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留学初日
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「ねー、ねー、今日はシャノン・ホワイトが登校してきてるのよね~。もう見た?」
宇辰との楽しい昼食を終え、午後の授業が始まると、女子達がやたらと落ち着きがなくなってきた。
放課後が近付くにつれ、そこかしこで、シャノン・ホワイトという名前が聞こえ、その度に女子達は騒がしくなった。
そいつがどんな奴だか知らないが、女子が憧れる程の男なら、雷亜には一切関係ない人だ。
「見たわよ!今日のシャノンも相変わらず超カッコイイの一言だったわ!放課後のアメフト部の試合、当然あなたも観に行くでしょ?」
(なるほど、シャノン・ホワイトというのはアメフト部なのか?達也と一緒だ)
雷亜はいつの間にか女子達の会話に聞き耳を立てていた。
「当たり前よ!昨日からドキドキして、今日はなにを着て行くかすっごい悩んじゃったもん!」
雷亜はくすりと微笑んだ。女の子のこういうところはすごく可愛いと思った。
「ぷっ!なにそれ?あんたがいくらお洒落したってシャノンが見てるわけないでしょ。シャノンはQueen Bee達ですら寄せ付けないのよ」
Queen Beeというのはこの学校で一番の美人でイケてる子達を指す。その彼女らですら近付けないとしたら、シャノンという人がこの学校の頂点ーーJockなんだ。
「でも、シャノンってすごく気紛れだっていうじゃない?だから、タイミングが良ければ、私にだってチャンスがあるかもしれない!実は今日の試合後。あたしはレギュラー選手達が集まるパーティーに誘われてるんだあ」
「えー?!うそ!!誰に誘われたのよ!」
「ふふふ、蛇の道は蛇よ」
「あんたアメフト部の誰かと寝たわね?」
「だってあたし、どうしてもシャノンに近付きたいんだもん」
「バカ!そういう付き合いはしちゃダメでしょ!しかも、あんたシャノンとも寝る気?それだけは絶対にやめな!格好いいけどあの人と付き合って精神おかしくなった子が何人いると思ってるのよ!」
ーー精神がおかしくって、なんだそれは?!
後方の女子の会話に雷亜は目を剥いた。
「一夜限りの関係なら大丈夫よ?」
ーーいや、駄目でしょ!
「止しなって!みんなそう言って結局はシャノンを好きになって、告白した結果、酷い目にあってるのよ!みんな言ってるでしょ。
ーーシャノンに惚れて告白したら終わりよ!って」
ーー終わりって、なんだそれ?!そんな噂が出てるのか?それともあれか?これは、女子特有のそういう噂を流して互いを牽制するってやつかな?
雷亜はいつの間にか、人を疑う後ろ向きな思考に囚われていた。
「だから告白なんかしないって!一度だけでいいから抱かれてみたいなあ、なんて思ってるだけ」
「だから、そう言って地獄行きの切符を手にした子がほとんどなんだから、止めときなさいよ!あの男は危険よ!遠くから眺めてるだけが丁度いいのよ!分かった!!」
「はあ?何よその言い方?あんたに指図される筋合いはないわよ!そうか、分かった!あんたも本当はシャノンと寝たいんでしょ。なのにその気持ちを抑えて、でも~でも~、なんてやってるから、あたしが憎らしいんだ。醜いわよ、嫉妬なんて」
ーーバシン!!と、後ろから頬を叩く音が聞こえて雷亜は振り向いた。
「ーーやったわね!」
「人が心配してやってるのに何よ、その言い方!」
そう言って二人の女子は授業中にも関わらず取っ組み合いの喧嘩を始めた。クラスは一気にわっ!とお祭り騒ぎのようになって、先生が止めても収集がつかなくなった。
雷亜は席を立ち上がり、教室の隅で怯えていた。
女子をここまでヒートアップさせるシャノン・ホワイトとは一体どんな奴なのか……。
周囲からほとんど相手にされない雷亜のような人生も侘しく悲しいが、自分の預かり知らない場所で、ここまで女子達を惑わせるシャノン・ホワイトのような人生も罪深そうで勘弁だと思った。
