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パーティーで
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「早く来い!他の奴等が来るぞ」
「あ、う、うん」
走り出したシャノンの背中を、雷亜は追いかけた。
振り返ると玄関から達也と赤毛が出てきて、こちらを指差しているところだった。
「やばい!見つかった!」
シャノンもちらりと後ろを確認し、ジョージ邸の広い庭を一気に駆け抜けた。
(うっわ!やっぱりすごく速い!)
雷亜も必死で後に続いた。路地に出ると、シャノンは駐車している赤のクラッシックカーに近付き、キーを解除した。
この艶やかな赤いボディは、学校に行く途中、コークをぶつけてきた、あのキャデラック・エルドラドだった。
「これ、君の車だったんだ」
「いいから、早く乗れ」
雷亜は躊躇った。
薄汚い雷亜が助手席に座っても良いのかと一瞬迷ったが、シャノンが早くしろとでも言いたげに睨んできたので、構わず乗り込んだ。
同時にタイヤがキュルキュルと甲高い音を立て、車は急発進した。
振り向くと、あっという間にジョージ邸が小さくなって、追いかけてきた達也と周りの景色がみるみる遠退いていく。
雷亜はシートにしがみついた。
(どうでもいいけど、オープンカーの体感スピードって、普通の車より速く感じるものなのか?)
今まで感じたことのない空気抵抗に必死で耐えていると、前方に急カーブが現れた。雷亜は叫ぶように懇願した。
「あ、危ない!スピード落としてーっ!!」
だが、シャノンはアクセルを踏んだまま、サイドブレーキを引いて、後輪を左に滑らせながら右カーブを曲がった。
「うわあああー!」
雷亜は悲鳴を上げた。
何とか車は直線に入ったが、恐怖で体の力が抜けない。雷亜は恐る恐るシャノンの横顔を見た。
「あ、あの……いつもこんな運転で?」
質問には答えず、チッと舌打ちしたかと思うと、シャノンは更にアクセルを踏みこんでスピードを上げた。
(ええええーーー?!何でそこでアクセル踏むの?!)
車は前方のトラックを追い抜き、正面に現れた対向車をスレスレでかわした。
雷亜は声すら出なくなった。
車は反対車線を波打つようにはみ出しては、前の車を次々と追い抜いた。
雷亜はその都度、気を失いそうになりながら、ご免なさい、と胸の内でシャノンに何度も謝り続けた。
自分がどうして謝っているのか謎だった。ただ、暴走する車に乗っていると、自分がとてつもなく悪い事をしているような気がしていた。
脳裏には、シャノンの冷たい横顔よりも何故だか父の怒った顔が浮かんでいた。
「あ、う、うん」
走り出したシャノンの背中を、雷亜は追いかけた。
振り返ると玄関から達也と赤毛が出てきて、こちらを指差しているところだった。
「やばい!見つかった!」
シャノンもちらりと後ろを確認し、ジョージ邸の広い庭を一気に駆け抜けた。
(うっわ!やっぱりすごく速い!)
雷亜も必死で後に続いた。路地に出ると、シャノンは駐車している赤のクラッシックカーに近付き、キーを解除した。
この艶やかな赤いボディは、学校に行く途中、コークをぶつけてきた、あのキャデラック・エルドラドだった。
「これ、君の車だったんだ」
「いいから、早く乗れ」
雷亜は躊躇った。
薄汚い雷亜が助手席に座っても良いのかと一瞬迷ったが、シャノンが早くしろとでも言いたげに睨んできたので、構わず乗り込んだ。
同時にタイヤがキュルキュルと甲高い音を立て、車は急発進した。
振り向くと、あっという間にジョージ邸が小さくなって、追いかけてきた達也と周りの景色がみるみる遠退いていく。
雷亜はシートにしがみついた。
(どうでもいいけど、オープンカーの体感スピードって、普通の車より速く感じるものなのか?)
今まで感じたことのない空気抵抗に必死で耐えていると、前方に急カーブが現れた。雷亜は叫ぶように懇願した。
「あ、危ない!スピード落としてーっ!!」
だが、シャノンはアクセルを踏んだまま、サイドブレーキを引いて、後輪を左に滑らせながら右カーブを曲がった。
「うわあああー!」
雷亜は悲鳴を上げた。
何とか車は直線に入ったが、恐怖で体の力が抜けない。雷亜は恐る恐るシャノンの横顔を見た。
「あ、あの……いつもこんな運転で?」
質問には答えず、チッと舌打ちしたかと思うと、シャノンは更にアクセルを踏みこんでスピードを上げた。
(ええええーーー?!何でそこでアクセル踏むの?!)
車は前方のトラックを追い抜き、正面に現れた対向車をスレスレでかわした。
雷亜は声すら出なくなった。
車は反対車線を波打つようにはみ出しては、前の車を次々と追い抜いた。
雷亜はその都度、気を失いそうになりながら、ご免なさい、と胸の内でシャノンに何度も謝り続けた。
自分がどうして謝っているのか謎だった。ただ、暴走する車に乗っていると、自分がとてつもなく悪い事をしているような気がしていた。
脳裏には、シャノンの冷たい横顔よりも何故だか父の怒った顔が浮かんでいた。
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