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再会
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全ての授業が終わり、各教室から一斉に生徒達が飛び出した。
各自、自分のロッカーへと突進し、中から紺地にターコイズブルーのラインが入ったユニフォームを取り出した。
廊下には同じようなユニフォームを着た生徒達でごった返していた。その中を赤のベロア地パーカーを着た派手な宇辰が紺色の人波をかき分けやって来た。フェードカットされた茶髪にサングラスをかけ、ガムを噛みながら大股で歩いてくる出で立ちは、遠くから見るとやはり怖い人に見えた。
紺色の流れから逆流する深紅のパーカー姿を見ていると、やはり宇辰も近付いたら危険な人のように感じ、雷亜は後退った。そして、一先ず逃げ出そうと駆け出した。が、後ろを見ながら走り出したせいか、前の人にぶつかり、手に持っていた教科書をぶちまけてしまった。
「いってぇな!糞野郎!前見て歩け!」
「す、すいません」
前方の人に怒鳴られながら、急いで廊下に散らばった物をかき集める。だが、拾おうとした教科書をわざと踏みつけて、くしゃくしゃにしてくる足があった。雷亜はその主を見上げた。
ーー達也だった。
(やばいーー!達也にぶつかっていたのか……)
雷亜は慌てて教科書を拾おうとしたが、後ろから誰かに蹴られ、前のめりに倒れた。
「鈍臭せえ奴だなこいつ。邪魔だ!」
達也以外の何人かが続けて踏みつけてくる。
雷亜は焦った。すいません、と頭を下げながら、起き上がると、また蹴られるので、止めてください、と何度もお願いする。すると、後方から、
「おい!こら!てめえら、止めろっ!!」
と、威嚇する宇辰の声が聞こえた。
「ちっ、めんどくせーのが来た」
「悪食中華猿か……目障りな」
「なんだと?やんのか!てめえ!!」
宇辰と雷亜を踏みつけていた一人が、額を付き合わせて睨み合った。一触即発という雰囲気に雷亜が身を縮めていると、達也が、あらぬ方向に視線を移したまま、慌てて二人を引き剥がし始めた。
「おい!止めろ!喧嘩はいいから、早くそこをどけ!」
気になった雷亜も達也の視線の先に目をやる。
すると、廊下に居た人垣は皆、次々とかしずくように道を空けていた。
お祭り騒ぎのようだった廊下が、急に尋常ではない静けさに包まれ、人が左右に分かれていく。
何事かと、雷亜は目を凝らした。
すると、空いた空間から悠然と歩いてくる、レザージャケットを着た長身の美影に視線は釘付けになった。
雷亜の心臓は大きく轟いた。
目の前が突然、真っ白になり、時が一気に巻き戻る。
その時ーー、雷亜の立っている場所は、もう学校などではなかった。あの日の神奈川の海岸へと、意識は飛んでいった。
鼓膜には遠いあの日に聞いた、潮騒の音が穏やかに流れ、空を舞うカメモ達の声まで聞こえるようだった。
プラチナの髪がさらりと揺れる。
ああ……、あの髪の感じーー。
あの艶ーー。
そしてーー、
あの瞳はーー!!
紫水晶のような美しい輝きを放つあの瞳が、この世に二つとしてあるはずがない。
雷亜は茫然と立ち上がり、目の前に彼がやって来ると、無意識に叫んでいた。
「「「アイ ラブ ユー!!!!」」」
各自、自分のロッカーへと突進し、中から紺地にターコイズブルーのラインが入ったユニフォームを取り出した。
廊下には同じようなユニフォームを着た生徒達でごった返していた。その中を赤のベロア地パーカーを着た派手な宇辰が紺色の人波をかき分けやって来た。フェードカットされた茶髪にサングラスをかけ、ガムを噛みながら大股で歩いてくる出で立ちは、遠くから見るとやはり怖い人に見えた。
紺色の流れから逆流する深紅のパーカー姿を見ていると、やはり宇辰も近付いたら危険な人のように感じ、雷亜は後退った。そして、一先ず逃げ出そうと駆け出した。が、後ろを見ながら走り出したせいか、前の人にぶつかり、手に持っていた教科書をぶちまけてしまった。
「いってぇな!糞野郎!前見て歩け!」
「す、すいません」
前方の人に怒鳴られながら、急いで廊下に散らばった物をかき集める。だが、拾おうとした教科書をわざと踏みつけて、くしゃくしゃにしてくる足があった。雷亜はその主を見上げた。
ーー達也だった。
(やばいーー!達也にぶつかっていたのか……)
雷亜は慌てて教科書を拾おうとしたが、後ろから誰かに蹴られ、前のめりに倒れた。
「鈍臭せえ奴だなこいつ。邪魔だ!」
達也以外の何人かが続けて踏みつけてくる。
雷亜は焦った。すいません、と頭を下げながら、起き上がると、また蹴られるので、止めてください、と何度もお願いする。すると、後方から、
「おい!こら!てめえら、止めろっ!!」
と、威嚇する宇辰の声が聞こえた。
「ちっ、めんどくせーのが来た」
「悪食中華猿か……目障りな」
「なんだと?やんのか!てめえ!!」
宇辰と雷亜を踏みつけていた一人が、額を付き合わせて睨み合った。一触即発という雰囲気に雷亜が身を縮めていると、達也が、あらぬ方向に視線を移したまま、慌てて二人を引き剥がし始めた。
「おい!止めろ!喧嘩はいいから、早くそこをどけ!」
気になった雷亜も達也の視線の先に目をやる。
すると、廊下に居た人垣は皆、次々とかしずくように道を空けていた。
お祭り騒ぎのようだった廊下が、急に尋常ではない静けさに包まれ、人が左右に分かれていく。
何事かと、雷亜は目を凝らした。
すると、空いた空間から悠然と歩いてくる、レザージャケットを着た長身の美影に視線は釘付けになった。
雷亜の心臓は大きく轟いた。
目の前が突然、真っ白になり、時が一気に巻き戻る。
その時ーー、雷亜の立っている場所は、もう学校などではなかった。あの日の神奈川の海岸へと、意識は飛んでいった。
鼓膜には遠いあの日に聞いた、潮騒の音が穏やかに流れ、空を舞うカメモ達の声まで聞こえるようだった。
プラチナの髪がさらりと揺れる。
ああ……、あの髪の感じーー。
あの艶ーー。
そしてーー、
あの瞳はーー!!
紫水晶のような美しい輝きを放つあの瞳が、この世に二つとしてあるはずがない。
雷亜は茫然と立ち上がり、目の前に彼がやって来ると、無意識に叫んでいた。
「「「アイ ラブ ユー!!!!」」」
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