Broken Arrows

蓮華空

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分からないことだらけ

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 達也はワンコールで直ぐに出てくれた。

『雷亜──!てめえ、今、何処にいる!!』

 耳を遠ざけたくなる怒鳴り声だ。

「いや……それが何処だか……これからどうやって帰ったらいいのか分からないから、相談したいんだけど……」

『は?』

 達也の声音が変わった。

『お前……シャノンに何かされたか?』

「──えっ?!」

(何かって、どういう意味なのだろう……)

「い、いや……なにも……」

 動揺を隠し、慌てて返事をしたが、不意に車の中でシャノンが自分の乳首に吸い付いた光景が甦り、雷亜は額にげんこつをかました。まだ薬が効いているのか急に身体が火照ってくる。──やばい。

『ふーん……、ならいいけど、あの人ちょっと、過去に日本人の世話になったことがあるみたいで、日本人にはちょっと甘いんだよね』

「──え?!」

(な、何を言っているんだ?達也の奴??あのシャノンが日本人に甘いっ?!そんなの嘘だ!)

「そ、そんなことないと思うぞ!俺にはすごい厳しかった!!っていうか、怖かった!」

 言ってみて、気分が落ち込む。

(達也がそう思うってことは、つまり達也に対しては甘いってことだ。
 だったら何で俺には酷い事をするんだ?
 過去に世話になった日本人って俺ではない──のか……?
 ──きっと違うんだろうな……)

 思えばあの頃、雷亜は無理にシャノンの腕を引っ張り連れ回したのだ。見知らぬ国で出会った言葉の通じない相手だ。向こうは拐われたとしか思わなかったのかもしれない。そう考えれば、雷亜は憎むべき相手だ。ならばあの仕打ちにも納得がいく。

『そうか、だったらいいや』

 心なしか達也の声が明るくなった気がした。

『で、お前はシャノンと何処に行った?今、何処に居る?』

「あ、え、えーと、それは……」

 なんて説明すればいい?

「……シャノンは途中、道端に俺を下ろして消えた。そのあと、俺は道路の橋桁から落ちて、今、高速道路を走るトレーラーの荷台の上……」

『……なんだお前。母親と同じく死ぬつもりだったのか?死んだって誰もお前に同情しねーぞ!つーか、親父の世話になってる癖に自殺なんかしたら、親父が次の選挙で困るだろ!この恩知らずめが!!』

「ち、違うよ!死ぬつもりなんかないって!たまたま落ちて運良くトレーラーに乗っかっただけだ。それより、帰り方が分かんないよ。警察に連絡とかしていいかな?」

『駄目に決まってるだろっ!騒ぎを起こすんじゃねー!俺まで親父に怒られて日本に帰されたらどうしてくれんだ!!取り敢えず、トレーラーが止まるまでそこで大人しくしてろ!そのあと、ヒッチハイクでもして帰って来い!』 

「ヒッチハイクってどうやってやるの?」

『中指立てて、車が停まってくれるまで待ってろっ!』

 ──プツン!と一方的に達也からの通話は切れてしまった。

「……中指って……それ、やっちゃ駄目なやつじゃん……」

 きっと今ごろは通話口で達也がそうしているのだろう姿を思い浮かべて、雷亜はぐったり肩を落とした。
 
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