59 / 116
陶也side1
57
しおりを挟む
一度、肌を重ねて以来、二人の距離感は陶也が想像する以上に近くなった。
陶也は自分の気持ちが重くならないように、あれ以来、イザヤに「好き」と伝えないようにしていた。が、翌日からイザヤが思ったより甘々に絡んでくるので、大層狼狽えた。
そもそも触れるには陶也をそういう気分にさせなければいけないという条件付きなのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが、それにしても1日における頻度というものが陶也の想像を越えていたのだ。
夜になると、必ずどちらかの部屋で一晩中過ごし、そして、朝、起きればまた一緒にシャワーを浴びる。
そして、その時、体を繋げる事はなくても、濃厚なキスと、身体を洗うという名目の全身愛撫が延々と続いた。
朝食の準備中も後ろから抱きしめながら、項や、耳元に唇を落とし、注意しようと振り返れば、濡れた舌を口腔内に捩じ込まれ、油断をすると、Tシャツの下に手が滑り込んで、色々まさぐるから、あっという間に陶也は膝から崩され、結果、イザヤの好きなようにされた。幸い朝の8時半を過ぎると、将太が家にやってきて、イザヤを追っ払うから、昼の間は落ち着いていられるようになったが、夜になるとまたイザヤがベッタリ張り付くので、夏休みも後2日だと言うのに課題は依然進まず、陶也は焦りを感じていた。
しかし、陶也の焦りとは裏腹に、イザヤは随分とここでの生活も落ち着いて、アメリカに関する話題は一切口にしなくなった。それどころか昼間遊びにくる将太を孫の手でつつきなが日本語を教えろ、と催促を繰り返していた。日本語を覚える気になったのなら、ここにずっと居るつもりなのかと、陶也は安堵した。
そして、夏休みも最後の1日となり、陶也は自室で課題に追われていた。
今年の夏休みはイザヤが来たり、お爺ちゃんが亡くなったりと、色々忙しかったせいで全然課題が進んでいなかった。どう頑張っても今夜中には無理だったが、出来るところまではやっていこうと、陶也はちゃぶ台の上に課題を広げ、必死に勉強していた。
その間、イザヤは陶也の後ろで、詰まらなそうに、畳の上で寝そべっていた。
「そんな必死にやったって、もう間に合わないんだろ?諦めてこっち来いよ」
腰の辺りを孫の手でぐいぐいと押しながら、イザヤが誘ってくる。
このちょっかいがまた陶也の課題を遅らせてる原因でもあった。
「嫌です。出来るところまでやらないと、後々もっと大変な事になるんですから、僕は頑張ります!」
「ふーん。自慢だけど、俺なんか宿題なんてまともにやったことないけどな」
イザヤは孫の手を置き、今度は自分のスマホでゲームを始めた。意外な事にイザヤは育成ゲームがお気に入りらしい。
「そんな事自慢しないで下さい。それでは学校で、いつも叱られてたんじゃないですか?」
陶也が仏頂面で訊くと、イザヤはゲームを操作しながら、不敵に笑った。
「それが宿題に関しては全然問題がなかったんだ。妹が全部、俺の代わりにやってくれてたから」
陶也は驚いて、思わずイザヤを振り返った。イザヤが過去の、それも家族の事を話すなんて初めてだった。
「何で妹が代わりにやるんですか?」
陶也の脳裏にイザヤの妹、リサの姿が浮かんだ。金髪碧眼で線の細い体を付きをしていたが、目の輝きは意志が強く、意外と利発そうな子だった。
「あいつは俺と違っておつむが優秀でさ。本当ならもっと飛び級しててもおかしくないのに、何故か俺の学年に合わせて、俺と同じクラスに居座ってたんだ。だから、宿題は全部妹がやって、テストだって、あいつが予めチェックしたところを俺は丸暗記するだけだった。とは言っても、俺はその丸暗記すら中々やろうとしなかったから、妹にはしょっちゅう怒られた。妹といっても、2つ違いだったが、同じ学年になると、妹だか姉なんだか分からなくなった」
そう言ってイザヤはむくれっ面をしながら、スマホ画面に夢中になっていた。
陶也はその姿を黙って見つめた。こんなリラックスした状態で妹の話をするとは思わなかった。という事は、日本に居る事にも慣れ、陶也に対して気を許してくれているという事なのだろうか?そうだったら嬉しい。
それに、思えば陶也の見れる記憶は、負の感情を伴った暗い記憶しか見えないから、陶也はイザヤの明るい、楽しかった記憶を知らない。イザヤの性格からしたら、暗い記憶ばかりではないはずだ。イザヤの明るい過去もあるのなら聞いてみたかった。
「お兄ちゃんの世話を焼いてくれたってことは、妹さんって、イザヤの事がすごく好きだったんですね。どんな子だったんですか?」
会った事もない妹さんだが、彼女の気持ちは、陶也が見た記憶からも明らかだった。ところが、陶也がそう言った途端、イザヤは口を押さえて蒼白となっていた。
「イザヤ?」
陶也の呼び掛けにも反応せず、イザヤは自分の言った事が信じられない様子で、呆然としたまま立ち上がり、「トイレ」とだけ言い残して、陶也の部屋から出て行った。
