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陶也side1
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警察の事情聴取を受け、その後、また学校に戻った。
逮捕された生徒が三人も出た事に、保護者も騒然となって、学校は、緊急保護者会の準備で慌ただしくなり、一瞬で文化祭どころではなくなってしまった。
そんなこんなで、バタバタと一日を過ごしていたら、あっという間に夜になってしまった。
流石に一日、疲れたので今夜はコンビニで適当に夕食を買って、家路に着いた。
キッチンでお弁当を温め、食べている最中、ずっとイザヤは、お前が無事で良かった、何もされてなくて良かった、と繰り返し呟いては、溜め息をついた。
「はあ……。本当っに良かった。お前に、もしもの事があったらと思うと、俺は飯も喉を通らねぇ」
「でも、イザヤが居たから、助かったし、本当に有り難う」
「……うん、まあ、そうだけど、居合わせなかったらと思うと、やっぱ超怖ぇ……」
そう言って、イザヤはまた溜め息をついた。襲われたのは陶也だけど、襲われたショックはイザヤの方が強いみたいだ。何度も振り返っては陶也に視線を投げ、一安心を繰り返した。
「あ、あの……、美術準備室で蒔田さんと話してた事だけど……」
陶也が話を変えると、イザヤは片眉だけを動かし、こちらを見た。
「確かに、僕には、人には言えない秘密があります。そして、それを人に知られるのがすごく怖い。イザヤの言っていた通りなんだ。それがあるから人と接するのが怖いんです。人が……僕の秘密を知ったら、みんな、僕から離れて行きそうで……、イザヤだって……、離れて行きそうで、怖い。だから、僕も、イザヤにはどうしても言えない事があるんです」
全てを、黙っていることも出来るが、陶也はもう、そうしていたくなかった。かといって、全てを話すのも、まだまだ怖かった。中途半端な告白になるけど、目を反らし続けるのはもう嫌だった。
「いいんじゃないか、そのままで。言いたくないことは言わなくていい。お前、俺に言ったろ?全てを知らなくても、人は人に魅了されるんだって、好きになるんだ、って、俺だって、同じだよ。お前の全てを、知らないままでいい。俺も自分の犯行をお前に詳しく話したくないし……。だから、お互い、言える時が来るまで待てばいい。俺はいつまでも待ってるから……。まあ、でも、お前は言えないままでもいいよ。俺は……、俺達の関係、変えたくはない。お前は?」
青い瞳が陶也をじっと見つめる。
「俺が犯罪者だって、元から知ってたんだろ?だったら……、俺たちの関係、このままでもいいだろ?」
イザヤが上目遣いで訊ねる。
陶也は首を縦に振った。
ほっとした。不安の霧が少しずつ晴れてきた。イザヤが側にずっと居てくれる。アメリカには帰らない。その事実が嬉しかった。
文化祭のあの騒ぎから、2週間が経った頃、お爺ちゃんの四十九日も終え、イザヤとの生活も安定し、平和な暮らしになった。
学校の授業を終え、自転車に乗って、家に帰ろうとしたが、少し夕食の食材を追加しておこうと、駅前の商店街に寄る事にした。
そこの八百屋のおじさんは、とても威勢が良く、おまけもしてくれるので、野菜を買うときはいつもそこで買うことに決めていた。
今日もいつものように、旬の野菜をひとつ多目に貰って、お礼を言って帰ろうとした時だった。
おじさんが慌てて陶也を呼び止めた。
「あ!そういえば、いつも一緒の金髪のカッコイイ兄ちゃん!彼のことを探してる外国人がさっき居たんだよね」
おじさんの言葉に、え?と言って、陶也は振り返った。
「持ってきた写真がまだ少年って感じだったけど、あの兄ちゃんだ!って直ぐに判ったよ。どこに住んでるかって、訊かれたけど、流石にそこまでは分からないって言ったんだよね。黒のスーツ着た何だか妙な連中だったから、知ってても教える気なかったけどさー。余計なお世話かも知れないが、何か心当たりあるかい?」
「い、いえ……」
黒のスーツ着た外国人?陶也はイザヤの記憶から、それらしいのを探して見たが、やはり心当たりはない。それだけでは何とも言えない。だが、妙な胸騒ぎがした。
「そ、その……もう少し詳しく、その人達の事を教えて下さい」
陶也はお願いした。イザヤの少年時代の写真を持ってるのが気になる。
「そうだな、体格のいい男が三人と妙に色っぽい女が一人、──あ!!丁度いた!ほら、あそこ!あいつらだ!」
おじさんは10m程先の大型量販店から出てきた四人の外国人を指差した。
陶也は戦慄した。
