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どうして?
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父は雷亜が空手の試合で負けると、帰りはいつも苛立たしげに車を走らせた。
身を縮め、雷亜が何度も謝ると、父の顔には活火山のような黒煙が立ち昇り、激怒という名の大噴火を起こした。
そんな幼い頃の父の姿と、シャノンがどうしても被って見えてしまう。
暴走車での沈黙は雷亜にとって、スピードに勝る恐怖を連想させた。
雷亜が不安に身を包んだ頃、漸く車は停まった。
辺りを見回すと、もっさりとした背丈の低い木が所々生えているだけの荒れ野原だった。
けれども、そこから見下ろす街の夜景は、光る花畑といった具合で、星よりも色鮮やかに輝いていた。
凝り固まった雷亜の心がふっと軽くなる。
(こういう景色は恋人とでも見たらいいのに……)
雷亜は運転席に座るシャノンの横顔をちらりと見た。
何でこんな所に連れてきたのか、意図が分からない。
ハンドルを抱えるようにして暫し夜景を眺めていたシャノンが、不意に流し目を寄越した。
雷亜の心臓がとくんと波打つ。
この期に及んで、紫の瞳に見つめられると、無条件で胸が高鳴ってしまう。
雷亜は目を反らし、緊張した面持ちで「話って何?」と訊ねた。
「取り敢えず、喉が渇いてないか? これでも飲めよ」
ポイと手渡されたペットボトルのソーダ水を雷亜は勢いよく飲んだ。さっきの緊張で丁度、喉がカラカラだったのだ。
一息ついてから「有り難う」と礼を言った。
シャノンは軽く、ああ、と答えた後、後部座席から自分用の飲み物を取り出した。
蓋を開け、こちらをじっと見つめながら瓶に口を付ける。それがやけに色っぽくて、雷亜は陶然となった。
琥珀色の液体を一口飲むと、形の良い唇を拭った。すると、アルコールの匂いがしてきて、雷亜は目を見張った。
持っている瓶のラベルにはヘネシーと書いてある。
「ちょっと待って!それ、お酒?!そんなの飲みながら運転してたの!」
雷亜は真っ青になった。
「大丈夫だ。この程度じゃ酔わねえ」
「酔う酔わないの問題じゃないよ!あの運転といい、危険じゃないか!」
怒鳴るとシャノンは顔をしかめた。
「うるせえなあ。あれで死ぬならそれで構わねえよ」
雷亜は絶句した。
(シャノンは結局、6年前と変わらず今も死にたがっているというのかーー?)
「そんな事より、お前……、あの中国人にどこまで俺の過去を話した?」
「え?宇辰にってこと?」
意外な質問に、雷亜はきょとんとした。
「そうだ。俺が日本でお前に会った時の事だ」
「やっぱり覚えててくれたんだ!」
雷亜の声が弾む。
忘れてはいなかったって事が何よりも嬉しい。
雷亜は日本での話をもっとしたくて、身を乗り出したが、それを抑えるかのように、シャノンが助手席のシートに覆い被さってきた。
目と鼻の先で見るシャノンの美貌はやっぱり凄い迫力だった。
「あの時の事は全て忘れろ」
少し青みの強い紫の瞳が、有無を言わせぬ冷酷さで雷亜を見下ろした。
ペットボトルを持っていた手が震える。
頬にシャノンの吐息を感じた。
それなのにシャノンが遠かった。
「……どうして?」
身を縮め、雷亜が何度も謝ると、父の顔には活火山のような黒煙が立ち昇り、激怒という名の大噴火を起こした。
そんな幼い頃の父の姿と、シャノンがどうしても被って見えてしまう。
暴走車での沈黙は雷亜にとって、スピードに勝る恐怖を連想させた。
雷亜が不安に身を包んだ頃、漸く車は停まった。
辺りを見回すと、もっさりとした背丈の低い木が所々生えているだけの荒れ野原だった。
けれども、そこから見下ろす街の夜景は、光る花畑といった具合で、星よりも色鮮やかに輝いていた。
凝り固まった雷亜の心がふっと軽くなる。
(こういう景色は恋人とでも見たらいいのに……)
雷亜は運転席に座るシャノンの横顔をちらりと見た。
何でこんな所に連れてきたのか、意図が分からない。
ハンドルを抱えるようにして暫し夜景を眺めていたシャノンが、不意に流し目を寄越した。
雷亜の心臓がとくんと波打つ。
この期に及んで、紫の瞳に見つめられると、無条件で胸が高鳴ってしまう。
雷亜は目を反らし、緊張した面持ちで「話って何?」と訊ねた。
「取り敢えず、喉が渇いてないか? これでも飲めよ」
ポイと手渡されたペットボトルのソーダ水を雷亜は勢いよく飲んだ。さっきの緊張で丁度、喉がカラカラだったのだ。
一息ついてから「有り難う」と礼を言った。
シャノンは軽く、ああ、と答えた後、後部座席から自分用の飲み物を取り出した。
蓋を開け、こちらをじっと見つめながら瓶に口を付ける。それがやけに色っぽくて、雷亜は陶然となった。
琥珀色の液体を一口飲むと、形の良い唇を拭った。すると、アルコールの匂いがしてきて、雷亜は目を見張った。
持っている瓶のラベルにはヘネシーと書いてある。
「ちょっと待って!それ、お酒?!そんなの飲みながら運転してたの!」
雷亜は真っ青になった。
「大丈夫だ。この程度じゃ酔わねえ」
「酔う酔わないの問題じゃないよ!あの運転といい、危険じゃないか!」
怒鳴るとシャノンは顔をしかめた。
「うるせえなあ。あれで死ぬならそれで構わねえよ」
雷亜は絶句した。
(シャノンは結局、6年前と変わらず今も死にたがっているというのかーー?)
「そんな事より、お前……、あの中国人にどこまで俺の過去を話した?」
「え?宇辰にってこと?」
意外な質問に、雷亜はきょとんとした。
「そうだ。俺が日本でお前に会った時の事だ」
「やっぱり覚えててくれたんだ!」
雷亜の声が弾む。
忘れてはいなかったって事が何よりも嬉しい。
雷亜は日本での話をもっとしたくて、身を乗り出したが、それを抑えるかのように、シャノンが助手席のシートに覆い被さってきた。
目と鼻の先で見るシャノンの美貌はやっぱり凄い迫力だった。
「あの時の事は全て忘れろ」
少し青みの強い紫の瞳が、有無を言わせぬ冷酷さで雷亜を見下ろした。
ペットボトルを持っていた手が震える。
頬にシャノンの吐息を感じた。
それなのにシャノンが遠かった。
「……どうして?」
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