Broken Arrows

蓮華空

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消せ!

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 まるで光る筋を付けて走る流れ星のように、あり得ないスピードで雷亜に迫ってきた。

 弾丸を食らったかのような衝撃が背後から襲いかかり、気が付けば地面に横倒しに押さえ付けられていた。

「捕まえたぞ!てめぇ!スマホを寄越せ!」

 掴まれた腕の痛みより、生まれて初めて追いかけっこで負けたショックの方が何故か大きかった。

(でも、まだ大丈夫だ!スマホは奪われてない──!)

 雷亜は気力を奮い立たせ、掴んだシャノンの腕を引き剥がしにかかった。体幹を使ってマウント状態のシャノンをブリッジで押し上げ、重心のバランスを崩す。僅かな力の流れを見逃さず、動いた方向に自分の身体を動かし、シャノンが体勢を整えようとした瞬間を狙って捕まれてる腕を弾いた。

(──よし!抜けた!)

 雷亜は素早く身を離し、逃げるよりも、シャノンが起き上がってくるのを見計らって、その足にローキックを入れた。一発目でバランスを崩し、シャノンが後方へ下がろうとするのを、間髪を入れずに続けて同じ所を蹴った。

 内腿に響いてくるように入れたから、当てた瞬間より時間差で痛みが押し寄せてくるはずだ。きっとこれで、追いかけて来ることはもう出来ないはずだ。

 雷亜は踵を返して、街の灯りに向かって走った。

「畜生っ!待ちやがれ!」

 シャノンはそれでも後を追ってきた。ローキックのダメージは確かに効いているはずだ。それでも体勢を整え、諦めずに追ってくる。その執念が雷亜は信じられなかった。足にかかるローキックのダメージは気持ちの問題で解決できるようなものではない。通常だったら最初のローキックだけで立つことも出来ないはずだ。それでも追ってくるシャノンに雷亜は戦慄を覚えた。未だかつて雷亜をここまで追い詰めた人間はシャノンが初めてだった。

 雷亜は息を切らせながら、高速道路を見下ろす橋の上に辿り着いた。そろそろ肺も心臓も限界だった。雷亜は逃げるのを止め、シャノンを迎え撃つ事にした。だが、シャノンも流石に疲れたのか、スピードを落とし、雷亜にゆっくり近付きながら、肩で息をしていた。けれども、目に宿る闘志は決して衰えてはいない。寧ろ視線だけでも殺されそうだ。

「おい!今だったらまだ許してやる。さっさと撮った写真を消去しろ!」

「消去するのはそっちが先だ!俺の写真をばら蒔きたいのなら勝手にそうしろ!俺は人から白い目で見られたり、蔑まれるのには慣れている。今さら変態扱いされたって、毛ほども感じない!やるなら今すぐにでもやれ!──その代わり、君の写真も今すぐばら蒔いてやる!」

 雷亜はハッタリをかました。雷亜がばら蒔くといっても、友達なんか居ないのだからばら蒔きようがないのだ。たった一人、宇辰の連絡先が今日、登録されただけだ。けれども、そんな事を知らないシャノンにはこのハッタリでも充分に通用した。彼は苦い顔をしながら躊躇する。
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