Broken Arrows

蓮華空

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「おーい、そこの嘘つきと猿!タオルを戻ってきた選手に渡せ、さもなきゃルーカス先輩に絞められるぞ!」

 ジョージが遠くから大声で指示した。

「俺は猿じゃねえ!」

 宇辰は怒鳴りながらも、仕方なくタオルをみんなに配り、呆然と突っ立ったままの雷亜を肘で小突いた。

「ほら、お前も今がチャンスじゃね?あいつが本当にお前の天使なのか確認してこいよ」

 俺も気になるしさあ、と小声で促した。

「いや……でも……」

 渋る雷亜の背中を宇辰が叩いた。

「それにちゃんと仕事しないと後でルーカスが怖えぞ!あの男、普段はにこやかだが、課せられた役割をこなさないと、どんな相手だろうがずっとストーカーしてくるんだ。そのしつこさと獰猛さで別名ラーテルと呼ばれている」

「ラーテル?!」

 雷亜は青ざめた。ラーテルとは中央アジアからアフリカに生息するイタチ科の動物で、小柄で無害そうな顔をしているが、大型肉食獣や象が相手でも怯まず果敢に牙を剥き、危険動物が目白押しのサバンナに置いても、最凶に危険な動物なのではと言われているほど厄介な生物だ。
 その別名を持つルーカスとは、一体どれ程恐ろしい奴なのかーー?

 雷亜は身震いした。

「だから、さっさと行ってこい!」

「わ、わかったよ」

 宇辰に促された雷亜は、おずおずとベンチに座って水分補給を取っているシャノンに近付いた。

「こ、こ、……これを……」

 緊張で口が乾き、喉が張り付いて掠れた声しか出なかった。

 紫の瞳が鋭くこちらを睨んだ。

(や、やっぱり……。何で俺だと、彼はこんな目で見るんだ……)

 太陽が雲に隠れて、視界が僅かに彩度を落としたが、それが雲のせいなのか、自分の心がそう見せているのか分からなくなった。

 シャノンは無言で差し出されたタオルを押しやり、用はないとでも言いたげに視線を反らした。

 空しさが全身を包み、雷亜は肩を落としてシャノンの前で深いため息を付いた。

 ーーその時だった。
 シャノンが持っていた給水ボトルを、雷亜に叩き付けた。
 雷亜は驚き、シャノンの顔を呆然と見つめた。





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