陶也は自分の気持ちが重くならないように、あれ以来、イザヤに「好き」と伝えないようにしていた。が、翌日からイザヤが思ったより甘々に絡んでくるので、大層狼狽えた。
そもそも触れるには陶也をそういう気分にさせなければいけないという条件付きなのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが、それにしても1日における頻度というものが陶也の想像を越えていたのだ。
夜になると、必ずどちらかの部屋で一晩中過ごし、そして、朝、起きればまた一緒にシャワーを浴びる。
そして、その時、体を繋げる事はなくても、濃厚なキスと、身体を洗うという名目の全身愛撫が延々と続いた。
朝食の準備中も後ろから抱きしめながら、項や、耳元に唇を落とし、注意しようと振り返れば、濡れた舌を口腔内に捩じ込まれ、油断をすると、Tシャツの下に手が滑り込んで、色々まさぐるから、あっという間に陶也は膝から崩され、結果、イザヤの好きなようにされた。幸い朝の8時半を過ぎると、将太が家にやってきて、イザヤを追っ払うから、昼の間は落ち着いていられるようになったが、夜になるとまたイザヤがベッタリ張り付くので、夏休みも後2日だと言うのに課題は依然進まず、陶也は焦りを感じていた。
しかし、陶也の焦りとは裏腹に、イザヤは随分とここでの生活も落ち着いて、アメリカに関する話題は一切口にしなくなった。それどころか昼間遊びにくる将太を孫の手でつつきなが日本語を教えろ、と催促を繰り返していた。日本語を覚える気になったのなら、ここにずっと居るつもりなのかと、陶也は安堵した。
そして、夏休みも最後の1日となり、陶也は自室で課題に追われていた。
今年の夏休みはイザヤが来たり、お爺ちゃんが亡くなったりと、色々忙しかったせいで全然課題が進んでいなかった。どう頑張っても今夜中には無理だったが、出来るところまではやっていこうと、陶也はちゃぶ台の上に課題を広げ、必死に勉強していた。
その間、イザヤは陶也の後ろで、詰まらなそうに、畳の上で寝そべっていた。
「そんな必死にやったって、もう間に合わないんだろ?諦めてこっち来いよ」
腰の辺りを孫の手でぐいぐいと押しながら、イザヤが誘ってくる。
このちょっかいがまた陶也の課題を遅らせてる原因でもあった。
「嫌です。出来るところまでやらないと、後々もっと大変な事になるんですから、僕は頑張ります!」
「ふーん。自慢だけど、俺なんか宿題なんてまともにやったことないけどな」
イザヤは孫の手を置き、今度は自分のスマホでゲームを始めた。意外な事にイザヤは育成ゲームがお気に入りらしい。
「そんな事自慢しないで下さい。それでは学校で、いつも叱られてたんじゃないですか?」
陶也が仏頂面で訊くと、イザヤはゲームを操作しながら、不敵に笑った。
「それが宿題に関しては全然問題がなかったんだ。妹が全部、俺の代わりにやってくれてたから」
陶也は驚いて、思わずイザヤを振り返った。イザヤが過去の、それも家族の事を話すなんて初めてだった。
「何で妹が代わりにやるんですか?」
陶也の脳裏にイザヤの妹、リサの姿が浮かんだ。金髪碧眼で線の細い体を付きをしていたが、目の輝きは意志が強く、意外と利発そうな子だった。
「あいつは俺と違っておつむが優秀でさ。本当ならもっと飛び級しててもおかしくないのに、何故か俺の学年に合わせて、俺と同じクラスに居座ってたんだ。だから、宿題は全部妹がやって、テストだって、あいつが予めチェックしたところを俺は丸暗記するだけだった。とは言っても、俺はその丸暗記すら中々やろうとしなかったから、妹にはしょっちゅう怒られた。妹といっても、2つ違いだったが、同じ学年になると、妹だか姉なんだか分からなくなった」
そう言ってイザヤはむくれっ面をしながら、スマホ画面に夢中になっていた。
陶也はその姿を黙って見つめた。こんなリラックスした状態で妹の話をするとは思わなかった。という事は、日本に居る事にも慣れ、陶也に対して気を許してくれているという事なのだろうか?そうだったら嬉しい。
それに、思えば陶也の見れる記憶は、負の感情を伴った暗い記憶しか見えないから、陶也はイザヤの明るい、楽しかった記憶を知らない。イザヤの性格からしたら、暗い記憶ばかりではないはずだ。イザヤの明るい過去もあるのなら聞いてみたかった。
「お兄ちゃんの世話を焼いてくれたってことは、妹さんって、イザヤの事がすごく好きだったんですね。どんな子だったんですか?」
会った事もない妹さんだが、彼女の気持ちは、陶也が見た記憶からも明らかだった。ところが、陶也がそう言った途端、イザヤは口を押さえて蒼白となっていた。
「イザヤ?」
陶也の呼び掛けにも反応せず、イザヤは自分の言った事が信じられない様子で、呆然としたまま立ち上がり、「トイレ」とだけ言い残して、陶也の部屋から出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる