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キックオフ
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「なんなんだ!その溜め息は?!俺に何か文句でもあるのか?!さっきから俺の顔をジロジロ見やがって、気色悪るいんだよ!」
「ご、ごめん!」
雷亜は慌てて目を逸らせた。
(やっぱり彼は、俺との再会を望んではいなかったんだ……)
銃弾が胸を撃ち抜き、血が心臓の鼓動と合わせてドクドク流れ、失っていくようだった。雷亜の心には死にたくなるような痛みが広がり、足が震える。
「おいっ!こら待て、てめぇ!いくらなんでもそんな言い方ないだろ!」
宇辰がずかずかとやって来て、シャノンの前で仁王立ちになった。
「お前は寧ろこいつに礼を言うべきなんじゃないのか?!餓鬼の頃、命を救って貰ったんだろ?!」
宇辰の言葉に、シャノンの体が一瞬、 ビクッと反応した。
「宇辰、やめて!彼は違うよ。その話は俺の勘違いだった。全然、別人だよ。俺の知ってるあの子とは、やっぱり全然イメージが違う!」
雷亜は宇辰を押し退けシャノンの前に立つと一礼して、「ご免なさい」ともう一度謝った。
「髪と瞳の色が同じだったから、俺が以前に会った子かな?と思ってついジロジロ見てしまったんだ。不快に思われたのなら謝ります。俺はずっと、その子を探してたから、つい、それっぽい人を見るとあの子かと思ってしまって……わ、悪い癖なんです!だから、本当に嫌な思いさせてご免なさい!」
そう雷亜が言っている間、シャノンは目を逸らせたまま黙ってベンチに腕を組んで座っていた。
それじゃあ、と言って雷亜が踵を返す頃には、彼は肩を落とし、眉間に手を当て疲れたように溜め息をついていた。
「おい、雷亜!いいのかよ?あいつは本当に違うのか?」
「うん。やっぱり勘違いだと思う」
そう宇辰には言ったが、シャノンがあの日のあの子であることは間違いなかった。しかし、雷亜と違って、彼からしたら、あの日の出来事は、二度と思い出したくないのかもしれない。
出会った時に見た、紫の瞳からこぼれ落ちる涙の理由を思う。
雷亜に再会した事は、彼を海の中へと向かわせた辛い記憶をも甦らせてしまうのかもしれない。
雷亜はもう一度振り返ってシャノンを見た。
彼は額に手をやり、こめかみを揉むようにして、気落ちしているように見えた。
(ご免なさい……。俺のせいで、色々と嫌なことを思い出させてしまったのかもしれない……。俺は君が元気で過ごしていればそれでいいんだ……)
シャノンと色々話をしてみたかったけれど、彼がそれで辛い記憶を呼び覚ましてしまうのなら、雷亜もあの日の出来事は全て忘れることにした。
その後、雷亜は達也のプレイをじっと眺めていた。
フィールドに立つ達也は周囲と比べてかなり小柄だったが、その小回りとスピードで、でかい男達のタックルをも恐れず、止められても地道に力強く前に進んで行った。
それに比べて、雷後は一体、何をしているのだろう……。
シャノンと出会った過去を捨て去ると決めた途端、地に足を着けている感覚がなくなった。
まるで座頭虫の如く、ふわふわと揺らぎながら、覚束ない足取りで辛うじて生きている。そんな感じがした。
「ご、ごめん!」
雷亜は慌てて目を逸らせた。
(やっぱり彼は、俺との再会を望んではいなかったんだ……)
銃弾が胸を撃ち抜き、血が心臓の鼓動と合わせてドクドク流れ、失っていくようだった。雷亜の心には死にたくなるような痛みが広がり、足が震える。
「おいっ!こら待て、てめぇ!いくらなんでもそんな言い方ないだろ!」
宇辰がずかずかとやって来て、シャノンの前で仁王立ちになった。
「お前は寧ろこいつに礼を言うべきなんじゃないのか?!餓鬼の頃、命を救って貰ったんだろ?!」
宇辰の言葉に、シャノンの体が一瞬、 ビクッと反応した。
「宇辰、やめて!彼は違うよ。その話は俺の勘違いだった。全然、別人だよ。俺の知ってるあの子とは、やっぱり全然イメージが違う!」
雷亜は宇辰を押し退けシャノンの前に立つと一礼して、「ご免なさい」ともう一度謝った。
「髪と瞳の色が同じだったから、俺が以前に会った子かな?と思ってついジロジロ見てしまったんだ。不快に思われたのなら謝ります。俺はずっと、その子を探してたから、つい、それっぽい人を見るとあの子かと思ってしまって……わ、悪い癖なんです!だから、本当に嫌な思いさせてご免なさい!」
そう雷亜が言っている間、シャノンは目を逸らせたまま黙ってベンチに腕を組んで座っていた。
それじゃあ、と言って雷亜が踵を返す頃には、彼は肩を落とし、眉間に手を当て疲れたように溜め息をついていた。
「おい、雷亜!いいのかよ?あいつは本当に違うのか?」
「うん。やっぱり勘違いだと思う」
そう宇辰には言ったが、シャノンがあの日のあの子であることは間違いなかった。しかし、雷亜と違って、彼からしたら、あの日の出来事は、二度と思い出したくないのかもしれない。
出会った時に見た、紫の瞳からこぼれ落ちる涙の理由を思う。
雷亜に再会した事は、彼を海の中へと向かわせた辛い記憶をも甦らせてしまうのかもしれない。
雷亜はもう一度振り返ってシャノンを見た。
彼は額に手をやり、こめかみを揉むようにして、気落ちしているように見えた。
(ご免なさい……。俺のせいで、色々と嫌なことを思い出させてしまったのかもしれない……。俺は君が元気で過ごしていればそれでいいんだ……)
シャノンと色々話をしてみたかったけれど、彼がそれで辛い記憶を呼び覚ましてしまうのなら、雷亜もあの日の出来事は全て忘れることにした。
その後、雷亜は達也のプレイをじっと眺めていた。
フィールドに立つ達也は周囲と比べてかなり小柄だったが、その小回りとスピードで、でかい男達のタックルをも恐れず、止められても地道に力強く前に進んで行った。
それに比べて、雷後は一体、何をしているのだろう……。
シャノンと出会った過去を捨て去ると決めた途端、地に足を着けている感覚がなくなった。
まるで座頭虫の如く、ふわふわと揺らぎながら、覚束ない足取りで辛うじて生きている。そんな感じがした。
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