髪を黒く染めて目立たないようにしているが、黒のパンツスーツで先頭を歩く女の顔は、紛れもなくイザヤの母親、サラ・フォスター、その人だった。
逮捕された生徒が三人も出た事に、保護者も騒然となって、学校は、緊急保護者会の準備で慌ただしくなり、一瞬で文化祭どころではなくなってしまった。
そんなこんなで、バタバタと一日を過ごしていたら、あっという間に夜になってしまった。
流石に一日、疲れたので今夜はコンビニで適当に夕食を買って、家路に着いた。
キッチンでお弁当を温め、食べている最中、ずっとイザヤは、お前が無事で良かった、何もされてなくて良かった、と繰り返し呟いては、溜め息をついた。
「はあ……。本当っに良かった。お前に、もしもの事があったらと思うと、俺は飯も喉を通らねぇ」
「でも、イザヤが居たから、助かったし、本当に有り難う」
「……うん、まあ、そうだけど、居合わせなかったらと思うと、やっぱ超怖ぇ……」
そう言って、イザヤはまた溜め息をついた。襲われたのは陶也だけど、襲われたショックはイザヤの方が強いみたいだ。何度も振り返っては陶也に視線を投げ、一安心を繰り返した。
「あ、あの……、美術準備室で蒔田さんと話してた事だけど……」
陶也が話を変えると、イザヤは片眉だけを動かし、こちらを見た。
「確かに、僕には、人には言えない秘密があります。そして、それを人に知られるのがすごく怖い。イザヤの言っていた通りなんだ。それがあるから人と接するのが怖いんです。人が……僕の秘密を知ったら、みんな、僕から離れて行きそうで……、イザヤだって……、離れて行きそうで、怖い。だから、僕も、イザヤにはどうしても言えない事があるんです」
全てを、黙っていることも出来るが、陶也はもう、そうしていたくなかった。かといって、全てを話すのも、まだまだ怖かった。中途半端な告白になるけど、目を反らし続けるのはもう嫌だった。
「いいんじゃないか、そのままで。言いたくないことは言わなくていい。お前、俺に言ったろ?全てを知らなくても、人は人に魅了されるんだって、好きになるんだ、って、俺だって、同じだよ。お前の全てを、知らないままでいい。俺も自分の犯行をお前に詳しく話したくないし……。だから、お互い、言える時が来るまで待てばいい。俺はいつまでも待ってるから……。まあ、でも、お前は言えないままでもいいよ。俺は……、俺達の関係、変えたくはない。お前は?」
青い瞳が陶也をじっと見つめる。
「俺が犯罪者だって、元から知ってたんだろ?だったら……、俺たちの関係、このままでもいいだろ?」
イザヤが上目遣いで訊ねる。
陶也は首を縦に振った。
ほっとした。不安の霧が少しずつ晴れてきた。イザヤが側にずっと居てくれる。アメリカには帰らない。その事実が嬉しかった。
文化祭のあの騒ぎから、2週間が経った頃、お爺ちゃんの四十九日も終え、イザヤとの生活も安定し、平和な暮らしになった。
学校の授業を終え、自転車に乗って、家に帰ろうとしたが、少し夕食の食材を追加しておこうと、駅前の商店街に寄る事にした。
そこの八百屋のおじさんは、とても威勢が良く、おまけもしてくれるので、野菜を買うときはいつもそこで買うことに決めていた。
今日もいつものように、旬の野菜をひとつ多目に貰って、お礼を言って帰ろうとした時だった。
おじさんが慌てて陶也を呼び止めた。
「あ!そういえば、いつも一緒の金髪のカッコイイ兄ちゃん!彼のことを探してる外国人がさっき居たんだよね」
おじさんの言葉に、え?と言って、陶也は振り返った。
「持ってきた写真がまだ少年って感じだったけど、あの兄ちゃんだ!って直ぐに判ったよ。どこに住んでるかって、訊かれたけど、流石にそこまでは分からないって言ったんだよね。黒のスーツ着た何だか妙な連中だったから、知ってても教える気なかったけどさー。余計なお世話かも知れないが、何か心当たりあるかい?」
「い、いえ……」
黒のスーツ着た外国人?陶也はイザヤの記憶から、それらしいのを探して見たが、やはり心当たりはない。それだけでは何とも言えない。だが、妙な胸騒ぎがした。
「そ、その……もう少し詳しく、その人達の事を教えて下さい」
陶也はお願いした。イザヤの少年時代の写真を持ってるのが気になる。
「そうだな、体格のいい男が三人と妙に色っぽい女が一人、──あ!!丁度いた!ほら、あそこ!あいつらだ!」
おじさんは10m程先の大型量販店から出てきた四人の外国人を指差した。
陶也は戦慄した。
髪を黒く染めて目立たないようにしているが、黒のパンツスーツで先頭を歩く女の顔は、紛れもなくイザヤの母親、サラ・フォスター、その人だった。
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