そして、雷亜は身を震わせながら、放課後を迎えた。
宇辰との楽しい昼食を終え、午後の授業が始まると、女子達がやたらと落ち着きがなくなってきた。
放課後が近付くにつれ、そこかしこで、シャノン・ホワイトという名前が聞こえ、その度に女子達は騒がしくなった。
そいつがどんな奴だか知らないが、女子が憧れる程の男なら、雷亜には一切関係ない人だ。
「見たわよ!今日のシャノンも相変わらず超カッコイイの一言だったわ!放課後のアメフト部の試合、当然あなたも観に行くでしょ?」
(なるほど、シャノン・ホワイトというのはアメフト部なのか?達也と一緒だ)
雷亜はいつの間にか女子達の会話に聞き耳を立てていた。
「当たり前よ!昨日からドキドキして、今日はなにを着て行くかすっごい悩んじゃったもん!」
雷亜はくすりと微笑んだ。女の子のこういうところはすごく可愛いと思った。
「ぷっ!なにそれ?あんたがいくらお洒落したってシャノンが見てるわけないでしょ。シャノンはQueen Bee達ですら寄せ付けないのよ」
Queen Beeというのはこの学校で一番の美人でイケてる子達を指す。その彼女らですら近付けないとしたら、シャノンという人がこの学校の頂点ーーJockなんだ。
「でも、シャノンってすごく気紛れだっていうじゃない?だから、タイミングが良ければ、私にだってチャンスがあるかもしれない!実は今日の試合後。あたしはレギュラー選手達が集まるパーティーに誘われてるんだあ」
「えー?!うそ!!誰に誘われたのよ!」
「ふふふ、蛇の道は蛇よ」
「あんたアメフト部の誰かと寝たわね?」
「だってあたし、どうしてもシャノンに近付きたいんだもん」
「バカ!そういう付き合いはしちゃダメでしょ!しかも、あんたシャノンとも寝る気?それだけは絶対にやめな!格好いいけどあの人と付き合って精神おかしくなった子が何人いると思ってるのよ!」
ーー精神がおかしくって、なんだそれは?!
後方の女子の会話に雷亜は目を剥いた。
「一夜限りの関係なら大丈夫よ?」
ーーいや、駄目でしょ!
「止しなって!みんなそう言って結局はシャノンを好きになって、告白した結果、酷い目にあってるのよ!みんな言ってるでしょ。
ーーシャノンに惚れて告白したら終わりよ!って」
ーー終わりって、なんだそれ?!そんな噂が出てるのか?それともあれか?これは、女子特有のそういう噂を流して互いを牽制するってやつかな?
雷亜はいつの間にか、人を疑う後ろ向きな思考に囚われていた。
「だから告白なんかしないって!一度だけでいいから抱かれてみたいなあ、なんて思ってるだけ」
「だから、そう言って地獄行きの切符を手にした子がほとんどなんだから、止めときなさいよ!あの男は危険よ!遠くから眺めてるだけが丁度いいのよ!分かった!!」
「はあ?何よその言い方?あんたに指図される筋合いはないわよ!そうか、分かった!あんたも本当はシャノンと寝たいんでしょ。なのにその気持ちを抑えて、でも~でも~、なんてやってるから、あたしが憎らしいんだ。醜いわよ、嫉妬なんて」
ーーバシン!!と、後ろから頬を叩く音が聞こえて雷亜は振り向いた。
「ーーやったわね!」
「人が心配してやってるのに何よ、その言い方!」
そう言って二人の女子は授業中にも関わらず取っ組み合いの喧嘩を始めた。クラスは一気にわっ!とお祭り騒ぎのようになって、先生が止めても収集がつかなくなった。
雷亜は席を立ち上がり、教室の隅で怯えていた。
女子をここまでヒートアップさせるシャノン・ホワイトとは一体どんな奴なのか……。
周囲からほとんど相手にされない雷亜のような人生も侘しく悲しいが、自分の預かり知らない場所で、ここまで女子達を惑わせるシャノン・ホワイトのような人生も罪深そうで勘弁だと思った。
そして、雷亜は身を震わせながら、放課後を迎えた。
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