暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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イザヤside2

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「えーと……。俺は強いと思っていたけど、実は弱かったって、知ったばかりで、陶也は臆病だと思ってたけど、勇者だった」

 ちらり、と上目遣いでイザヤは陶也の様子を確認した。

 陶也は眉根を寄せて、こっちを凝視してくる。

「な、なんだよ?」

「で?」

 陶也が顔を近付け、尚も問う。

「で?……で?って言われても……??……お、終わり……だよ」

 何を意図しているのか、さっぱり分からない。すると、陶也は突然、イザヤの髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。うわあ!なんだ!とイザヤは声を上げた。

「そこで、またそう決めつけちゃったら、また『我』に振り回されるよ!!」

「ええぇ?!じゃあ、どうすりゃいいんだよ!俺はお前みたいに賢くないんだよ!馬鹿なんだよ!馬鹿!!!」

 ぺちん!と今度は額を陶也に叩かれた。

「だから、自分はこうだって決めつけない方がいいの!一切が空なの!いつでも『縁』によって転じる可能性があるもので、浮かんでは消えていく泡みたいなもんなの!弱いとか強いとか、馬鹿だとか賢いとか、本当はあんまり関係ないんだよ。流動していくもんなんだ。だから、イザヤが強いと思っていたのに、実は弱いと感じても、僕から見たらそれでもやっぱり強くて、だから、要するに、どっちにしたってイザヤはイザヤだ!僕はイザヤの事が好きだけど、ずっと好きだった訳じゃない。途中、すっごい憎らしくて堪らない時もあった!それでもまた好きになったり、また憎たらしくなったりするの!」

「ええええ?!そんなに憎らしく思うこと、何回もあったのか?!」

 イザヤは青ざめた。ショックだ。いや、違う!俺みたいなろくでなし、好きになる方がおかしいんだ!そう思って、陶也に俺のどこが好きか?って訊いておいて、憎らしいと言われて、ショック受けてるってどういう事だよ!!
 イザヤは頭を抱えた。

「でも、イザヤだって、あったでしょ。僕の事、憎たらしく思った時」

「いや、ない!」

 イザヤは即答した。

「何で俺がお前の事を憎く思うことがあるんだ?俺はお前が好きだ!この想いは、もう絶対変わらない!」

 そう言って、イザヤは陶也を引き寄せ、頬から首筋へとキスを繰り返した。

 しかし、陶也は憮然とした表情で、「嘘つき」と言った。

「う、嘘つきぃ???!!嘘なんかついてねぇよ!!なんで、そうなるんだ!お前は俺が、お前をどれだけ好きか、分かってねぇな!!」

「ほら、今の感じなんかどう?」

「……ん?」

 イザヤは眉を寄せ、小首を傾げた。

「ちょっと憎たらしいと思ったでしょ」

 陶也からおずおすと身を離し、首を左右に振る。

「い、……いや~、それほどでもねぇよ。大した事じゃねぇし、その程度では俺の気持ちは揺るがないさ~」

 イザヤはそらっ惚けた。

「では、僕がイザヤの記憶を探っていたときはどう?『金輪際、俺に触るな!』って、あの時、言ったよね」

「うぐっ」

 イザヤは一瞬、言葉に窮した。

「でも、あれは仕方がなくねぇか?あの時はあの時!!これからは絶対ない!!断じてない!!あり得ない!!」

 自信を持って、力いっぱい断定したら、陶也の頭突きが飛んできた。

「痛ぇ!」

「だから、イザヤは一方向に偏り過ぎちゃって、逆方向を否定しやすいの!在るものは在る!無いものは無い!って決めたら、在るものだって、無かったことにしちゃうでしょ!それが『我』なの!それを繰り返すと、今度は僕みたいに『怒り』を感じ難くなるよ!そして、『怒り』を感じる代わりに自己嫌悪や罪悪感が襲ってきて、ある日、突然、どうしようもなく、そうでない現実に見舞われたとき、反動で一気に憎悪がバーン!また同じ罪を繰り返すつもり?」

「……!」

 陶也にそう言われた瞬間、イザヤの脳裏で、祖父のある言葉が甦った。


『それも甘えだ。依存してるんだよ。まだまだ母親に、目を覚ませ』


 ──甘え

 ──依存

 ──目を覚ませ


 頭の中で同じ単語がぐるぐる回った。
 目の前では、陶也が一生懸命、説明してくれている。その間も、爺さんの言葉がイザヤの頭の中を占めていた。

 甘え 依存 目を覚ませ
 
「だから、イザヤは、その時、その時の心をそのまんま受け止めて流して行けばいいの!」

「解った!!!今ので、大分解ってきた!」

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