也の心臓は故障してしまったのではないかと思うほど、鼓動が早くなった。病院の出口が見えてくると、今からでもお爺ちゃんの元に走って、やっぱり無理だと泣き付きに行こうかと思ったくらいだった。だが、病院から一歩外に出たら、さっきまで、狂おしいほど美しくて強いと思った刀剣は一瞬にして、ぐにゃっ、とだらけた。陶也は目を疑った。
「日本の夏って暑いね」
と普通に話しかけられ、気が付けば陶也も自然と答えられていた。日本の夏はこれからが本番でもっと暑苦しなると言うと、驚き、でも、家は山の上にあるから過ごしやすい事を伝えるとほっとしていた。テキサス出身なのに暑さに弱い事実を知り、意外と気さくに話してくれる事に安堵していたら、終いには帽子をうちわ代わりに仰いで型崩れした、と口を尖らせている姿を見せた時には、第一印象とのギャップが激しくて思わず吹き出してしまった。すると、何が可笑しいんだ?という風にこちらを見る目と目が合った。
ーーしまった!ここ、笑うところじゃない!!
慌てて、帽子を誉めて誤魔化したら、ギロリと睨まれ、「帽子だけ?俺は?」と怒ったように訊かれ青ざめた。ーー僕はなんて失礼な事を連続で!!
あっという間にパニックに陥った。もう日本語と英語がごっちゃになって、泣きそうになった時、「悪い悪い、冗談だから気にするな」と可笑しそうに言った。そして、陶也がほっとしていると、頭の上に帽子がふわりと乗っかって、「似合ってるぞ」と顔を覗かれた時の笑顔といったらーー!
陶也は一瞬で心を奪われた。優しく微笑む青い瞳がお爺ちゃんと同じ、様々な命を産み、育んできた海のように澄んだ優しい瞳だった。
0
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる