暗い記憶が導く場所へ

蓮華空

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陶也side2

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 13年間も会わずにいた母に、連絡して会うというのは、流石に出来なかった。

 母はお爺ちゃんの葬儀にも、弔電だけで、来てはくれなかった。だから、よっぽど自分に会うのは後ろめたい、嫌な事なのかもしれない。

 だから、陶也はどうしても勇気が出せなかった。

 しかし、イザヤの言葉が陶也の背中を押した。

「俺だって、いきなりサラが現れた時は、とんでもなく嫌だったけど、今となっては来てくれて良かったと思ってる。本当に言いたかった事をあいつにぶつけられたから──、もし、あれを言えなかったら、心の底であいつを恨み続けたまま、騙し騙し今も生きてるんだ。それもまた辛い。だから、お前も会うだけ会って、すっきりしてこいよ。相手がどう受け止めるかは分からないけど、お前が笑顔を見せて、幸せに生きてりゃ、それだけで母親は安心じゃねぇのか?」

 俺も一緒に行くからさ、と言ってくれた。

 イザヤが側に居てくれるのなら、陶也にとってこんなに力強い事はない。

 そんな訳で、一か八かの突撃に賭けたのだ。




 母の家が近付いて来ると、陶也の足は、次第に震えてきた。

 途中、何度か立ち止まっては、イザヤが心配そうに顔を覗き込んだ。

 顔を上げ青い空を眺めると、陶也は大きく息を吸った。

 ──大丈夫だ。素直にずっと言いたかった事を言えばいいのだ。

 
 そう決心したところ、脇を小学1年生位の女の子と4年生位の男の子が走ってきて、母の居る家へ、「ただいまー!」と言って駆け込んで行った。

 陶也とイザヤは顔を見合わせた。

 ──今のは陶也の兄弟?!

 初めて見る自分の兄弟達が、元気に帰宅していく様子に、陶也は安堵した。

 ──幸せに暮らしているんだ。

 途端に自分が現れる事で、その幸せを壊してしまわないか不安になった。
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