暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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イザヤside2

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 そうだ!俺はここに入るとき、何て思った?

 ──甘えたい、だ。

 誰かに甘えた事がない?
 いや、そんな事はない!!俺は甘えていた!

 母親に。

 幼い頃は一心に、母親の後を追って、甘えていた。あいつの機嫌が悪くなると、余計に、必死になって後を追い、愛情を求めた。そして、機嫌が良くなると、ここぞとばかりに甘えていたはずだ。

 憎みに転じた後も、殺すとか言って、いつでも、あいつの後を追っていた。

 結局、俺は心が変わっても、一心に母親の後を追いかけてる!俺のやってることはずっと変わってねぇ!爺さんの言う通りだ。俺はそんな甘ったれじゃねぇと思いながらも、これではずっと甘ったれてるのと一緒だ!

 俺はずっと子供のままなんだ!

 そして、その子供のままの愛情を陶也に移し、同じように愛情を欲しても、俺の成長はない。

 『目を覚ませ』

 全くその通りだ。自立した一人の人間として、目を覚まさなくては!!

「陶也!お前のお陰で大分解ってきたぜ!……有り難う!」

 そして、爺さんも──。

 あの時、病院でこの言葉を爺さんに言って貰えなかったら、俺は気付くのに、もっと沢山の時間を有しただろう。

 陶也の言う、自力ではそこに至れないという言葉の意味が解った気がした。陶也に小突かれ、頭突きされながら教えられても、それだけでは、解るまでには中々至らない。俺は陶也に甘えたかった訳だから、一心に母親を追っていたあの時と同じようなもんだ。甘えたい欲望があるから、陶也に絶対揺るがない愛を伝えて、その欲望を満たそうとしていた。つまり、絶対的な愛が欲しいのは俺なんだ!だから、陶也に、俺の事を憎らしい時もあったと言われてショックを受けてたんだ!これが『我』か!
俺って奴は、陶也を目の前にしたら、甘えたい欲望の方が強くなって、結果、見えるものも見えなくなるんだ。

 なるほど、この感覚が煩悩即菩提ってやつなのか?

 俺は一方向に強く気持ちが動くと、もう一方向を否定しやすい。だから、母親に対しても、憎しみの感情が強くなると、過去にあいつから貰っていたであろう愛情も、無かったことにしていたのか。

 イザヤの脳裏に、今、はっきりと母親の歌うLullaby and goodnight が木霊していた。
 
 あの頃は、穏やかで、満たされていた。

 ゆらゆらとあいつに抱かれながら聴いた子守唄。

 そうだ……。リサが産まれて、大きくなってから、俺とあいつの関係は変わってきた。

 イザヤは顔を上げ、陶也に向き直った。

「陶也!教えてくれ!お前は、あいつの過去を見たんだろ?俺は──あいつをもっと、知りたい!」

 そう言うと、陶也は真剣な顔で頷いた。
 
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