暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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陶也side2

109 陶也side

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  イザヤの母親達が捕まってから、既に2カ月が経った。

 彼らはアメリカに強制送還される事が決まり、あちらの法律によって裁かれる事になった。どちらにしろ、一生、刑務所の中で彼等は暮らす事になるだろう。

 イザヤはあの事件の後、病院へ運び込まれたが運良く内臓には損傷がなく、命に別状はなかった。快復も良好で、2週間入院した後、帰宅してからは元気に仕事復帰した。

 今回の事件に巻き込んでしまった小川さん親子も無事に快復はしたが、イザヤにとっては心が痛く、何度もお詫びに行っては、小川さんに、そこまで頭を下げる必要はないと、優しく窘められていた。それどころか、小川さんから、イザヤを気遣うような労りの言葉を貰うと、イザヤは涙ながらにお礼を言った。あの一件以来、イザヤはすっかり涙脆くなっていた。

 そして、首に下げたイザヤの兄弟達は、お寺の住職に訳を話し、お爺ちゃんと同じお墓に納めさせてもらった。これなら、天国できっと、お爺ちゃんが彼らを可愛がってくれていることだろう。

 そして、陶也は今、イザヤと共に東京に来ていた。

 理由は、4歳の頃に別れて以来、一度も会っていない母に会う為だった。

 母に会うのはずっと怖いと思っていた。

 母からしたら、自分の存在は無い方がいいに決まっている。しかし、無い方がいいと、決めつけて暮らし続けるのが、本当に平和で幸せな暮らしなのか?陶也は今一度、考え直していた。

 日常のありふれた生活の中で、ふと、母の苦し気な眉間の皺や、泣きそうになるのを必死で堪える口元が、陶也の脳裏にちらついていた。

 同じように母も、毛布にくるまり、悲しそうに怯えている陶也の姿を思い出し、その度に胸を痛めてはいないだろうか?

 そう思うと、陶也の胸は苦しくなり、心の中で、僕はもう大丈夫だよ、と母に繰り返し唱えていた。

 しかし、思い出の中の母に、何度、話しかけても、本物の母に会わない限り、ずっと母の曇った表情は変わらない。

 イザヤ親子を見て以来、陶也の中で、自分も一度、母に会わなければ……という思いが、ずっと燻り続けていた。

 そして、今日、いよいよ決行することにしたのだ。

 
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